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正反対の僕と彼女~2人の関係の行方~

梅谷シウア

#2 7.夏祭り~僕らの夏休み2~

旅行から帰ってきて2週間ほど。お盆の真っただ中、晴人は悩んでいた。なぜなら今日は、泉と共に地元の夏祭りに行くからだ。
「うーん、どうしようかな」
 現在時刻は午前11時、時間に余裕を持ったとしても、集合時間までには6時間以上ある。
 晴人が朝からこんな調子なので、結華の機嫌も決して良いものではなく、何とも言い難い雰囲気が、鎌ヶ谷家の中にあった。
「そういえば、ゆいねえ。今日の昼ごはん何食べたい? 夕飯は適当に作り置きしていくけど」
「何でもいい。夕飯は友達と食べてくる」
「そっか。じゃあ昼は炒飯にするよ」
 晴人はそう言い、手早く料理の支度を整える。そしてあっという間に、残り物を活用して炒飯を作り上げる。
 何をするでもなく、不機嫌そうにソファーを占領している結華に声を掛けてから、晴人は出来立ての炒飯を頬張る。すると、結華も用意されている炒飯を食べ始める。
「どうかな? いつものに少しアレンジを加えてみたんだけど」
「美味しい」
 結華は素っ気なくそう言うと、時計を見て、慌てて炒飯を掻き込む。
「ゆいねえは、もう出掛けるの? お皿だけでいいから、お湯につけといて」
「分かってる」
 結華はそう答え、皿をお湯につけると、部屋に戻る。
 晴人は1人残されたリビングで、興味もないバラエティ番組を流して炒飯を食べる。そして洗い物を片付けている間に、結華が家を出た。
 洗い物が終わる頃にはバラエティ番組も終わり、ニュースを読み上げるアナウンサーの声がこの部屋の中で唯一する音になっていた。
 晴人は、やることもないこの時間、本を読む気分にもなれず、集合時間の1時間前にアラームが鳴るようにセットし、ソファーで目を閉じ横になる。
 日も傾き始め、リビングには強い西日が差し込む頃、晴人はセットしていたアラームに起こされる。時間を確認してみれば先ほど4時を回った頃。
 部屋に戻った晴人は、いつもよりは気を使った格好に着替え、編についた寝癖を直す。そして、よし、と小さく呟いてから部屋を後にする。火や、ガスの元栓水道、所持品を確認し、家の鍵を閉め、集合場所に向かう。
 集合場所は駅前のロータリー。現在時刻は5時。約束した時間のちょうど15分前。周りには、晴人と同じく祭りに行くであろう、浴衣姿のカップルがちらほらと見える。
「お待たせー晴人」
 駅から出てくる人ごみの中から、いつも隣から聞こえる、明るい声が聞こえてくる。
「そんなに待ってないから、慌てないで。まだ集合時間でもないし。その恰好で走るのは危ないよ」
 えへへ、と言いながら、晴人の前にやって来たのは、撫子の描かれた浴衣を身に纏い、髪を束ね、顔には薄っすらと、元の顔の良さを引き立たせるよな化粧をした、いつもとは全く違うイメージの、和風美人になった泉だった。
「お待たせー。浴衣着るのに時間がかかってね」
「まだ集合時間じゃないから気にしないでいいよ。僕が早く来ただけだし」
「そう? じゃあお祭りに行こっ」
「そうだね。早いうちに屋台回って、花火見る場所も取りたいし」
 晴人は、着慣れない浴衣姿の泉に歩調を合わせて、祭り会場である市役所前の通りへと向かう。
「最初はどこに並ぶ?」
「僕はどこでもいいよ。泉さんはやりたい事とか、食べたいものとかないの?」
「やっぱり、たこ焼きと、リンゴ飴、あと、綿菓子とか。それとねえ、射的もやってみたい」
「夏祭りと言えばって感じだね。あとは、焼き鳥とか?」
「焼き鳥も美味しいよね。考えてたらお腹空いてきちゃった」
「じゃあ、たこ焼き買って、食べながら回る? 1周したら、焼き鳥とか温かいまま食べたいやつを買って、花火を見る場所で座って食べるって感じにしてさ」
 晴人の提案に、泉は、うん、と頷いて屋台街を回ることにする。
 学校からは少し離れているここでは、学校の面々とは会うことなく、2人は、スクールカーストの差なんて無い、2人らしいペースで、ともに時間を過ごしていく。
「おっ、嬢ちゃん可愛いね。坊主もやるじゃないか」
 2人が屋台街を後にしようとしていた時、声を掛けてきたのは近所に住むおじさんだった。
「何やってるんですか?」
「見てわからんのか? くじだよ。お前らもやっていくか?」
 2人は、どうする? と互いに顔を見合わせる。
「じゃあ、1回ずつやります」
「泉さんがそう言うなら、僕はいいけど」
 晴人はそう言いながら、おじさんに2人分の料金を払う。
「どっちがいいのを引けるかな?」
「私はどっちがいいの、とかよりも旅行券とか遊園地のチケットとかが欲しいな」
「また、この間の5人で行きたいの?」
「うん、色々あったけど楽しかったし」
 そういう泉の顔には嘘だと思えるような中途半端な笑顔ではなく、心の底から楽しんでたんだと分かるような笑顔が見られた。
「じゃあ、引こっか」
「そうだね」
 晴人と泉は、同時にくじを引いて、そっと開ける。そこには4等と2等の文字が。
「おお、やるじゃねーか、2人とも。ほら、これが景品な」
 4等を引いた晴人がもらったのは、くじ代と同じくらいのコーヒーチケット。2等を引いた泉がもらったのは、そこそこな額の商品券。
「なんだか、現金ですね」
「こうでもしないと、なかなかな。子供用のおもちゃてんこ盛りのもあるんだけどな」
「どっちかって言うと福引みたいな景品だね」
「ははは、確かにそうかもな」
「認めちゃうんですか」
「まあ、合ってるからな。それじゃお2人さん仲良くな」
「はい。それじゃまた」
 2人は、おじさんの店を後にし、花火の見やすい場所に移動した。そこは、朝市でも使われるような場所で芝生も敷いてあり、まだ花火が上がるには時間があるというのに、ちらほらと人影がある。
 晴人は、持ってきていたレジャーシートを敷くと、泉との間に買ってきた食べ物を置いて座る。
「ようやく座れたね。足とか大丈夫? 痛めてない?」
「うん。晴人が気を使ってくれたのもあって、そんなに疲れてないし大丈夫だよ」
「それなら良かった」
 2人は、買ってきた焼き鳥や、焼きそば、リンゴ飴などを食べながら花火が上がるまでの時間を過ごす。
 2人が、ほとんど食べ終わり、他愛もない話を始めると、夜空に一凛の大きな花火が上がる。これが花火大会スタートの合図だ。その後は小さな花火に、大きな花火、柄の花火も上がる。
「綺麗だね」
「うん、とってもきれー」
 連続して小さいのが上がったかと思えば、大きなものがものすごい高さまで上がっていく。その幻想的な風景というのは短く感じるもので、何度かの盛り上がりを終えたのち、最後の盛り上がり、クライマックスへと差し掛かる。
 小さいものに、大きなもの。すべてが入り乱れるようにして上がっては、消えていく。降ってくるタイプのものは、まるで流れ星のごとく、しかし、ゆっくりと落ちていく。そして締め、やはり大きな花火が何発か上がり、盛り上がっていた夏祭り、花火大会は終わりを告げる。
「花火、綺麗だったね」
「うん、すごい綺麗だった」
「誘ってくれてありがとね、晴人。また今度」
 気づくと、もう分かれ道。右に行けば駅へと続く道。左は鎌ヶ谷家があるマンションへの道。
「送っていくよ。もうこんなに暗いし。せめて駅まででも」
「えっ」
「ほら、駅はこっちでしょ」
 晴人は、泉の手を引いて右側に曲がる。
「ほんとにありがと」
「いいよ、誘ったのは僕なんだから」
 分かれ道から駅までの距離はそう遠くない。2人はあっという間に駅に着いてしまう。
「言いそびれてたけど、その、浴衣、っていうか、メイクも含めて、今日の泉さんは、雰囲気違ったけど良かったよ。今度こそ、またね」
「…………うん。またね」
 泉は、少し急ぎ目にホームに向かう。そして、電車が来るまでのわずかな時間にこう漏らすのであった。
「さいごのあれ、ずるいって」

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コメント

  • ハルヒ

    とても面白かったです。
    次の更新はいつですか?

    0
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