侯爵と約束の魔女 一目惚れから始まる恋
永遠に続きを
ジョンはまた医師のセドリックに看てもらった。全治三ヶ月の診断を下され、ジョンは寝室で安静を言いつけられた。
《戦乙女》の面々は、エヴァをキングレイ邸に残し、エリザベスとゲイブリエルを王都の警察に連行していった。
「ジョン、ケガの具合はどうですか?」
エヴァはジョンの部屋に入ると、心配そうに尋ねた。ジョンは悲しげな微笑みを浮かべる。全くそんな気分ではなかったが、エヴァを安心させたかったからだ。
「ケガがなんだ。生きているから、それでいい……兄さんたちと生まれるはずだった子どもは、もっと幸せになるはずだったんだ」
生まれるはずだった子どもの話をエリザベスから聞かされたジョンは、悲嘆に暮れていた。あの子は両親に愛され、幸せな未来が約束されていた。それを奪ったエリザベスを、ジョンは許せそうになかった。
「そんなこと言わないでください、ジョン。私はあなたがケガをしただけで、こんなにも胸が痛いんですから」
エヴァはジョンの手を握った。暖かな温度が、ジョンの手に伝わる。
「誰にも知られずに両親と弔われてしまったけれど、あの子もちゃんと弔ってあげましょう? こんなに優しい叔父さんが、あの子の魂が天に迎えられるように祈るんだから、神様だって優しくしてくれます」
「ああ、愛しいあの子の魂に神の祝福を……そういえば、エヴァ。君はいつまで、私に敬語で喋るんだい?」
ジョンは十字をきった。そしてエヴァの手を取り、口づけると、いたずらな輝きを灯す瞳で彼女を見つめる。
「これは癖のようなものなんです。だってキングレイ様は、ずっと私のおとぎ話の騎士だったんですよ」
エヴァは頬を染めながら、はにかんだ。
「おとぎ話の騎士か……彼もミュルディスの魔女と恋に落ちたんだよ。愛する女性のため、彼女の種族を救った。まさに童話のような存在だ」
エヴァは知らなかった事実に、目をぱちくりとさせた。
「まあ、知らなかったわ」
「知らなくて当然だよ。彼女がどこの出身か、後の世のキングレイの当主が贔屓をしてしまわないように、隠してしまったんだから……だから、このことは私たちと、私たちの子どもだけの秘密だ」
ジョンはエヴァの耳元でささやいた。
「君はいつ軍を退役できる? 早く私の元に来てほしい。そうすれば、私はもう君を離さない」
エヴァは耳にかかる吐息に震えた。そしてジョンの背中に手を回し、愛していると伝える。
「あと一年、契約が残ってるわ……待っていて、絶対にあなたの腕に帰ってくるわ」
「一年か……長いけれど、ちゃんと待つよ。遠距離恋愛だって、私には全く苦じゃない。ああ、苦しくないとも……時々、君に会いに行っていいかい?」
ジョンはエヴァを強く抱きしめる。まるで溶け合おうとするみたいに。
「私だって、あなたに会いにいくわ。時間も距離も、私たちの邪魔はできないもの」
エヴァはジョンの唇に優しいキスをした。
「ああ、愛しいエヴァ、私だけの魔女。私は君のように魔法は使えないけれど、君を幸せにしてみせると誓うよ」
エヴァは思わず笑ってしまった。ジョンが不思議そうにエヴァを見つめる。そんな彼も愛おしくて、エヴァは子どもにするような頬のキスを彼に贈った。
「あなたは魔法を使えるわ。あなたは私に恋の魔法をかけたもの…この世の中で最も強い、そして永遠の魔法を、ね」
エヴァの愛しさが募った言葉に、ジョンは幸せそうに笑った。ああ、彼のこの笑顔が大好き。エヴァもつられて、笑みを深める。
天上からの光が降り注いでいるかのように、彼女たちは幸せに光り輝いていた。こんな時間を重ね、私たちは幸せになる。そんな未来が二人を待っていた。
キングレイとミュルディスはこれからも続いていく。その歴史のタペストリーを編み続ける人が、ここにいるのだから。
《戦乙女》の面々は、エヴァをキングレイ邸に残し、エリザベスとゲイブリエルを王都の警察に連行していった。
「ジョン、ケガの具合はどうですか?」
エヴァはジョンの部屋に入ると、心配そうに尋ねた。ジョンは悲しげな微笑みを浮かべる。全くそんな気分ではなかったが、エヴァを安心させたかったからだ。
「ケガがなんだ。生きているから、それでいい……兄さんたちと生まれるはずだった子どもは、もっと幸せになるはずだったんだ」
生まれるはずだった子どもの話をエリザベスから聞かされたジョンは、悲嘆に暮れていた。あの子は両親に愛され、幸せな未来が約束されていた。それを奪ったエリザベスを、ジョンは許せそうになかった。
「そんなこと言わないでください、ジョン。私はあなたがケガをしただけで、こんなにも胸が痛いんですから」
エヴァはジョンの手を握った。暖かな温度が、ジョンの手に伝わる。
「誰にも知られずに両親と弔われてしまったけれど、あの子もちゃんと弔ってあげましょう? こんなに優しい叔父さんが、あの子の魂が天に迎えられるように祈るんだから、神様だって優しくしてくれます」
「ああ、愛しいあの子の魂に神の祝福を……そういえば、エヴァ。君はいつまで、私に敬語で喋るんだい?」
ジョンは十字をきった。そしてエヴァの手を取り、口づけると、いたずらな輝きを灯す瞳で彼女を見つめる。
「これは癖のようなものなんです。だってキングレイ様は、ずっと私のおとぎ話の騎士だったんですよ」
エヴァは頬を染めながら、はにかんだ。
「おとぎ話の騎士か……彼もミュルディスの魔女と恋に落ちたんだよ。愛する女性のため、彼女の種族を救った。まさに童話のような存在だ」
エヴァは知らなかった事実に、目をぱちくりとさせた。
「まあ、知らなかったわ」
「知らなくて当然だよ。彼女がどこの出身か、後の世のキングレイの当主が贔屓をしてしまわないように、隠してしまったんだから……だから、このことは私たちと、私たちの子どもだけの秘密だ」
ジョンはエヴァの耳元でささやいた。
「君はいつ軍を退役できる? 早く私の元に来てほしい。そうすれば、私はもう君を離さない」
エヴァは耳にかかる吐息に震えた。そしてジョンの背中に手を回し、愛していると伝える。
「あと一年、契約が残ってるわ……待っていて、絶対にあなたの腕に帰ってくるわ」
「一年か……長いけれど、ちゃんと待つよ。遠距離恋愛だって、私には全く苦じゃない。ああ、苦しくないとも……時々、君に会いに行っていいかい?」
ジョンはエヴァを強く抱きしめる。まるで溶け合おうとするみたいに。
「私だって、あなたに会いにいくわ。時間も距離も、私たちの邪魔はできないもの」
エヴァはジョンの唇に優しいキスをした。
「ああ、愛しいエヴァ、私だけの魔女。私は君のように魔法は使えないけれど、君を幸せにしてみせると誓うよ」
エヴァは思わず笑ってしまった。ジョンが不思議そうにエヴァを見つめる。そんな彼も愛おしくて、エヴァは子どもにするような頬のキスを彼に贈った。
「あなたは魔法を使えるわ。あなたは私に恋の魔法をかけたもの…この世の中で最も強い、そして永遠の魔法を、ね」
エヴァの愛しさが募った言葉に、ジョンは幸せそうに笑った。ああ、彼のこの笑顔が大好き。エヴァもつられて、笑みを深める。
天上からの光が降り注いでいるかのように、彼女たちは幸せに光り輝いていた。こんな時間を重ね、私たちは幸せになる。そんな未来が二人を待っていた。
キングレイとミュルディスはこれからも続いていく。その歴史のタペストリーを編み続ける人が、ここにいるのだから。
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