fate/badRagnarökーー魔王の名はアーリマンーー

家上浮太

カレン・オルテンシア


「かはっ」

鈍痛。

腹部を思い切り巨大なハンマーで殴られたような、破壊力、吐血するほどの痛さである。

「被虐霊媒体質」と呼ばれる異能の持ち主で、「悪魔」に反応し、その被憑依者と同じ霊障を体現する。悪魔祓いにおいて初手、そして最大の難関とされる「隠れた悪魔を見つけ出す」のである。

シスターは微笑む。
出会って早々に腹パンをされたようなとんでもない関係性の構築だが、彼女らしかった。
「暗黒の聖者ならぬ『聖なる魔王』ですね」
「そう言ってくれると助かるよ、かのベルゼブブ・プリンス二体に対しては、それは丁重なる礼賛だ、そんな悪魔共よりも、元よりこの肉は真性悪魔に近い身、混血ならぬ純血、魔と交わらずとも、天魔であるがゆえに本来は、実践派の法術師の方が扱いを知っている、その『欲界の本質』に回帰したがるのは小生ぐらいなものだ、祖父でさえ孫に付き合っているだけ、聖も邪もないただの絶望だ」
「絶望ですか、文字通り、望みと絶縁されてますね、貴方の願いなんてどこにもないでしょ、ただ漠然と真理を追い求める亡者です」
「もはや根源を求める概念と化している、か、荒耶宗蓮でもあるまいに、この無明を癒し、悟りに近づけるのには何もかも虚ろだ」
「でしたら、まずは私を犯したらどうでしょう、自分の醜さと対面するのも真実を追い求めるならばこその行為なんじゃないでしょうか?」
他人の幸福は無性に潰したくなる程のサディストが、彼の幸福を粉砕しようとした、彼にとっての幸福とは、無明でいる、無知でいて何もかも知らないフリをする贅沢な悪徳。
「そうか、それも一理あるな、シスターよ」

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