正反対の僕と彼女~2人の関係の行方~

梅谷シウア

#1 10.体育祭~彼女は運動も得意?~その3

昼休みも明け、午後の種目が始まる。午後の最初の種目は部活動対抗リレーだ。多くの部活は仮装や、アピールをしながら走るが、一部の部活は、1位の景品である賞金を狙っていたりもする。
 そんな青春ど真ん中のイベントがメインの午後、晴人はどこで時間をつぶそうかと、解放されている場所の中でも、人のいなそうな場所を探していた。
「あれ、晴人?」
 校舎内の解放されているスペースを、うろついていた晴人に声をかけてきたのは、泉だった。
「泉さん、どうしたの? こんなところで」
「午前中の短距離走の後、足を挫いたんだけど、痛くなかったから放置したら今になって痛み初めて」
 そう言いながら、晴人に赤く腫れあがった足を見せる。
「救護テントに行ったほうがいいよ。歩ける?」
「さっき行ってきたんだけど、熱中症気味の人が多くて、なかなか見てもらえそうになかったのよ」
 6月とはいえ、快晴で気温も高く、水分補給を怠るとすぐに熱中症や、脱水症状になってしまうような日だったので、救護テントはその人たちに追われていて、よほどの怪我人でもない限り後回しにされていた。
「そっか。とはいえ、その足じゃ大変だよね。ちょっと待ってて」
「えっ、ああ、うん。分かった」
 大人しく待ってるように、泉に言った晴人は、学校の裏側にあるコンビニに行った。そこで泉の怪我の手当てに使えそうな、湿布、氷などを購入すると急いで泉が待っている校舎へと向かう。
「ごめん、お待たせ。ちょっと足を出してくれる?」
 息を軽く切らし、戻ってきた晴人は椅子を持ってくると、そこに泉を座らせ、泉の足の手当てをしていく。
「えっと、ありがとね、晴人」
「うん。まあ、気にしないでいいよ」
 泉の足の手当てを終えた晴人は、よっこらせと立ち上がると自動販売機に、泉の分と自分の分の飲み物を買いにく。
「はい、これ」
「えっ、悪いよ」
 受け取ろうとしない泉に、晴人は2本も飲めないと言い、何とか受け取らせると、屋上に向かおうとする。
「昼休みって、いつもどこに行ってるの?」
 泉は暇なのか、晴人との会話を続けようとする。
「僕は屋上にいるけど、それがどうしたの?」
「いや、いつも私の友達たちが席使っちゃってるし、昼休みに教室にいないから、どうしてかなって」
「席使ってることなんて気にしなくていいよ。僕は屋上で食べるのが好きだし。それはそうと、部活動対抗リレー始まってるよ。見にいけば?」
「ならさ、人が少ないおすすめの場所教えてよ。そこで、晴人と話しながら見たいし」
 僕と話したい? いやいや、そんなまさか。ゆいねえについて知りたいのかな? 同じ吹奏楽部だし。あとなんだっけ、人が少ない場所、人が少ない場所。うーん、泉さんは足痛めてるわけだし、階段は少ないほうがいいよね。
「じゃあ、体育館との渡り廊下に行こっか。あそこは日陰だし、人もそんなには多くないから」
 そっか、じゃあそこにしよう。と泉が言ったので、晴人と泉は体育館と校舎との渡り廊下に行き、部活動対抗リレーを眺める。眺めながら2人は結華のことや、部活動、クラスのことについて話した。
 それから少しすると、部活動対抗リレーが終わり、友達が探しているということで、泉は自分たちのグループに戻っていった。
 その後、団対抗リレーが行われている中、晴人は泉について考えていた。彼女はなぜ僕なんかに、どうして……
 考え事をしていると時間はあっという間に過ぎるもので、気づけばもう、閉会式が始まろうとしており、晴人は急いで整列しに行った。
 閉会式では先ほど行われた、部活動対抗リレーのベスト仮装賞や、総合優勝などが発表された。今年度の総合優勝は秋組で、2位の冬組に対してもかなりの点数差があった。
 閉会式が終わると、体育祭が終わったと言わんばかりに片付けの作業が始まった。片付けの中、打ち上げという言葉がよく出てきて、晴人も誘われたりした。疲れ切っていた晴人はその誘いを、バイトがあるから、などといったありふれた理由をつけて欠席することにした。
 こうして、片付けが終わり、日も傾き始めたころ、打ち上げに参加するもの、そうでないものはおいておき、学校としての体育祭関係は幕を閉じた。

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