侯爵と約束の魔女 一目惚れから始まる恋
邪悪なるもの≒夢見るもの
私は子どもの頃から、みじめだった。
父は社交界のみんなから女性を虐待すると疑われるほど酷い男だったし、母はそんな父を盲信するほど愚かな女だった。
母を守るためにと伯父から使わされた一家は、一人を除いて陰気だった。その一人とは、すぐに仲良くなった。それが子ども時代で、唯一よかったことだ。彼の名前は、ゲイブリエル・マクドナルド。女性と子どもの守護天使である彼の名前は、彼が私の守護天使であることを神が示したのだ。
そして私は両親に頼み、早くから花嫁学校に通うことで、家から逃げ出した。ゲイブリエルに誓った夢を本当のものにするため、私は学校で努力を惜しまなかった。公爵と結婚し、高い地位につき、社交界で華々しく生きる、それが私の夢だった。
そして社交界にデビュタントとして参加した年、私はジャック・ルフェールと恋に落ちた。あんな素晴らしい恋は、この世に二つとないだろう。彼は子爵だったため、私は彼のために夢を捨てた。だって愛とは、そういうものでしょう?
盛大な結婚式から二年後、息子のジェイミーが生まれた。そしてその日に、ゲイブリエルの邪魔な父親も死んだ。私はその日を祝日のように祝うようになった。
ジェイミーの将来を思えば、マルグスの子爵という低い爵位は微妙に感じたが、そのときは、思いを頭から締め出すことができた。
ジェイミーの3歳の誕生日の翌日、ジャックの本当の妻と名乗る女が子どもを連れて、我が家へやってきた。
あの日、私の幸せな結婚生活は終わった。
ジャックは、あの売女と共に、マルグスに行ってしまったのだ。しかし彼は、絶対に私の元に帰ってくる。ゲイブリエルだって、そう言っているのだから絶対だ。
私は待っている間、名前を出すことも嫌な従兄弟の世話になることにした。一度、私の頼みを断ったやつに頼むことは嫌だったが、キングレイの金はいずれジェイミーのものになるのだから、いいだろう。
しかし、あいつの長男は支援を打ち切ると言った。妻に子どもができたから、金をその子のために貯めたいのだと、傷ついた私の前で、嬉しそうに語ったのだ。
そんなことは許されない。私はゲイブリエルと相談し、2人……いや、3人を殺すことにした。
今までの感謝を伝える食事会と称し、チャールズとその妻を、従兄弟が買った粗末な(こんな家に私を住まわせたことは、死んでも許さない)我が家に呼んだ。その日は大雨だった。神が私に味方してくれたのだ。
食事会の最中に、気分が悪いと中座し、ゲイブリエルが馬車に細工するところを見守った。
そして奴らは、いずれ私の家になるキングレイ邸への帰り道に、木にぶつかって死んだ。私を侮辱したからだ。
ジェイミーがキングレイ侯爵になるためには、あともう一人殺さなくてはならない。次は死ぬところを、水晶玉越しではなく、生で見たい。ゲイブリエルにそう頼むと、彼は渋々だが、了承してくれた。
さあ、どんな風に殺してやろうか。ああ、とても楽しみだ。
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