異世界で美少女吸血鬼になったので”魅了”で女の子を堕とし、国を滅ぼします ~洗脳と吸血に変えられていく乙女たち~

kiki

24 いつかまた会えると信じて、君の名を呼び続ける

 




 人の欲望とはかくも醜いものなのか。
 召喚される前の世界では、それをまざまざと見せつけられ、そして身をもって経験してきた私でも、今回アイのしてくれた話を聞いた時は、思わず眉をひそめてしまいました。

『とある地下にある店で、奴隷オークションと呼ばれている催しものが行われているの。文字通り、どこからか連れてきた奴隷たちを貴族たちが買い叩く、悪趣味なイベントですわ』

 アイもリンドフォーグ家の人間、つまり貴族なだけあって、その手の誘いは何度も受けたことがあるそうです。

『私の肌には合わないと、何度も誘われる度に何度も断ってきましたの』

 彼女に関しては、そういうわけで参加したことは無いのだとか。
 しかし、アイ曰く、奴隷を飼っている貴族はそう珍しくないそうで、廃棄街の人間同様に人権の保証されていない奴隷たちは、それはもう酷い扱いを受けているのだとか。
 商品として売り出されるのは年端もいかない少女がメインでしたが、時にご婦人向け、あるいはそういう趣味の・・・・・・・ご紳士向けに少年が売られることもあるそうで。
 まあそちらはどうでもいいにしても、人間が売り買いされているという話を聞いて、気分を害してしまった以上は放っておくのも気持ち悪いものです。
 ゆえに、私はその日、イベントが行われるという店にアイに借りた貴族らしいドレスを身にまとい向かいました。
 外はすっかり日が暮れていて暗く、とても心地の良い夜でした。



 ◇◇◇



 その店は、貴族の屋敷が密集する一角のほど近くにありました。
 入り組んだ道を進んだ先、周囲には店など見当たらない寂れた場所に、明らかに不自然に大きな建物が存在しています。
 そして入り口の前には2人のガードマンが立っています。
 私が店に近づくと、彼らは口を揃えて言いました。

「会員証は?」

 アイは会員制などと言っていなかったはずなのですが、さすがにフリーパスで入れるほど甘くはないようです。
 仕方ないのでガードマンの男性2人の脳を影で破壊、撹拌、補綴し、無抵抗に仕立て上げてから入場しました。
 扉を開くと、すぐに地下へ向かう階段がありました。
 そこを降りていくと、次第にあたりは暗くなり、次の扉にたどり着く頃には人間の目ではほとんど何も見えないほどです。
 ひょっとすると、本来は誰かに案内されて来る場所なのかもしれません。
 ですが夜目はききますから、問題なく進み、問題なく会場に入り――溢れ出した、むせ返るような香水と葉巻の匂いに、思わず手で口を鼻を覆いました。
 会場は想像していた以上に広く、平気で数百人は収容できそうなほどです。
 そこに居たのは、貴族と思しき100人ほどの人間たち。
 割合は圧倒的に男性の方が多いですが、マダムとも呼ぶべき化粧の濃い女性も数人見受けられました。
 部屋は地下とは思えないほど華美に装飾されており、振る舞われている料理も酒も、そしてそれを運ぶ給仕も、どこを見てもパーティー会場にしか見えません。
 私が会場に入ってきたことに気づいた数人がこちらに目を向けましたが、名の通っていない人間だとすぐにわかったのか、数秒後にはほとんどが私から視線を外してしまいました。
 ですが、単純に外見に惹かれたのか、1人の男性が私に近づいてきました。
 汚らわしい。
 私は彼の隣と通り過ぎると、前方に用意されたステージがほどよく見える場所で待機しました。
 すれ違った男性は目から光が失われ、ふらふらとした足取りで会場の外へとでていきます。
 そのまま腕を口に突っ込んで、誰もいない路地裏で自殺してくれることでしょう。
 影で、そういう風に命令を与えましたから、きっとそうなるはずです。
 もっとも――あえて今のタイミングで殺さずとも、どうせ死ぬことにはなったと思うのですが。

 給仕からノンアルコールのドリンクを受け取り、喉を潤していると、ステージ上にイベントの司会らしき胡散臭い顔をしたおじさんが現れました。
 人々の視線は一斉にそちらに向きます。
 そして、司会者が大げさな言い回しで奴隷オークションの開始を宣言した途端、会場は歓声と拍手に包まれました。
 熱気に包まれた会場というのは、一体感を味わえれば他にない気持ちよさがあるものなのですが、冷めた気持ちで状況を見ていた私にとっては、その熱は肌に張り付くようで気持ちの悪いものでした。
 私はそれをごまかすようにドリンクを飲み干すと、早速最初の奴隷が、ステージ裏から連れてこられました。

「まず1人目の商品はこちら、郊外の町から連れてきた、今日捕れたての女の子、名前はクレアちゃん! 年齢は9歳で捕れたてですので未調教、そしてもちろん未貫通! 性奴隷がお望みのお客様には物足りないかもしれませんが、育てる楽しみは十分に秘めた上等品でございます!」

 少女の整った外見を見て、会場が一気に湧き上がりました。

「9歳か、うちの息子に良いかもしれんな」
「いい声で泣き叫んでくれるだろう、ありゃ相当な値段がつくぞ」
「肉付きも良いな、きっと良い親が育ててくれたんだろう。私たちに買われるために」

 貴族たちは各々が身勝手に感想を述べています。
 クレアと呼ばれた少女の顔は青ざめており、ボロボロと涙を流していました。
 ぶつぶつ呟いているのは、両親の名前でしょうか。
 可哀想に、まだ諦めることも受け入れることも出来ていない様子です、司会の男が言っているとおり、本当に今日連れてこられたのでしょう。

「それでは300スタートとなります――」

 司会の煽りと同時に値段を叫び始めた貴族たちをみて、そろそろ私は限界を感じていました。
 もういいでしょう。
 わかりきっていたことではありますが、このような腐敗を目にして、私は確信を深めるばかりです。
 自分の正しさ。
 人では成し得ない、愛に溢れた世界、その正しさを。

「光が当たらない場所は、全て影。影は私の領域、つまり――」

 私はきゅっと軽く拳を握り、前方へと突き出します。
 オークションがヒートアップしていく中、私は1人だけ目を瞑り、意識を集中。
 なにせ、これだけ大量の人間に対して力を行使するのは初めてですので、うっかり奴隷の少女を巻き込んでしまわぬよう、細心の注意を払う必要がありました。
 そして照準が定まったのなら、閉じた手を、まるで明かりが灯るように一気に開く。

 ドパァンッ!

 風船にしては鈍い破裂音が会場の四方八方から轟いたかと思うと、同時にあれほどうるさかった司会と貴族の声はぱたりと止まりました。
 少し遅れて、会場に満ちていく血の臭い。

「人の体内もまた、影。だからそれすらも私の領域なのです」

 そう、そこは醜い欲望のるつぼから一転して、人間が華麗に花を咲かす花畑と化したのです。
 奴隷の少女を除いた全ての人間が、頭を内側から・・・・破裂させられ、絶命していました。

「うえぇ……う、ぐうぅ、おぇっ……」

 のべ100名ともなると充満する匂いはとても濃密で、酔ってしまいそうなほどで、まともな人間であるクレアが嘔吐してしまうのも、仕方のないことなのでしょう。
 私はそんな彼女に近づくと、縛り付けていた拘束具を影に破壊させました。

「ひ、ひっ……ご、後生ですから……殺さないで……!」

 私は怯える可哀想な少女の頬に手を当てると、なるべく恐怖を取り除けるよう優しく微笑みました。

「安心してください、殺したりはしませんよ。私は、奴隷を解放しにきたんです」
「……そ、そう、なの? でも……あの人達、死んで……」
「はい、いらなかったので殺しました」

 どうやらここでの笑顔は逆効果だったようで、彼女はあまりの恐怖に声も出さずに目を見開き、口をぱくぱくさせながら失禁してしまいました。
 ……いけませんね、普通の人間の価値観というものとどんどんかけ離れているような気がします。
 ですが落ち込んでいても仕方ありません。
 私はクレアを影に抱き上げさせると、おそらく他の奴隷たちが居るであろうステージ裏へと向かいました。



 ◇◇◇



「それで、こんなにたくさんの女の子を連れてきたんだ」

 奴隷少女たちの救出を終え教会に戻ると、急に増えた住人にエリスがため息をつきました。
 連れてこられた少女たちは誰もが戸惑いの表情を浮かべており、特に奴隷にされてから日が浅いクリスは私と目が合うと露骨に体をすくませていました。
 ここまで怯えられると、さすがにちょっとショックです。

「行くなら行くって言ってよね、お姉さまのこと手伝えたかもしれなかったのに」
「手をわずらわせるのも悪いかと思ったんです」
「それより、私はお姉さまと一緒に居るほうが大事なの!」
「まあまあ、そんなに怒ってたらこの子達が怯えるだけだよ」

 みゃー姉に諌められると、ようやくエリスは怒りの矛を収めてくれたようです。
 レイアのこともあるのであまりエリスには無理をさせたくないのですが……確かに彼女の言うとおりですね、いざとなれば私が守ったらいいだけなんですから。

 さて、あの会場で私はクレアを含めて5人の少女を救出しました。
 4人に関しては、それぞれ1人ずつ別々に虜にしてもらって、仲間にするつもりです。
 中には以前に奴隷として仕えていた場所で酷い性的暴行を受けたらしく、トラウマを抱いている少女も居ますが、きっとそれも解消できることでしょう。
 しかし、問題は残りの1人です。

「でさ、その子……どうすんの?」
「私が面倒を見ますよ。どのみち、人間では彼女を元に戻すことは出来ないでしょうから」

 その少女は――果たして少女と呼んでも良いのかも判断出来ないほど、破壊しつくされていました。
 毛髪は剃り落とされ、耳と鼻は削がれ、目も歯も無く、唇もいびつで舌はスプリットタン。
 両手両足は当然のように無く、乳房も一部欠損しており、性器も損壊寸前、と悲惨なものです。

「この状態では内臓もボロボロでしょう、生きているのが不思議なぐらいです」
「食べ物とかちゃんと与えられてたのかな」
「それは……ほら、見てください」

 彼女の口元に手をやると、肌で体温を察知したのか指を咥え込み、舐め始めます。
 その様を見て、エリスは露骨に嫌そうな顔をしました。
 気持ちはわかります、何のためにこうしているのか、言うまでも無いでしょうから。

「そういう風に躾けられているんだと思います」
「悪趣味ここに極まれりって感じ、よくもまあこんなことできるよね、人間って」
「他の女の子たちが言うには、彼女は”穴”と呼ばれていたそうです」
「……さらに悪趣味」

 エリスは吐き捨てるように言いました。
 そして彼女の顔に手を伸ばします。

「人ごとじゃないよね、廃棄街で生きてきた人間としてはさ。ひょっとするとこの子も私と同じ出身なのかもしれないし」
「だったら、エリスも一緒にどうですか?」
「どう、って……」
「このこを半吸血鬼デミヴァンプにして元の体に戻してあげようと思っています」
「そっか……そりゃそうだよね、他の子もそのつもりなんだろうし。じゃあせっかくだし私もお姉さまに付き合うよ、えっと……名前はどうしよっか」
「本当の名前がわかるまではジェーンとでも呼んでおきましょうか」
「なんでジェーン?」
「偽名の定番だとどこかで聞いたことがあるからです」

 そう説明すると、エリスは再び彼女の顔を見て、「よろしくねジェーン」と声をかけました。
 反応は無かったが……名前があった方が遥かに親しみやすい、ひとまずはこれでいいはずです。



 ◇◇◇



 かくして、ジェーンと私たちの生活が始まりました。
 生活というよりはほぼ介護のようなものでしたが。
 他の4人の少女に関しては、力を分け与えた仲間たちに託しています、2日もしないうちにみな半吸血鬼デミヴァンプになっているでしょう。

 とりあえずはジェーンに触れた状態で、エリスと他愛もない会話を繰り返しました。
 そもそも耳が聞こえているのか、彼女には人間らしい感情が残っているのか、など気になる点はいくつかありましたが、まずは虜にすることからです。
 二人がかりだったおかげか、翌朝には、ジェーンの目の下に印が浮かんでいました。
 ですが相変わらず、彼女からのリアクションはありません。
 試しに印を触ってみましたが、多少体を動かしたり、喉からかすれたような呼吸音はするものの、喘いでいるかは微妙なところです。

「もう壊れちゃってるんじゃないかな、吸血しないとどうにもならない気がするけど」

 エリスの言うとおり、手早く吸血してしまうのが一番なんでしょう。
 ですが私は、なんとなく、彼女と今の状態でコミュニケーションをとることに拘っていたのです。
 予感、とでも言えば良いのでしょうか。
 ジェーンにはそうするべき理由があるような気がして。
 私が考え込んでいると、彼女は突然、口をぱくぱくと開き始めました。
 昨日も何度かこのような行動を取ることはあって、特に意味は無いのではないかと思っていたのですが――口に耳を寄せてみると、ジェーンが何かを言っているのがわかります。

「ぇ……い……あ……」

 え、い、あ。
 一度だけなら偶然でしょうが、彼女はそれを何度も繰り返していました。

「お姉さま、どうしたの?」
「えいあ……全て母音ですね、何か意味があるのでしょうか」
「え、い、あ? ただうめいてるだけじゃない?」
「それにしては、同じことばかり言っているのですが――」

 えいあ。
 それに近い言葉を、最近、どこかが聞いたような気がします。
 歯が無く、舌も自由に動かないので母音しか発音出来ないのだとしたら――け、せ、て、ね、へ、め、れ……れ?
 れ、い、あ。
 この名前って、確か――

「レイア・ハーシグ……?」

 少しこじつけが過ぎるでしょうか。
 しかし、この異常なほどまでに壊された少女と、城の魔女。
 私はこの2人を結びつける接点らしき情報を持っていました。

「あのお城に住んでた魔法使いの? でもなんであんなやつのことを、奴隷が知ってんの?」
「彼女は元々、田舎にあるのどかな村に住む子供だったのですが、村は吸血鬼に襲われて壊滅してしまい、だから彼女は吸血鬼を恨んでいるのだとみゃー姉が言っていました」
「つまりこの子も、その村で奇跡的に生き残ったうちのひとりってこと?」
「本当に奇跡だったのでしょうか。そもそも、村が壊滅したという話自体が妙なんですよ。エリスがもし同じことをするとしたら、どうしますか?」
「どうするって、そりゃあ仲間を増やそうと……して……あれ?」

 私もまったく同じ部分で引っかかっていました。
 襲撃したのが本当に吸血鬼だとするのなら、人間たちを皆殺しにするわけがないのですから。
 人が愛する人間を子を成したいと本能で思うように、吸血鬼もまた、人間を見ると仲間に引き込みたくなる。
 だというのに、村を襲ったという吸血鬼は、なぜか全員を殺してしまいました。
 不思議です。
 まるで犯人は吸血鬼ではないように思えてなりません。
 私はその仮説にさらに信憑性を持たせるべく、繰り返し”えいあ”とつぶやく彼女に囁きました。

「リーナ」
「う……あ、ぁ……!」

 そう呼ぶと、彼女はかくんかくんと、首と何度も縦に振りました。
 ずっと、自分がそう呼ばれるのを待っていたかのように。

「ヘ? お姉さま、リーナってレイアが持ってた黒猫人形の名前だよね」
「そう名前を付けているだけで、本来は親友であるリーナという少女の形見だったようです」
「ちょっと頭がこんがらがってきちゃった。レイアは襲撃を受けた村の生き残りで、黒猫人形はリーナって子の形見で、そしてこの子が……そのリーナ本人、ってこと?」
「そういう認識で正しいと思われます。犯人は吸血鬼では無いわけですから、襲撃者にさらわれてそのまま売られたんじゃないでしょうか」
「じゃあ、吸血鬼に全責任を押し付けた、その憎たらしい襲撃者っっていうのは……」

 見当はついていました。
 しかし、確信するにはまだ材料が少なすぎる。
 私はふいに、窓から明るい外の景色を見ました。

「エリス、私はこれからレイアと会ってこようと思います」
「ってあれ、襲撃者の正体は?」
「裏付けが取れたら教えますよ」

 そしてその時は――きっとレイアは自分の意志で、人間を捨てることとなるのでしょう。
 きっと、人間の度し難い醜さに失望して。





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