創造主は暇だったので冒険者になった。

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25.

妖精は、属性タイプ特化の先天性魔術師だと考えればわかりやすい。寿命は二五年程だが、ゴブリンに次ぐ繁殖力を持ち合わせていて、人口ピラミッドは綺麗な富士山型だろう。その寿命ゆえに、街に出てくることはほとんど無い。

そびえ立つ木々が太く巨大なものになってきたと思うと、突然視界が開けた。円形の広場があり、それを囲むようにして手作り感満載の家々が立ち並ぶ。
「ここがフィスファか。」
「そうらしい。」
広場のあちこちで、背中に半透明の羽を生やした子供が遊んでいる。すると、その中から俺達を見つけた妖精が、こっちに近づいてきた。羽色は赤。
「なあ、にいちゃん達って…えーと…ボウンケシャか?」
「んん、冒険者ですね、ぼ、う、け、ん、しゃ。」
「へー、すっげー!俺はじめて見た!」
少年は嬉しそうだ。それから、ルナとクレアの手を取って
「一緒に遊ぼうぜ!ほら、早く!」
「おい、後ろの二人じゃだめか?」
「でっかいからハンデだらけじゃん。二人なら背もあんま変わんないし、歳も離れてないだろ。」
「…ちなみに何歳だと思ってます?」
「二人とも一三ぐらいじゃないのか?」
「一六です!」「一七だ!」
二人して声を大にする。よほど気にしているようだ。
「…まあ歳ぐらい気にするもんでもないよ。行こ!」
少年が二人をぐいぐい引っ張って行く。
「みんな、しゅーごー!」
声を張り上げると、幾つかあったグループが見事に一つになって、二人は円の真ん中に引き出される。途端に子供たちは賑やかになった。しばらくは帰って来ないだろう。
「さて、俺達はどうするかな。」
「私は薬草さがしてくるわ。本にこの森にあるって書いてあったから。」
シャルミエが後ろを振り返る。明るいところに出てきたからか、森の中は暗くて良く見えない。
「…帰ってこいよ?」
「大丈夫よ。」
そう言ってシャルミエはずかずか森へ入っていった。
「…宿でも探すか。」

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