朝の顔と夜の顔をもつ男

ノベルバユーザー109731

第一章~何故こうなった!?~

「「「いらっしゃいませ、ようこそクラブ聖城へ」」」

こんばんは、俺はここで働く№1ホスト李仁(りひと)。
勿論李仁は本名ではない。
俺の本名は佐伯翔悟。
先に言っておくがこれが本職ではない、俺の本職は臨床心理士(とはいってもスクールカウンセラーなのだが)であり、副職としてここで働いている。
何故俺がこの店で働いているのか、時を遡れば一昨日の話になる。

***

?「ねぇねぇ、そこのお兄さん、俺達と一緒にホストで働いてみない?」

「・・・・・・・はい?え?今なんと・・・?」

ちょうど仕事帰りに突然俺にこんな声をかけてきた。

?「だから、言葉そのものだよ?稼げるよ~まぁ悪い話じゃないからさ、詳しいことは俺の店で話すから、そういうわけだから車乗って?」

え?ちょっと俺に拒否権は?なんて顔をしていたら・・「悪いけど今の君に拒否権はないよ」
みたいなことを言われ半ば強制的にと言うか強引に彼の車に乗せられクラブ聖城へ
強制連行させられたのだ。

俺の声も虚しく、俺を強制的に連れてきた人には届いてない。
多分この人に抵抗しても無駄だなと察した俺はしかたなく、しかたなく、
本当にしかたなく!ついていった。
ついて行き小部屋に案内された俺は、ここで待つようにと言われ、俺だけを残しその
人は部屋から出て行った。
そして俺はこのときに逃げていればこんな目に合わずに済んだのにと後悔したのであった。
しばらくしてその人が契約書を持って俺の前にやってきた。
?「お待たせ、じゃ早速だけどこれね!」
ちょっと待て、確かに俺は仕事帰りにこやつに
一緒にホストにならないかと声をかけられた。
だが俺はホストになると頷いたわけでもない。
これはいったいどういうことだ。
契約しとらんぞ!?
と言うか、何故こうなった!
もしかして最初から俺に拒否権はなかったって
ことなのか!?
俺は渡された契約書をみて驚いた。
何とキレイに用紙が綺麗に埋まっていたのである。
え?俺何時その紙に書いた?書いた記憶がない。
うんうんと唸り普段あまり使ない頭をフル回転させていたらあることに気が付いた。
字体が明らかに違う。
まさかと思ったがそのまさかが本当になってしまった。

「あれ?俺書きましたっけ??書いてないですよね?」
?「ん?ああ、君を待たせている間に、俺が代わりに書いといたから、後何で名前とかを知っているのかって顔しているね。僕はここのオーナー以外に副業で情報屋を営んでいてね。だから君のありとあらゆる情報を持っているってわけ。」
こいつ、ドヤ顔で言ってきやがった。若干イラッとしたのでいっぺん殴ってやろうかと思ったぐらいだ。
というか、こいつ、情報屋と言う名のストーカーじゃないのか?
?「まぁ、そういうわけだからこれからよろしく。ね?」

なんて、爽やかに言うものだから、俺は渋々「(一応)よ、よろしくお願いします」と言うしかなかったのだ。
「ああ、そういえば君、本職臨床心理士(スクールカウンセラー)でしょ?ばれたらいろいろまずいと思うから、はい、これ。」
そう言って渡されたのがアッシュグレーのウルフカットのウィッグだった。
え?と顔をする俺にオーナーは“俺からのささやかな贈り物、営業時に使ってね。”
そう言って、「じゃあ、早速明日からの勤務お願いね~」
そう言い残し店内へと姿を消した。
それが俺とオーナーとの出会い?で今に至る。

「はぁ、やっと終わった・・この後今月の売上発表か・・」
毎月の終りにオーナーから俺たちの売上発表があり、ランクが高ければ高いほど収入がいい。逆に売り上げが悪いと収入も悪い。
この世界では売り上げを競うので、店の中ではいつも修羅場だ。
最下位が続く場合、最悪首を斬られることになる。だから店で働く奴らはいつも本気だ。
まぁ俺は本気を出さなくてもいつも売り上げはトップ。
この店に入ってから№1の座はいつも俺。

時々思うのだが、何故俺が毎度毎度№1で売り上げもいいのか。

まぁ正直売り上げがいいのは嬉しい。それに、本職よりも明らかに収入がよく儲けがいい。
ただ、いったい俺の何処がいいのであろうか?他にもいい奴らは他にもいるのに。
来店したお客さんは必ずといっていいくらい俺を選ぶ。
俺の手が空いてないと“じゃあ、○○さんで”っておい!じゃあってなんだよ!じゃあって!
指名された奴らの視線が俺に突き刺さる、正直すごく嫌だ。
目は口ほどに物を言うというがまさに今の俺の状況がこれだ。

目では“下剋上だ、覚えていろ!”的な目つきをしてくるが
口では“本当お前人気だよなぁ、うらやましいぜ!”なんて言っている。

本当に仲間が何を考えているかわからないし、なによりも目線が怖い。
時々俺は思う、裏でオーナーが俺のことを№1の座にしているのかもしれないと。
そうでなければこんなに毎月の収入がいいはずがない。

あれこれ考えているうちにオーナーが売上結果の用紙を持って俺たちのところへやってきた。

「今から今月の売りあげ結果を発表する。今回順位が変わった奴もいればそのままの奴もいる。ご苦労だった。それでは今月の売上を発表する。第十位 奏人 第九位 朔夜 第八位 涼佑 第七位 琥珀 第六位 聖也 第五位 雅紀 第四位 将 第三位 八雲 第二位 龍斗 第一位 李仁 だ。みんなよく頑張ったな。先月と順位が変わった者もいればそのままの者もいる。今月も後残りわずか、最下位が続いた者は最悪の場合やめてもらうことになる。これはお前たちがこの世界に入ってきた時に教えたはずだ。まぁそういうことだ。今日のところはこれにて解散!」

「「「ありがとうございました」」」

これにて本日の営業は終り。
オーナーが言うに俺が居てくれるおかげで前より売上が他のクラブよりもグンと伸びたと言っている。
余談ではあるが、我らクラブ聖城は、月~金曜日の夜7時から始まり夜中の1時に終わって、土日は休業日。
だが、俺には土日休みなるものはほとんどない、仕事の依頼があるからだ。
テレビ出演や、講演会その他諸々、、稀にない時もあるのだが、、
本業がある俺にとってはとても辛くしんどいのである。
だいたい俺が家につくのがだいたい2時ぐらいそこから少し寝て出勤がだいたい朝の9時頃、何を生徒に教えるわけでもないので出勤が他の先生よりも少しだけ遅い。
カウンセラーである俺は、月火木はこの学校、水金は別の学校へと行かなければならないのだ。
土曜はテレビに出演してくれないか?とか、日曜は講演会を開いてくれないか?という依頼も来る・・

自分で言うのもあれではあるが、これでも有名な臨床心理士なのである。
まぁ余談はここまでにして、今月も堂々とまた一位・・・マジでオーナーが仕組んでいるのではないのかといつも思うのだ。
 
さて、俺は明日の仕事に向けていろいろ準備してから仮眠をとることにしよう。
でないと俺の体力が持たない。

長期休暇が欲しいと思うのが俺の本音である。

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