異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第155話 作戦会議をするようです

 教会を後にして、数時間後。夕食を済ませた俺達は、魔王様に送ってもらったときにいたあの建物の中で、テーブルを囲んで座っていた。

「皆、揃ったな。では、作戦会議を始める!」

 テーブルを囲んでいた理由は、今言ったように作戦会議をする為だ。この方が、皆の顔が見えて、いかにも作戦会議って感じがする。

「議題はこれ。教皇をどう追い詰めるかだ。その為にも、一度教会のマップを皆に共有して見てもらおう」

 俺は共有のスキルを発動させて、皆にも見えるようにした。

「地上三階から地下四階までの計七階層になっていることが確認出来るかと思う。地上一階は、中央に俺達が今日行った礼拝堂がある。その脇に小部屋が計六つあり、右と左で三つずつある事も確認出来るはずだ」

 教会は、神に祈りを捧げたり、自分の行いを懺悔する所である。地上一階はその目的を果たすための殆どの設備が整っている。では他の階は何なのか。それを見てみなければならない。

「地上二階と同じく三階は、一階が吹き抜けになっているから、小部屋が六つだけ。場所は一階の真上だな。階段を登れば行ける」

「一階の小部屋の機能は分かったのだけど、二階、三階が分からないわね……」

「いや、考えれば大体分かる。二階と三階の小部屋は一階から目につきやすい事から、使うとしても、物置、もしくは休憩所として使っているはず。ほら言ったろ?一般人が教皇にあって聖職者になるって。そのための場所だろうな」

「なるほど。そうなると教皇がいるのは地下って事になるわね」

「そういう事だ」

 何度も言うが、教会は表向き神聖な場所であり、毎日人々が訪れる所である。よって目に付くところには怪しいものはない。逆に、目につかない所なら何でも怪しいということだ。

「地上はほぼ表向きの活動をする為にある。教皇がやろうとしていることを考えると、教皇自身はほぼ地下にいると言ってもいい」

「その地下ですが、地下四階まであり、それぞれ形状が違いますね……」

「そうだな……。俺が一番気になっているのは広大すぎる広さを持った部屋が一つだけある地下四階。教会の敷地の五倍以上ある。ここは一体何をする所なのかさっぱりだ」

 もしかしてとも考えるが、あそこに人を収集する意図が分からない。

「それぞれの階の役割から考えて見る?」

「そうだな。それがいいだろう」

 四階は分からないから四階を抜いた形にはなるが仕方のないことだ。

「まずは地下一階から。恐らくここは教皇の居住区。なぜ分かるかと言うと、作りが平屋にそっくりだからだ」

「ひらやー?ひらやってなにー?」

「あー、その、なんだ。俺が転生する前の世界の家の作りとでも思ってくれれば結構だ」

「わかったー!」

「まぁ一階はそんなところだ。なにか質問は?」

「それが分かってるのなら暗殺とかどうですか?一番確実だと思うのですが……」

「そうなんだが、タクマ達の事もある。警戒していないわけがない。暗殺は難しいだろうな」

「確かに言われてみればそうですね……」

 俺も真っ先に暗殺すればいいんじゃね?と思った。しかし、俺が考えつくようなことを警戒していない教皇ではあるまい。ましてや、勇者を操れるほどの実力者に暗殺が効くのかすら分からん。

「じゃあ、二階。ここは恐らく……なんかをするところだ」

「なんかってなによ。具体的には何も無いの?」

「なんていうか、牢獄に近い形状なんだが、こんな中途半端な所に作るか?と思ってな」

「なら、聖王はここにいるのかしら?」

「恐らくはそうだと思う。だがなぜこんな所に……。いや、教皇に聞いてみるか。答えてくれればいいけど」

 地下二階はRPGのゲームによくある牢獄のマップと何ら代わりない。だから牢獄である事はほぼ間違いはないはず。ジュリの言ったように聖王もここだろう。

 しかし、疑問は残る。まず何故教会に牢獄があるのか。そしてなぜ地下二階なのか。そこが分からん。普通牢獄は奥深くに作るもんだ。脱走しにくいようにな。だと言うのになぜ、地上に近い二階にしたのか……。さっぱりだ。

「で、三階はなにか大きな物が真ん中においてあるわね。これは……?」

「なにかの装置としか思えん」

「そ、装置ですか……?」

「そこにあるのに無意味なものであるはずがない事は分かるんだが、それ以外は何とも……」

「つまり?」

「さっぱり分からん!」

 マジで、分からん。どうしたもんか。困難で教皇殺れるのかよ……。

「えーっと、ここまでで分かったことをまとめると、さっぱり分からないって事だな。辛うじて一階が居住区だと言うことは分かっているが、それが分かったところで、だから?みたいになってる」

「こんなので作戦会議と言えるのかしら……」

「充分、作戦会議といえるさ。分からないことが分かっただけでも上出来だしな。あとは教皇に直接聞いてみないと分からん。答えてくれるかは別だがな」

「ほんと行き当たりばったりね」

「まぁそれが俺達だしな。今回もどうにかなるだろ」

 その時の俺は軽い気持ちでいた。今日一日の異変に気付く事が出来ていればあるいは違っていたのかもしれない。だが、この軽い気持ちのせいで、仲間を危険に晒す事になる。

 いや、仲間だけではない。各国に住む住民、各地にいる魔物、そして世界までもを窮地に陥れる事になる。

 だが、今の俺にそんなこと知る由もない。

「じゃあ、明日に備えて寝るか」

 そうして、地獄のような日が始まる事になる。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品