ダンジョン潜って1000年、LVの限界を越えちゃいました
最悪の敵との死闘(後編)
もう疲れたよ…パトラッシュ…ガクッ
そして、双方はゆっくり歩み寄る。
禍々しい紫色の髪、濃い赤みを帯びた瞳、それに相反する翡翠のような美しい緑色、水晶のように聡明な透き通っているテラのオーラを纏ったキリガは、まるで神の如き神々しさを放っている。
対してティオーネは、うっすらと紅のオーラを纏いながら美しい黒髪と、焔の神とは思えないほど白い肌をしている。
容姿も整っており、見たもの全てを魅力するであろう。
しかし、紅蓮の生成された服と、膨大な内包するテラの量、圧倒的なまでの強者としての佇まいは、やはり神ということをその脳に焼き付ける。
そんな二人が相間見える時、それは、強者同士の激戦を意味する。
二人はゆっくりと立ち止まり、目線を交わす。
礼儀作法に乗っ取り一礼、そして、手を伸ばす。
決闘の礼儀として、申請者は掌を上に向け、承諾者は掌を下に向け合わせる。
この場合、ティオーネが下、キリガが上、と言うことになる。
そして、掌を合わせた後、自分の親指の肉を噛み切り、血を数滴流す。それを十字に合わせ、誓いを交わす。
「『我は、聖なる伝えに乗っ取り、此処に誓いを結ぶ。』」
瞬間、紫色のクロスリング状の魔法陣のようなものが現れる。
そして、双方の腕に一輪づつ巻き付けられる。
これは、誓いが結ばれた証拠だ。この印が無くなると、決闘の終了を意味する。
双方は三歩下がり、互いに構える。
刹那の沈黙を先に破ったのは、ティオーネだった。
「不死鳥焔《フェニックスフレイム》!!」
ティオーネの両手から、先程とは比べ物にならない位の業炎が
放たれる。
凄まじい熱量を放つその火の鳥は、音速を越え、ソニックムーブを引き起こして尚キリガへと迫る。
しかしーー
「晶壁」
キリガの創り出したテラの結晶壁により、それは消滅する。
いや、吸収されたのだ。薄緑の障壁は、業火を吸収し赤色へと変色する。
「反発」
そして魔法は、術者へと跳ね返る。
数倍にも威力を増して。
しかし、ティオーネは自身の魔法を跳ね返されたことに多少なり驚きつつ、冷静に相殺する。
この間、僅か五秒。
「強いな、キリガ!」
「そりゃどーも!」
キリガも、徐々にこの力に慣れ始めているようだ。
その証拠に、その荒々しい姿は変わらずとも、言葉使いや軽快な立ち振る舞い、そして凄まじいと言えるまでの精密な魔法の使い方。
まずキリガはバックステップを取り、その間に五センチ程の結晶テラを三発ほど放つ。次にティオーネの放った『炎弾』をバク転して翻し、直径五ミリ程の薄刃の結晶の刃を五つ飛ばす。
そして着地と共に大粒の結晶の霰を放つ。
いずれもティオーネの魔法に打ち消されているが、着実に集中を掻き乱している。
ーーしかしーー
「良いぞキリガ!この高揚感、久しく忘れておったものだ!」
カカッと軽快に、痛快に笑う。
そう、キリガの苦戦する中、彼女は笑っているのだ。その行為は、この激戦ですら彼女は楽しむ程の余裕を持っていることを意味する。
が、次の瞬間、彼女の顔は意地の悪いことを思い付いた子供のような表情になったかと思うと、ピタリ、と動きを止める。
また、キリガも同様に制止する。
そしてティオーネはおもむろに口を開きー
「私は少々飽きっぽい性格でなぁ、そろそろ終わりにしようと思うのだが…どうだキリガよ、妾の提案に乗る気は無いか?」
遊びに誘う幼児のように、目を煌めかせてキリガに問う。
「それはどんな提案だ?」
「互いに全力で技を放ち、立っていた方の勝ち、というゲームじゃ、どうじゃ?面白そうじゃろ!」
そして、キリガは数秒悩むような素振りをみせーー
「いいぜ、その勝負乗った!」
ニヤリと笑い、引き受ける。
そして二人は、互いに最強の必殺技を放つ為に集中力を練る。
目を瞑り、肩の力を抜き佇む両者。
一切の動作は無く、呼吸をする度に周りの大気が震えるような威圧感を放っている。
「『火、炎、焔、業火、獄炎、業炎、火炎、蒼炎、黒炎、陽炎、ありとあらゆる焔を集結し、今ここに神をも超えし一撃を産む。宇宙の理すらも破壊する壊滅の究極なる神炎、世界原始の一撃を求めん!!!』
彼女の詠唱の終了とともに、この空間一体を複雑な幾千もの魔法陣が埋め尽くす。
彼女がカッと目を見開くと同時に、魔法陣はティオーネの手元へと集まり一つとなる。
そしてーー
「究極神級魔『原始の太陽』!!」
放たれるは生物の限界を越え、彼女のみが到達した境地、神を超えた究極神級の魔法ーー
対してキリガはーー
「色々考えたけど……これしか思い付かねえわ」
『本気なのだ?キー』
「何を今更」
『うん、そうだね!やるのだ、キー!』
「おうよ!」
手にクロナを持ち、精霊術を発動させる。
この精霊術の能力、任意の対象からテラを扱う力を発動させる。
そして、キリガは己の纏うテラと大気中のテラ全てを凝結し、約十メートル程の巨大な三又槍を創り出す。
そこにクロナの闇の魔力を流し込み、黒く変色させる。
謎の力に目覚めたキリガの全力、かつて超越神に仕える七柱の家の一柱、漆黒の精霊クロナの全魔力を注ぎ込んだ、今のキリガ達の最大最強の究極技ーー
「『必殺!!!『漆黒の世界結晶槍砲』!!』」
二つの技は衝突し、周囲に稲妻を放ちながら競り合う。
「ゼェェェアァァァァァァァ!!」
ティオーネの叫びと共に、原始の太陽の威力は数倍に膨れ上がる。サイズ、内包テラ、熱量、スピード、共に異常に上がり、キリガの魔法を打ち砕かんとばかりに迫ってくる。
パキリ、とキリガ達の槍砲に小さな亀裂がはいる。
しかしーーー
『「っ!これが、俺達の全ッッ力だァァ!!」』
ーー負けずキリガ達の槍砲の威力も数倍に膨れ上がった。
黒き槍砲は黒いオーラを纏い、白い稲妻を放ちスピードを増して突き進んで行く。
亀裂が入りながらも、少しずつ太陽に沈んで行く。
そして、激しい競り合いの末ーー
「『いっけぇぇぇぇぇえええええ!--!!!』」
「っなぁ!?こ、これはーーーーーーグォォォォオオ…………………………」
槍砲は太陽を貫き、ティオーネ、いや、ダンジョンの一部そのものを巻き込み、遙か彼方へーーーーー
此処に、神とエルフの決闘の幕が下ろされる。
ーーーーーー勝者、エルフーーーーー
後にこの闘いが後のキリガ達に面倒事を運んでくるのは、また別の話。
ゼェ、ゼェ………
ま、間に合ったぁぁぁ………
そして、双方はゆっくり歩み寄る。
禍々しい紫色の髪、濃い赤みを帯びた瞳、それに相反する翡翠のような美しい緑色、水晶のように聡明な透き通っているテラのオーラを纏ったキリガは、まるで神の如き神々しさを放っている。
対してティオーネは、うっすらと紅のオーラを纏いながら美しい黒髪と、焔の神とは思えないほど白い肌をしている。
容姿も整っており、見たもの全てを魅力するであろう。
しかし、紅蓮の生成された服と、膨大な内包するテラの量、圧倒的なまでの強者としての佇まいは、やはり神ということをその脳に焼き付ける。
そんな二人が相間見える時、それは、強者同士の激戦を意味する。
二人はゆっくりと立ち止まり、目線を交わす。
礼儀作法に乗っ取り一礼、そして、手を伸ばす。
決闘の礼儀として、申請者は掌を上に向け、承諾者は掌を下に向け合わせる。
この場合、ティオーネが下、キリガが上、と言うことになる。
そして、掌を合わせた後、自分の親指の肉を噛み切り、血を数滴流す。それを十字に合わせ、誓いを交わす。
「『我は、聖なる伝えに乗っ取り、此処に誓いを結ぶ。』」
瞬間、紫色のクロスリング状の魔法陣のようなものが現れる。
そして、双方の腕に一輪づつ巻き付けられる。
これは、誓いが結ばれた証拠だ。この印が無くなると、決闘の終了を意味する。
双方は三歩下がり、互いに構える。
刹那の沈黙を先に破ったのは、ティオーネだった。
「不死鳥焔《フェニックスフレイム》!!」
ティオーネの両手から、先程とは比べ物にならない位の業炎が
放たれる。
凄まじい熱量を放つその火の鳥は、音速を越え、ソニックムーブを引き起こして尚キリガへと迫る。
しかしーー
「晶壁」
キリガの創り出したテラの結晶壁により、それは消滅する。
いや、吸収されたのだ。薄緑の障壁は、業火を吸収し赤色へと変色する。
「反発」
そして魔法は、術者へと跳ね返る。
数倍にも威力を増して。
しかし、ティオーネは自身の魔法を跳ね返されたことに多少なり驚きつつ、冷静に相殺する。
この間、僅か五秒。
「強いな、キリガ!」
「そりゃどーも!」
キリガも、徐々にこの力に慣れ始めているようだ。
その証拠に、その荒々しい姿は変わらずとも、言葉使いや軽快な立ち振る舞い、そして凄まじいと言えるまでの精密な魔法の使い方。
まずキリガはバックステップを取り、その間に五センチ程の結晶テラを三発ほど放つ。次にティオーネの放った『炎弾』をバク転して翻し、直径五ミリ程の薄刃の結晶の刃を五つ飛ばす。
そして着地と共に大粒の結晶の霰を放つ。
いずれもティオーネの魔法に打ち消されているが、着実に集中を掻き乱している。
ーーしかしーー
「良いぞキリガ!この高揚感、久しく忘れておったものだ!」
カカッと軽快に、痛快に笑う。
そう、キリガの苦戦する中、彼女は笑っているのだ。その行為は、この激戦ですら彼女は楽しむ程の余裕を持っていることを意味する。
が、次の瞬間、彼女の顔は意地の悪いことを思い付いた子供のような表情になったかと思うと、ピタリ、と動きを止める。
また、キリガも同様に制止する。
そしてティオーネはおもむろに口を開きー
「私は少々飽きっぽい性格でなぁ、そろそろ終わりにしようと思うのだが…どうだキリガよ、妾の提案に乗る気は無いか?」
遊びに誘う幼児のように、目を煌めかせてキリガに問う。
「それはどんな提案だ?」
「互いに全力で技を放ち、立っていた方の勝ち、というゲームじゃ、どうじゃ?面白そうじゃろ!」
そして、キリガは数秒悩むような素振りをみせーー
「いいぜ、その勝負乗った!」
ニヤリと笑い、引き受ける。
そして二人は、互いに最強の必殺技を放つ為に集中力を練る。
目を瞑り、肩の力を抜き佇む両者。
一切の動作は無く、呼吸をする度に周りの大気が震えるような威圧感を放っている。
「『火、炎、焔、業火、獄炎、業炎、火炎、蒼炎、黒炎、陽炎、ありとあらゆる焔を集結し、今ここに神をも超えし一撃を産む。宇宙の理すらも破壊する壊滅の究極なる神炎、世界原始の一撃を求めん!!!』
彼女の詠唱の終了とともに、この空間一体を複雑な幾千もの魔法陣が埋め尽くす。
彼女がカッと目を見開くと同時に、魔法陣はティオーネの手元へと集まり一つとなる。
そしてーー
「究極神級魔『原始の太陽』!!」
放たれるは生物の限界を越え、彼女のみが到達した境地、神を超えた究極神級の魔法ーー
対してキリガはーー
「色々考えたけど……これしか思い付かねえわ」
『本気なのだ?キー』
「何を今更」
『うん、そうだね!やるのだ、キー!』
「おうよ!」
手にクロナを持ち、精霊術を発動させる。
この精霊術の能力、任意の対象からテラを扱う力を発動させる。
そして、キリガは己の纏うテラと大気中のテラ全てを凝結し、約十メートル程の巨大な三又槍を創り出す。
そこにクロナの闇の魔力を流し込み、黒く変色させる。
謎の力に目覚めたキリガの全力、かつて超越神に仕える七柱の家の一柱、漆黒の精霊クロナの全魔力を注ぎ込んだ、今のキリガ達の最大最強の究極技ーー
「『必殺!!!『漆黒の世界結晶槍砲』!!』」
二つの技は衝突し、周囲に稲妻を放ちながら競り合う。
「ゼェェェアァァァァァァァ!!」
ティオーネの叫びと共に、原始の太陽の威力は数倍に膨れ上がる。サイズ、内包テラ、熱量、スピード、共に異常に上がり、キリガの魔法を打ち砕かんとばかりに迫ってくる。
パキリ、とキリガ達の槍砲に小さな亀裂がはいる。
しかしーーー
『「っ!これが、俺達の全ッッ力だァァ!!」』
ーー負けずキリガ達の槍砲の威力も数倍に膨れ上がった。
黒き槍砲は黒いオーラを纏い、白い稲妻を放ちスピードを増して突き進んで行く。
亀裂が入りながらも、少しずつ太陽に沈んで行く。
そして、激しい競り合いの末ーー
「『いっけぇぇぇぇぇえええええ!--!!!』」
「っなぁ!?こ、これはーーーーーーグォォォォオオ…………………………」
槍砲は太陽を貫き、ティオーネ、いや、ダンジョンの一部そのものを巻き込み、遙か彼方へーーーーー
此処に、神とエルフの決闘の幕が下ろされる。
ーーーーーー勝者、エルフーーーーー
後にこの闘いが後のキリガ達に面倒事を運んでくるのは、また別の話。
ゼェ、ゼェ………
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