異世界で美少女吸血鬼になったので”魅了”で女の子を堕とし、国を滅ぼします ~洗脳と吸血に変えられていく乙女たち~

kiki

18 あくまでも私はそれをハッピーエンドと呼び続ける

 




 場外では兵の死体が、城内では倒れているレイアが発見された――そんな報せを私が受けたのは、翌朝、目を覚ましたあとのことだった。
 昨日は色々と考え事をしていたせいかなかなか寝付けず、まだ体は重いが、そんなことを言ってる場合ではない。
 私はすぐさまレイアが休んでいる部屋に向かい、そして思っていたより元気そうな彼女の姿を見て安堵した。

「良かった、レイアが無事で」
「ミヤコ……」

 顔色は良いし、外傷もない。
 けれどその割には表情に力が無く、揺れる瞳で私を不安そうに見ていた。
 と、いうか――

「あれ、レイアが……喋ってる!?」

 私の指摘に、レイアは恥ずかしそうに口元を布団で隠した。
 彼女の肉声を聞いたのは、ひょっとすると初めてかもしれない。
 もしかして、誰かに襲われてリースを破壊されたんじゃ――と思ったんだけど、部屋のテーブルの上には黒猫人形が置いてある。
 どういう心境の変化なんだろう。

「チグサ・ヒナタに……会ったよ」
「な……じゃあ、もしかしてレイアを襲ったのって日向さんなの? でも、どうして!?」
「昨日言った通り、ミヤコは……魅了の呪いを、受けてたから。その吸血鬼が、チグサ、だったんだと……思う」

 日向さんが吸血鬼であることは、昨日、レイアに魅了に関する説明を受けた時点で察しがついていた。
 けどそれは、彼女が城に侵入した理由じゃない。

「もう一人、仲間が居たの。エリスっていう吸血鬼。たぶんそいつは……ミヤコの、命を狙ってて。そいつを、倒そうとしたら現れて」
「仲間を助けに来たってこと?」

 確かエリスさんって、日向さんのことを”お姉さま”って呼んでた子だったはず。
 その人が、私を狙ってたっていうのは――つまり、嫉妬だったのかな。
 日向さんはただの友達だって言ってたけど、私にはあの距離感がただの友達のものだとは思えなかった。
 だからこそ、わざわざ城に侵入してまで助けに来たってことじゃないかな。

「うん……たぶん。それで結局、私は全然敵わなかった。チグサはすごく、強くて。他の吸血鬼とは、比べものに……ならなくて。やろうと思えば、ミヤコだって……どうにか、出来たはずなのに。でも、無事だったってことは……助けに来ただけじゃなくて」

 レイアはその結論を言葉にするのをためらった。
 でも私には十分伝わっている。
 止めに来たんだ、私を殺そうとするエリスさんを。

「チグサから、伝言も……頼まれたの」
「伝言って、私に?」

 レイアは無言で頷く。
 それはおそらく、彼女にとって屈辱的なことだったはずだ。
 なぜならレイアは――吸血鬼を強く憎んでいる。
 彼女の故郷は、家族や親友ごと、吸血鬼に滅ぼされているからだ。
 それでも、私へ伝えるべき言葉だからか、たっぷりと間を置いて、葛藤を経てから、はっきりとした口調で日向さんからの伝言を伝えた。

「ごめんなさい。今までありがとう、みゃーねえ」

 その言葉を聞いた瞬間――雪解け水が溢れるように、私の胸に、懐かしい感情が去来した。
 忘れていた、罪悪感と共に封じていた気持ちが、一気に戻ってきたのだ。

「チグサは、別れの言葉だって言ってたよ。だから、もう――ミヤコはあいつに会わなくていいの」

 レイアの震える声には、彼女自身の願望が幾分か含まれているように思えた。
 もう会わないで欲しい。
 いや――本来なら、日向さんが吸血鬼だと明らかになった時点で、私は彼女に会うべきではないのだ。
 たとえそれが、三度彼女を裏切ることになったとしても。

「ミヤコが会おうとしなければ……あいつは、たぶん、会いに来ないよ」
「うん、私もそう思う」
「だから……ねえ、ミヤコ。お願いだから……」

 レイアは泣きそうなほど弱々しい声で言った。

「そんな顔、しないでよ。まるでチグサに会いたがってるみたいだよ?」
「……」
「私とミヤコは、友達だよね? 私より、吸血鬼を選んだり……しないよ、ね?」
「……」
「ねえ、ミヤコ……黙ってないで、”うん”って言ってよぉ! あいつら、吸血鬼だよ? 人間じゃないんだよ? 人を殺すの、全部殺すの、だから、だからっ!」
「……ごめんね、レイア」

 私がそう言うと、今まで絶えず私に語りかけていたレイアは、ぴたりと喋るのを止めた。
 目を見開き、表情に絶望を満たしながら、ただただ私を見つめるだけ。

「確かに、吸血鬼は信用できないよね。レイアの話を聞いて十分理解してる、人間を殺す危険な生き物だってことも」
「だったらぁ!」
「でも、ね。それ以上に――私は、日向さんの……ううん、ちーちゃんのそばに居たいの。例え人間じゃ無くなったとしても、それが私にできる唯一の罪滅ぼしで、そして私自身の望みでもあるから」
「わかんない、全然わかんないよぉ!」
「理屈じゃ説明はできないかな、それが”好き”って気持ちだから」

 それを自覚し、覚悟した今、もはや私に恐れるものは何も無かった。
 これぐらいの気持ちが、先生と生徒だった頃にあれば、もっと早くにちーちゃんのことを救い出せたかもしれない。
 あのクラスから彼女の手を引いて連れ出して、私も校長に辞表を突きつけて、2人で暮らそうって。
 きっと大変だけど、それでも幸せで、吸血鬼になんてならなくても、私は私の力でちーちゃんに笑顔を取り戻せたかもしれない。
 後の祭りだ、何を言ったってもう遅い。
 今の私にできることは、もう――私の方から無理矢理にでも、あの子に寄り添うことだけだ。

「じゃあね、レイア。一緒に過ごせた時間、すごく楽しかったよ」

 あまり長居しすぎても、それはそれで残酷だ。
 私はあっさり彼女の横たわるベッドから離れると、部屋から出ようとした。

「待ってよぉ、ミヤコ。わかった、私……頑張るから、今よりもっと、ミヤコに好きになってもらえるように頑張るからぁっ!」

 ドアに手をかける。

「わ、わかった、顔も変えるよ? 体だって、声だって、きっと魔法ならできるもん! 私が、チグサになるから、ねえ、ねえミヤコぉっ!」

 そのまま開き、部屋の外に出て――ぱたんと閉める。

「やだぁっ、やだあぁぁぁっ! ミヤコ、お願いだから行かないでっ! もう私から、これ以上、大事な物を奪わないでよおぉぉおおおっ!」

 部屋の外にいても、レイアの悲痛な叫び声は聞こえてくる。
 私は残酷だ。
 そんなこと、ちーちゃんにしたことを考えればとっくにわかりきったことだけども、改めて思う。
 けれども――だからって、私の気持ちがレイアに傾くことはない。
 ただただちーちゃんだけのことを思い、荷物も持たずに、私は城を出た。



 ◆◆◆



「もう何も言わない、言える立場じゃないから。でもやっぱり……自分でもめんどくさい女だって思うけど、嫉妬はしちゃうかな」

 そう言って、エリスは礼拝堂から姿を消しました。
 私は長椅子に座り――そして今日も、御影先生が来るのを待っています。
 昨晩、レイアに別れの言葉を伝えたばかりだというのに。
 人間の感情というのは厄介なものです、未練がましく、往生際が悪い。
 ですが、今日が終われば、本気で諦めるつもりでした。
 しかし、そういう時に限って、決意というのは脆くも裏切られるもので。
 じっと女神像を見上げていた私の耳に、ギィ、という扉が開く音が聞こえたのです。
 私の胸は期待に高鳴ります。

「ちーちゃん」

 そんな懐かしい呼び方で私に語りかける彼女の声を聞いて、さらに心音がうるさくなるのがわかります。
 私は胸に手を当てて、立ち上がり、振り返りました。

「みゃー姉」

 自然と甘えるような声が出てしまいます。
 それを聞いたみゃー姉は嬉しそうに頬を緩めると、こちら近づき――自らの意志で、私を抱きしめたのです。
 触れ合った部分から、魔力が流れ込んでいきます。
 魅了されている、そしてそれをみゃー姉は理解している。
 理解した上で――私を、抱きしめた。
 それが意味する所を、理解できない私ではありません。

「本当にいいんですか、みゃー姉はそれで」
「約束したじゃない」
「でも……取り返しは、つきませんよ?」
「知ってる。取り返しをつかせたくないから、私はここに来たの」

 それなら、私も。

「部屋に、行きましょうか。そっちの方が、落ち着いて触れ合えるでしょうから」
「ん……なんか変な気分、ちーちゃんとふたりきりなんて今まで通りなのに、こんなにドキドキするなんて」
「当たり前ですよ。これからみゃー姉と私は、いけないことをするんですから」

 みゃー姉にそう笑いかけながら言うと、珍しく彼女はたじろぎ、頬を赤くしながら目をそらしました。

「ちーちゃん、少し見ない間に大人になったんだね」
「そうかもしれませんね、年上のみゃー姉にリードされない程度には」
「……お手柔らかにお願いします」
「善処します」

 そして私たちは、誰の邪魔も入らない、ふたりきりの部屋へと入っていったのでした。
 そこで何が行われるかなど、あえて言う必要も無いでしょう。



 ◇◇◇



 私とみゃー姉はベッドの上に座ると、お互いの衣服に手を伸ばしました。

「こ、これは……普通のこと、なの?」

 私の修道服を脱がせながら、みゃー姉は顔を真っ赤にしています。
 普通かと言われれば、何が普通なのか私にはよくわかりません。
 今までも特に、服を脱がせるという行為にこだわった覚えはありませんからね。

「普通じゃないのかもしれません」
「いきなりそんなことやらされちゃうの!?」
「私は私がやりたいことをしているだけですから。それともみゃー姉は、私の服を脱がせたくはないですか?」
「いや……そういうわけじゃないし、脱がせるのは正直、ちょっと楽しいけど」

 ならば何も問題は無いはずです。
 そのまま私はみゃー姉に身を任せ、修道服を脱ぎ、下着姿になりました。
 同じく私も、おそらく城で配給されたであろう制服らしきローブを脱がせ、お互いに肌を晒します。
 私はみゃー姉の健康的な肌を見て思わず吐息を漏らすと、おへそのすぐそこに手を伸ばしましました。

「ひゃんっ!?」

 緊張のせいか敏感になっているらしく、指先が当たるだけで彼女はそんな声をあげます。
 本当に、誰にも触れさせたことのない肌なのでしょう。
 それが今から全て私のものになると思うと、喜びからゾクゾクしてしまいます。

「待ってちーちゃん、触るなら前もって言って……ひうぅっ」
「たくさん触るのに、いちいち言う暇なんてあるわけないじゃないですか」
「うぁ、顔……ちかっ……」

 顔を寄せながら言うと、みゃー姉の顔はさらに真っ赤になりました。
 まだ触れていないのに、その熱が肌で感じられるほどです。
 私がそのまま唇を近づけると、みゃー姉は「待って」と言いながらも観念したのか、強く目を瞑りました。
 まずは触れるだけのキスを。

「っ……あ……ちーちゃんと、キス、しちゃった」

 柔らかな感触が触れると、みゃー姉は油断したのか薄っすらと目を開きながら言いました。
 私は続けて、今度は強めに唇を押し付けます。
 もちろん、開いた口から舌を挿し込むのも忘れずに。

「んっ、んんっ!?」

 戸惑うみゃー姉はとても可愛らしい。
 見ていると、どうしてもいじわるをしたくなってしまいます。
 舌先でみゃー姉の舌裏をなぞりながら、その舌を絡め取っていくと――もっと混乱する姿が見られると思ったのです、が。
 彼女は思ったよりも早く適応し、むしろ反撃しようと自ら攻めてきたのです。
 年上のプライドというやつなのかもしれません。
 とは言え、慣れない行為でいきなり優位に立てるわけもなく、その動きはどこかぎこちないものでした。
 しかし必死なみゃー姉もそれはそれで可愛いので、私はあえて体から力を抜き、全てを任せることにします。

「ん、んふっ……ふうぅんっ……」

 みゃー姉はぐいぐいとこちらを押し倒しながら、必死になって唇を押し付けてきます。
 舌の動きは拙く、がむしゃらにこちらの口の中をかき混ぜているだけです。
 一見してリードしているような気分にさせながら、私は適時みゃー姉の舌を愛撫し、ぴくりと震える彼女の体を楽しんでいました。

「はちゅ……んっ、く、ぁ……れる……ぷ、ちゅぅ……っ」

 必死なのはいいのですが、キスに夢中になるあまり、どうやら呼吸を忘れているようで。
 みゃー姉の顔は次第に苦しそうな表情に変わっていきます。
 そして耐えきれなくなったのか、「ぷはぁっ!」と盛大に顔を離すと、肩で息を始めました。
 その様を見ていると、思わずニヤニヤしてしまいます。

「ちーちゃんなんで笑ってるの? リードしてるのは私の方なんだからねっ」
「そういう所が微笑ましいなと思いまして」
「へっ?」

 私は馬乗りになっているみゃー姉の首に腕を回すと、引き寄せ、強引に唇を奪いました。
 上になっていればリードしている、そんな単純な思考で物事を判断する彼女に、現実を教えてあげようと思ったのです。

「ふもっ、もごっ……お、はふ……っ、ひ、ちゅ……ぷちゅ、んくうぅ……っ!」

 とは言えキスだけで体力を使い果たされても困りますから、私は丁寧に丁寧にみゃー姉の舌を愛撫しました。
 ただ舌だけでは飽きてしまいますから、下唇を舐めてみたり、相手の舌を唇で挟んで舐めしゃぶってみたりと、色んなパターンを試しながら彼女の様子を見ます。
 人によって好みは違うものですから。
 しかし、みゃー姉の場合は、どこを触っても反応が変わらないと言うか――とにかく、私であればどこを触られても嬉しいようで。
 試しに舌の付け根あたりまで深めに愛撫しても、「んぐ、うぅ……」と少し苦しそうな声を出しながらも、艶かしく体をくねらせました。
 あまりの気持ちよさに体から力が抜けてしまったのか、気づけばみゃー姉の体は私の上に乗っかっていました。
 ですが今は、その重みすら心地よい。
 もっとその体を深く感じたいと思った私は、太ももから臀部にかけて指を這わせました。

「んっ……」

 するとみゃー姉の体は、まるで私の体にすりつけるように動きます。
 その動きはまるで、私にもっと触ってほしいとねだるようで。
 私がみゃー姉に触れる行為には、快感と、魅了の魔法という2つの意味があります。
 つまり彼女は、自ら、私のために人間をやめてしまいたいと願っているのです。
 興奮しないわけがありません。

「んふぅー……ふ、んぐっ、ちゅ、ぁ、ん……ふあっ……」

 みゃー姉は息も絶え絶え、と言った様子です。
 やはり人間相手だと、他の子たちと同じようにとは行きませんね。
 さすがに可哀想なので解放すると、彼女は肩を上下させながら、私を半目で睨みつけました。

「はぁ……ううぅ、ものすごい……敗北感」
「まだまだですねえ、おとなしく私にリードされてください」
「悔しいけど、そうするしかないみたい」

 攻守交代――2人でころんと転がって、今度は私が上に、みゃー姉が下になります。
 雨のように唇に繰り返しキスを降らし、そのキスは顎から首筋へと少しずつ下がっていきました。
 口づけが鎖骨から胸元まで降りてくると、肌がほんのりと湿り気を帯びてきました。

「背中、少し上げてもらってもいいですか?」
「……うん」

 私はみゃー姉の背中に腕を回すと、ブラのフックを外しました。
 そのまま胸を露わにしようと手をかけると――ぼそりと、みゃー姉が呟きます。

「今更だけど……私、本当にしちゃうんだね。小さい頃から知ってる、妹みたいなちーちゃんと」
「信じられない、というのなら、異世界という荒唐無稽なこの場所もそうですし、吸血鬼になって生きながらえた自分自身もです。今更みゃー姉と愛し合った所でどうということはありません」
「ちーちゃんは状況に適応しすぎなの。でも……そうだね、深く考えたって仕方ないか。今は、ちーちゃんとこういう関係になれたことを、素直に喜ぶことにする」

 緊張していたみゃー姉の体からようやく力が抜ける。
 そして私は彼女の素肌を隠していた布を全て取り払うと、そこに口付け――喘ぐ大切な人の声を聞きながら、体を火照らせるのだった。



 ◇◇◇



 みゃー姉の首に印が現れたのは、疲れ果て一眠りしたあとの、翌日の朝のことでした。
 どうやら彼女は、私より一足先に目をさましていて、かれこれ30分ほど寝顔を観察していたようです。
 悪趣味な。

「ん、ああぁぁぁっ! な、なに、これぇっ……!」

 仕返しに、と首に触れるとみゃー姉は体を仰け反らせながら悶ます。
 私はそんな彼女の耳に口を寄せ、印について語りました。

「吸血鬼になる準備が済んだ証です」

 みゃー姉の体がぴくんと震えます。

「つ、つまり……魅了の魔法にかかって、私は、ちーちゃんの虜になったってことだよね?」
「そうなりますね」
「……あんまり変わらないんだけど」

 平然と言い放つみゃー姉を前に、私の体温は一気に上がっていきます。
 よくもまあ、あっさりと言えたものです。

「最初から虜だったということでしょう」
「あ、そっか。えへへ、先生失格だね」
「そんなのは今更です、まったく。じゃあ、もう噛みますからね」
「うん。私を、ちーちゃんと同じ体にしてください」

 なんだかんだで、変わらないんですね。
 みゃー姉は昔、私と一緒に遊んでいた頃と同じような笑顔を浮かべて、首に噛み付かれるのを待っています。
 そして私は、今度こそ完全に人間を捨て去るのです。
 あちら側においてきた最後の未練――みゃー姉を、こちら側へと引きずり込むことで。
 熱を持ったみゃー姉の首に口づけをします。

「ぁ……」

 小さな喘ぎ。
 その声から感じ取れるのは、躊躇いではなく、悦楽。
 心の底から、私と同じ存在になれることを受け入れている証拠。
 確信した私は、ゆっくりと肌に歯を付きたて――ぞぶりと、食い込ませていきます。
 ぷつりという肌を裂く感触。

「ぅ、あ……」

 みゃー姉の喉から苦しそうな声が漏れました。
 大丈夫です、すぐに気持ちよくなりますから。
 さらに牙を食い込ませ、肌に開いた穴を広げ、肉を貫通していきます。
 じわりと溢れ出す血液は――やはり、処女に比べると若干の臭みがありました。
 しかし問題ありません。
 むしろ、その汚らわしい血液をみゃー姉の体から吸い上げられることを誇りに思います。
 もう彼女の体には、あの時――教室であまりに醜くおぞましい姿を見せつけてきたあの男どもの遺伝子は残っていない――
 代わりに注ぎ込むのは、吸血鬼の魂、私の一部。

「あ……ああぁ、わかる……わかるよぉ、ちーちゃんが、入ってくる……のぉっ……」

 伝わっている、嬉しい。
 もっと、もっともっと注ぎ込まないと、もっと感じてもらわないと。
 自分の体の中に流れ込んでくる、私の感触を。

「んあああぁぁっ! あ、はぁっ……ちーちゃん、ちーちゃぁん……っ、一緒、だよ……ずっと……」

 うん、うん、一緒。今度こそ、ずっと。
 絶対に離しませんから、吸血鬼の命は尽きません、だから永遠に。
 約束はもう……何があっても、破られることは、無い。

「ぁ……あぁ……は……」

 みゃー姉の反応が次第に薄れていき、そしてついに、ぐったりとしたまま動かなくなってしまいます。
 肌は白く、まるで姉妹のように私と触れた時の感触が似ていました。
 匂いも――胸に顔を埋めて思い切り吸い込むと、昨日愛し合ったときよりももっと濃密なみゃー姉の匂いでいっぱいになるんです。

「ぅ……うぅ……」

 目覚めの時。
 ゆっくりと上ってゆくまぶたを私はじっと見つめていました。
 その奥から現れる、ルビー色のそれを心待ちにして。

「私……は……」

 瞳が、こちらを見ています。
 目の前に居る誰かが私なのだと理解すると、私とおそろいの赤い瞳は潤み、みゃー姉は私の頬に手を伸ばしました。
 今度こそ本当にリードしてくれそうな、大人っぽい表情を浮かべながら。

「吸血鬼に、なれた?」
「ええ、私と同じ、これでみゃー姉は、半吸血鬼デミヴァンプです」
「デミヴァンプ……ふふ、ちーちゃんと、一緒」

 私とみゃー姉は、そのまま唇を重ね、押し付け合うように唇を食みました。
 さっきよりも冷たい体温が、私の支配欲満たしていきます。

「それではみゃー姉、行きましょうか」
「どこに?」
「隣の部屋ですよ、他の仲間が待っていますから。今日からは、みゃー姉も一員です」
「それって、もしかして……」
「はい、今日はみゃー姉の歓迎会です」

 自分がどうなってしまうのか想像したみゃー姉は、自分の頬に両手を当てると――嬉しそうに、恍惚とした笑みを浮かべました。
 そんな、すっかり染まった彼女を見て、私はもう戻れないのだと、改めて確信するのでした。





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