部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

それ相応の事をしないとね

大学から駅まで、駅から家まで僕は歴代最速の速さで
走り切って、家の前まで着いた。
「七海 ︎大丈夫 ︎」
僕は勢いよく自分の家のドアを開けた。
「国木田先輩、静かに・・・」
と中には僕のベッドで寝ている七海とその側で
手を握っている凛子さんがいた。
「ご、ごめん・・・」
と僕が言うと、凛子さんは優しく微笑んで
「いいんですよ、先輩がどれだけ七海の事を思っているか
わかりましたので。ところで先輩は先程まで
誰と話していらっしゃったのですか?」
凛子さんに言われてさっきあった出来事を思い出す。
・・・あ〜思い出しただけでもムカムカしてくる。
「それが知らない女子達がいきなり来てさ
"七海と別れろとか" "七海には常村君が合う"とか
言ってきたんだよね」
僕がそのように言うと、凛子さんはああという顔をして
「先輩が会ったのは多分それ常村の取り巻きです
七海に色々と言ってきたのも同一集団でしょう」
「やっぱりあいつらか・・・ ︎」
七海を泣かしたと聞くと再び怒りがこみ上げてくる。
「先輩って怒るんですね・・・」
と、そういえば凛子さんが部屋にいたんだ。
すっかり忘れていた。
「あ、ごめん・・・」
「いえいえ、七海から聞く先輩って七海が何しても
基本的に怒らないイメージだったので・・・」
「・・・一応、僕も人間なので」
「そうですよね。まぁでも七海の彼氏が常村じゃなくて
先輩で良かったですよ」
「なんか素直に喜べない比較対象だね・・・」
だってあんな野郎だぜ?
比較されても全然嬉しくないかな・・・
「そういえばそうですね・・・
でも彼氏が先輩で良かったと思うのは本当です」
「彼女の親友にお墨付きをもらって光栄だよ」
「だって先輩の事を話す七海ってとても良い笑顔
なんですよ。それはもうこっちがご馳走様って
言いたくなるぐらいの幸せな顔ですね」
「あっ、そ、そうなの」
僕はつい照れ臭くなり凛子さんから目線をそらした。
「・・・まぁ日々ノロケを聞かされる立場も
わかって欲しいと思うのも事実ですが」
「僕の彼女が本当にすみませんでした ︎」
さっきの目線をそらした体勢から一気に
土下座をする僕。
・・・後輩に土下座するって結構絵柄的にシュールだよね?
「いえいえ顔を上げてくださいよ ︎
べ、別に先輩が悪くは無いですし・・・」
「本当にすまないね・・・」
「い、いえ、こちらこそ先輩に文句みたいな事を
言ってしまい・・・」
「というか僕も凛子さんが七海の親友で良かったよ」
「へ?私ですか?」
「そうそう、君。だって七海が凛子さんの話をする時
それはもう良い笑顔だよ」
「・・・ちなみに私の事
どんな風に言ってますか?」
「そうだね・・・ 
例えば、典型的なツンデレとか
意外と照れ屋とか・・・あ、あれ凛子さん?」
「ちょっと今度七海をシメマスネ?」
目がマジだ。
「ど、どうぞ・・・」
七海よ、ごめん。
今君を生贄にしないと僕の命が
とても危ない気がするんだ・・・。
「あのお喋りな子は全く・・・」
「ま、まぁこれからも七海をよろしくね、凛子さん」
「・・・先輩に頼まれたら仕方ないですよね。
分かりました。さて、そろそろ私は帰りますね」
と凛子さんが帰る準備をし始めた。
「本当に今日はわざわざありがとうね」
「いえ、なんやかんやで七海には助けてもらって
いるので別に構いませんよ」
「・・・全部終わったら、何かお礼するよ」
「全部って先輩が何かするんですか?」
「まぁね。僕の彼女に迷惑かけたんだ
ーーそれ相応の事をしないとね」
・・・今回の事に関してはかなり怒っている。
こんなに怒ったのは夏目以外には無いだろうと思っている。
「・・・私に出来る事は何かありますか?」
「いや、凛子さんは大丈夫だよ。
これに関しては僕がやるよ」
「分かりました。でも何かありましたら
いつでも連絡ください。」
と凛子さんは帰っていった。



凛子さんが帰ってからしばらくして七海が起きた。
「あれ、センパイ・・・?凛子は?」
「凛子さんなら帰ったよ。晩御飯何がいい?」
「あれ、私なんでここで寝ているの・・・?」
どうやら泣き疲れて寝たのを忘れたようだ。
「最近の疲れが溜まってたんじゃないの〜
まぁまぁ、まずはご飯にしようよ。
・・・あっ、でもその前に」
と僕は七海に近づき
ギュッ
「ち、ちょっとセンパイ・・・?」
七海を抱きしめた。
僕から七海を抱きしめるのは久しぶりだった。
何故したのかと言われると僕自身分かってない。
・・・ただそうした方がいいと直感で思ったからだ。
まだ七海は寝ぼけているのか状況を読めてないようだ。
「大丈夫だよ」
「何がですか・・・」
「僕は七海の側にいるからさ、大丈夫」
「うん・・・わかった」
と言うとまた七海は寝てしまった。
スヤスヤと幸せそうな顔で寝ている。
この笑顔を僕はずっと見ていたい。
そのためにはいくつか障害物がある。
「さて、色々と準備しますかね・・・」
と思いながら僕は晩御飯の準備をするのだった。





次回から国木田の逆襲が始まります。
・・・勿論、イチャイチャもしますが。

コメント

  • ノベルバユーザー239382

    やっちまえ国木田!

    2
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