正反対の僕と彼女~2人の関係の行方~

梅谷シウア

#1 6.キャンプ~彼女は何でもできて~その3

自分のロッジに戻った晴人は、特にすることも無く、1人少し早めに眠りについた。しかし、そのまま朝まで寝ることはなく、ちょうど日付が変わる頃にどこからか聞こえてくる多人数の喋り声で目を覚ました。どうやら、恋話をしているようだった。
 泉さんや、習志野さんと仲が良いのを勘繰られたりしたら大変そうだし、僕は寝たふりをしてやり過ごそうかな。
「泉さんってやっぱすごいよな」
「顔も良いし、スタイル良いし、人当たりもいいし、最高だろ」
「高嶺の花って気もするけどな」
「席替えないらしいし、最初隣の席になりたかったわ~」
「そこで呑気に寝てる、友達少なそうな鎌ヶ谷とすら仲良くしてるんだぞ。隣の席でもっと親密度を高めたかったわ」
「それで言われるんだろ。良い人だけど、付き合うのはちょっと、ごめんなさい。って」
「酷いな、おい。ってかその結末は固定なのかよ」
 良かったー、僕起きてたらかなり面倒な感じになってたんじゃないの?寝たふりしておいて良かった。
 晴人のロッジでは起床時間まで雑談が続き、晴人も夜中に騒がしさで目を覚ましてから、寝るに寝れず結局起きていた。どうやら、どこの班も同じようで、眠そうに欠伸をしている光景が朝食の間見られた。今日は昼まで近くの山をハイキングをする事になった。
 昨日に比べるとみんな静かだな。やっぱり徹夜で喋ったりして疲れ切ってるのかな。僕はそこまで疲れてないけど。やっぱり1回寝たからかな。
 山頂に着くまでは本当にちらほらと疲れた、眠いといった事が聞こえてくるだけでかなり静かな事になった。しかし、頂上に着くと今までの静かさが嘘のように声が上がった。
「うわー、なにこれすごい綺麗な景色」
「見渡す限りの自然ね」
「マイナスイオンとかすごそうじゃない?」
「美容に良さそうね」
 女子が会話に盛り上がってるなか、男子は男子で森の中で遊び始めていて、さっきまでの雰囲気は嘘のようだった。昼ご飯は既製品の弁当で、広大な自然の中で食べるものとしては、違うだろといった会話がちらほらと聞こえた。
 自然の中で弁当を食べたら味が変わるみたいなことを誰かがどこがで言ってた気がするけど、そんなことないなぁ。環境で変わるとは思えないし。
 その後の帰り道は、殆どの生徒が意気消沈していて、帰りのバスに乗り込むや、否や、眠りにつく人達も多かった。行きと座席も変わらないので、晴人の椅子は後ろの2人から最初の数分間は蹴られ続けた。
 はぁ、学校行事は疲れるな。そういえば、富士山が見えるとか言ってた気がするなぁ。中途半端な時間寝ちゃったから、眠くないし見るだけ見るかな。
「おぉ、本当に富士山見えるなぁ。行きの方がこっちの座席からは見やすかったな」
 あれ? もしかしてこのクラスの人たちみんな寝てるのかな?
 実際には、晴人の隣の席の泉も起きていた。ただ、目を覚ましたのが、晴人が富士山を眺めるためにバスの通路に窓側の座席から身を乗り出していて、晴人の顔が泉の眼前にあって、驚いて寝たふりをしていたのである。泉は帰りのバスでずっと先ほどの光景を思い出しては赤面し、晴人に目を合わせないように寝たふりを続行した。
 帰りのバスは高速道路で事故があったとかでかなり遅くなってしまった。窓のフレームに頬杖をついて外の景色を見ていた晴人は気づいたら眠りについていた。泉も疲れていたのか、長い道のりの中で眠りにつき、バスの揺れで晴人の肩を枕代わりにゆっくりと眠った。
 それから数時間、到着時間はとっくに過ぎてようやく、学校にバスが戻ってきた。クラスメイトが続々と目を覚ますなか、晴人は、頭痛で目を覚まし、現状を確認した。
 ようやく学校か。ってなんで泉さんが僕の肩に寄りかかってるの? でもこれ、起こしづらいよね。気持ちよさそうに寝てるしさ。
 肩に寄りかかった泉が気持ちよさそうに寝ていて、起こす気にもなれず、寝たふりをした。
「おーい、みりんちゃん」
「みりんちゃん着いたよ」
 泉は友人に起こされてから、辺りを見回して、赤面すると、あっという間に帰って言った。晴人は、クラスの男子から殺気のこもった視線を感じて、バスを出たが、そこにはさっきの様子を外から見ていたと思われる姉、結華の姿があり、無事に家に帰ることを諦めたのであった。

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