異世界に転生したので楽しく過ごすようです
第164話 俺に託された事のようです
コンコンコンッ
俺が、神からの罰に打ちひしがれていると、再びドアがノックされた。
「おはようございます。先程、姫様がこちらから出て行かれるのを見ましたので、お呼びにあずかりました」
「おはようございます、執事長さん」
「私のことは、セバスとお呼びください」
まんまかよ!執事だからセバスって言うのはどうかと思うのだが……。まあ仕方がない。
「朝食の後、聖王様の方から重要な話があるそうです」
「聖王様が……。分かりました。覚えておきます」
重要な話とはおそらく、戦争についてだろうが、俺が話をするならともかく、聖王様からの話となると何の話をされるのかさっぱりだ。
「そちらの女性の方も、ご一緒にということでしたので、よろしくお願い致します」
「はい」
「では、朝食をこちらへお持ちしますので、少々お待ちください」
そう言ってセバスさんは部屋から出て行った。
ここに持ってきてもらうのは少し気が引けるが、厚意は預かっておこう。
そうして数分後、セバスさんが朝食を持ってきてくれた。ロールパンに、スクランブルエッグとサラダ、それと飲み物の軽いものだ。
「シロ様にはこちらを」
セバスさんはシロ用の食事まで持ってきてくれたようだ。見た感じ、ツナみたいだな……。
「ニャーン♪」
匂いを嗅いだシロは嬉しそうに鳴いて、脇目も振らずに食べ始めた。
「ほっほっほ。元気がよろしいですね」
「ニャー」
「そうですか。どんどんお食べ下さい」
俺はその風景を見て、孫に甘くなるおじいちゃんがいるなと思った。女神も同じ事を思ったのだろう。俺と目があって、吹き出していた。
それから、俺と女神は朝食を取る。
ほかほかで出来たてのロールパンを口に含む。ふわっとした生地の中に、マーガリンが溶けていて美味しい。マーガリンがそこまで強くないのがいいな。
それから、スクランブルエッグとサラダだが、普通に美味しかった。単純なものなのにどうしてここまで美味しくなるのか、時間があったら聞いてみたいものだ。
そうして、朝食を取り終えた俺と女神は、セバスさんの案内で聖王様の元へ行く事となった。
謁見の間に行くのかと思ったのだがそういう訳ではなく、どうやら聖王様の寝室まで行くようだ。
俺が目立たないようにしてくれと言った事も影響しているのだろうが、セバスさん曰く、聖王様は栄養失調によって、後二、三日は寝ておいた方が良いとの事。
そうこうしている内に聖王様の寝室らしき扉の前まで来た。
セバスさんが、そのドアをノックする。
「セバスです。頼まれていた方をお連れ致しました」
「うむ。入れ」
「失礼致します」
俺と女神もセバスさんに続いて、聖王様の寝室へと入った。
聖王様はベッドの上で、横になっていた。昨日は切羽詰まっていて良く見ていなかったのだろう。聖王様はやせ細り、顔が青白くなっている。
「セバス、お前には我が娘の護衛を任せる。私が攫われるような事があったのだ、娘にないとは言いきれん。任せたぞ」
「かしこまりました。この命に変えても」
セバスさんは、踵を返して部屋を後にした。
娘と言えば、シャール王女か。俺も、もう知り合っているのだ。攫われるような事があったら、無視してはおけん。
だが、今は大丈夫だろう。聖王様の話を聞こう。
「聖王様、俺達に話があるとか」
「うむ。頼みたい事があってな」
「頼みたい事ですか?」
「この密書を、国王と帝王に渡して欲しい。君達は既に知っているから話すが、これには戦争についての我が国の立場を確立するためのものだ」
「立場?何故そんな事を?」
「お主が言ったであろう。王国と帝国はこの国を恨む事になると。そうならないようにするためだ」
なるほど。確かに俺はそんな事を言ったな。
だが、こんなに早く対策を練るとは思ってもみなかった。
「これは私の独断である。一々話を通していたら、守れるものも守れん。私の責務は国民を守ることだからな」
「その志、感銘致します」
「そうかしこまらずとも良い」
「では、おっしゃる通りに」
「それで、どうだ?私の願いを聞いてくれるか?」
王国と帝国に密書を持っていく。それだけならばまだ良かった。だが、密書という事はそれぞれの王に会わなければならないという事。
俺にとってはそれが最も怖い。つい昨日、昏睡している皆を連れて行ったばかりで、無理を通したと言うのに、会うのは……という気持ちがある。
「無理か?娘から聞いた話では、各国の王女と関わりがあると聞いていたのだが」
「まぁ、確かにそうですけど……」
「今の私には頼める者がそなたしかおらぬ。私の我儘であることは百も承知なのだ。この国の民の為、どうかよろしく頼む」
この国の民を守ろうとする聖王様の気持ちと、今の俺の気持ちの重さは天秤にかけなくても分かる。
「ねぇ。私からもお願い。これはあなたしか出来ない事だから、どうかこの世界の人を守って欲しい」
珍しく、女神の本気の頼みを聞いた。
ここまでの事を頼まれているのなら、受けるしかないだろう。上手くできるか分からないが、やってみよう。
「聖王様、その役割、俺が務めさせてもらいます」
「そうか。ではよろしく頼む」
「はい」
「私はこれから戦争に向けてやるべき事がある。恐らくこの密書を届ければ、王国と帝国も共に急ピッチで準備を始めるだろう。それと、返事を貰うだろうから、いつでもいい、私に報告してくれ」
「かしこまりました。では、俺はこれで」
「うむ」
俺は聖王様の部屋を後にし、早速、移動を開始する事にした。
「ありがと」
俺の背後で、感謝の言葉を口にする女神。
「いや、当然の事だろ?俺の気持ちなんて些細な事だ。その世界を守れるなら何でもするさ」
昨日、女神にも話た事だ。なんの嘘偽りもない。
「そっか」
「それでなんだが、女神に頼みたい事がある」
「転移でしょ?分かってる」
「昨日に引き続きすまんな」
「大丈夫大丈夫!私に出来る事はこれくらいしかないし!」
はにかみながら女神はそう言った。
俺には無理をして言った言葉だと言うことが分かる。女神は自分が何も出来なかった事を嘆いていたから。
「じゃあ行くよ、まずは王国から」
女神が俺に触れる。
そうして俺は密書を届ける為に王国に飛んだ。
俺が、神からの罰に打ちひしがれていると、再びドアがノックされた。
「おはようございます。先程、姫様がこちらから出て行かれるのを見ましたので、お呼びにあずかりました」
「おはようございます、執事長さん」
「私のことは、セバスとお呼びください」
まんまかよ!執事だからセバスって言うのはどうかと思うのだが……。まあ仕方がない。
「朝食の後、聖王様の方から重要な話があるそうです」
「聖王様が……。分かりました。覚えておきます」
重要な話とはおそらく、戦争についてだろうが、俺が話をするならともかく、聖王様からの話となると何の話をされるのかさっぱりだ。
「そちらの女性の方も、ご一緒にということでしたので、よろしくお願い致します」
「はい」
「では、朝食をこちらへお持ちしますので、少々お待ちください」
そう言ってセバスさんは部屋から出て行った。
ここに持ってきてもらうのは少し気が引けるが、厚意は預かっておこう。
そうして数分後、セバスさんが朝食を持ってきてくれた。ロールパンに、スクランブルエッグとサラダ、それと飲み物の軽いものだ。
「シロ様にはこちらを」
セバスさんはシロ用の食事まで持ってきてくれたようだ。見た感じ、ツナみたいだな……。
「ニャーン♪」
匂いを嗅いだシロは嬉しそうに鳴いて、脇目も振らずに食べ始めた。
「ほっほっほ。元気がよろしいですね」
「ニャー」
「そうですか。どんどんお食べ下さい」
俺はその風景を見て、孫に甘くなるおじいちゃんがいるなと思った。女神も同じ事を思ったのだろう。俺と目があって、吹き出していた。
それから、俺と女神は朝食を取る。
ほかほかで出来たてのロールパンを口に含む。ふわっとした生地の中に、マーガリンが溶けていて美味しい。マーガリンがそこまで強くないのがいいな。
それから、スクランブルエッグとサラダだが、普通に美味しかった。単純なものなのにどうしてここまで美味しくなるのか、時間があったら聞いてみたいものだ。
そうして、朝食を取り終えた俺と女神は、セバスさんの案内で聖王様の元へ行く事となった。
謁見の間に行くのかと思ったのだがそういう訳ではなく、どうやら聖王様の寝室まで行くようだ。
俺が目立たないようにしてくれと言った事も影響しているのだろうが、セバスさん曰く、聖王様は栄養失調によって、後二、三日は寝ておいた方が良いとの事。
そうこうしている内に聖王様の寝室らしき扉の前まで来た。
セバスさんが、そのドアをノックする。
「セバスです。頼まれていた方をお連れ致しました」
「うむ。入れ」
「失礼致します」
俺と女神もセバスさんに続いて、聖王様の寝室へと入った。
聖王様はベッドの上で、横になっていた。昨日は切羽詰まっていて良く見ていなかったのだろう。聖王様はやせ細り、顔が青白くなっている。
「セバス、お前には我が娘の護衛を任せる。私が攫われるような事があったのだ、娘にないとは言いきれん。任せたぞ」
「かしこまりました。この命に変えても」
セバスさんは、踵を返して部屋を後にした。
娘と言えば、シャール王女か。俺も、もう知り合っているのだ。攫われるような事があったら、無視してはおけん。
だが、今は大丈夫だろう。聖王様の話を聞こう。
「聖王様、俺達に話があるとか」
「うむ。頼みたい事があってな」
「頼みたい事ですか?」
「この密書を、国王と帝王に渡して欲しい。君達は既に知っているから話すが、これには戦争についての我が国の立場を確立するためのものだ」
「立場?何故そんな事を?」
「お主が言ったであろう。王国と帝国はこの国を恨む事になると。そうならないようにするためだ」
なるほど。確かに俺はそんな事を言ったな。
だが、こんなに早く対策を練るとは思ってもみなかった。
「これは私の独断である。一々話を通していたら、守れるものも守れん。私の責務は国民を守ることだからな」
「その志、感銘致します」
「そうかしこまらずとも良い」
「では、おっしゃる通りに」
「それで、どうだ?私の願いを聞いてくれるか?」
王国と帝国に密書を持っていく。それだけならばまだ良かった。だが、密書という事はそれぞれの王に会わなければならないという事。
俺にとってはそれが最も怖い。つい昨日、昏睡している皆を連れて行ったばかりで、無理を通したと言うのに、会うのは……という気持ちがある。
「無理か?娘から聞いた話では、各国の王女と関わりがあると聞いていたのだが」
「まぁ、確かにそうですけど……」
「今の私には頼める者がそなたしかおらぬ。私の我儘であることは百も承知なのだ。この国の民の為、どうかよろしく頼む」
この国の民を守ろうとする聖王様の気持ちと、今の俺の気持ちの重さは天秤にかけなくても分かる。
「ねぇ。私からもお願い。これはあなたしか出来ない事だから、どうかこの世界の人を守って欲しい」
珍しく、女神の本気の頼みを聞いた。
ここまでの事を頼まれているのなら、受けるしかないだろう。上手くできるか分からないが、やってみよう。
「聖王様、その役割、俺が務めさせてもらいます」
「そうか。ではよろしく頼む」
「はい」
「私はこれから戦争に向けてやるべき事がある。恐らくこの密書を届ければ、王国と帝国も共に急ピッチで準備を始めるだろう。それと、返事を貰うだろうから、いつでもいい、私に報告してくれ」
「かしこまりました。では、俺はこれで」
「うむ」
俺は聖王様の部屋を後にし、早速、移動を開始する事にした。
「ありがと」
俺の背後で、感謝の言葉を口にする女神。
「いや、当然の事だろ?俺の気持ちなんて些細な事だ。その世界を守れるなら何でもするさ」
昨日、女神にも話た事だ。なんの嘘偽りもない。
「そっか」
「それでなんだが、女神に頼みたい事がある」
「転移でしょ?分かってる」
「昨日に引き続きすまんな」
「大丈夫大丈夫!私に出来る事はこれくらいしかないし!」
はにかみながら女神はそう言った。
俺には無理をして言った言葉だと言うことが分かる。女神は自分が何も出来なかった事を嘆いていたから。
「じゃあ行くよ、まずは王国から」
女神が俺に触れる。
そうして俺は密書を届ける為に王国に飛んだ。
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