異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第145話 転移トラップの秘密のようです

「あなたは一体?」

 俺のその一言で、祭壇の上にいた人は行動をやめ、少しの間固まった。それから、何かを思い出したかのようにまた動き始める。

『いやー、お恥ずかしい。名乗りもせずに話を始めてしまうところだった。僕はこの転移トラップのマスターで、名はサトシ・ナカノヤマって言う』

 どうやら祭壇の上にいたのは転移トラップのマスターだったようだ。見たん感じ好きが多くて全くそんな気配しないんだが、本人が言っているなら本当なのだろう。

 で、一番気になるのが本名が日本人なところだろうな。サトシ・ナカノヤマとかまんま日本人の名前だしな。まぁ大方転移者なんだろうな。

『君達はあまり驚かないんだね』

「名前の事ですか?」

『まぁね。僕がトラップマスターを務める前は結構驚かれたんだけど、今はそうでもないのかな?』

「今でも驚かれるんじゃないですか?」

『君達は対して驚きはしてない様子だけど?』

「あー、それは俺が転生者だからですかね。サトシさんも日本人でしょ?多分昭和くらいの」

『おぉ!確かにそうだ!なんだ、君も日本を知っているのか……。同郷の友に会えて嬉しいよ』

「ちなみに私も日本からの転生者よ。でも今はその事は置いておきましょうか」

 サトシさんは今日本にいた時の事を思い返しているのだろう。懐かしいなとかあの頃は若かったなとか色々言っている。

 でも、サトシさんは昭和生まれだからあんまり俺達と話が合いそうにない。これがジェネレーションギャップってやつか。

「サトシさんって元々はここのトラップマスターじゃなかったんですよね?」

『あの頃はなぁ……ん?あぁそうだよ?そこにいるイフリートが僕の最初の仲間だったんだ。あの頃は僕もイフリートも弱くて大変だったね』

『そんな古い話はしなくてもいいだろう?今では精霊の中でも上位に入るくらいの力があるのだ』

『それはよく分かってるよ。君がすごく負けず嫌いだってこともね』

『ぬぅ……』

 なんか楽しそうな雰囲気だなぁ。俺達も似たような雰囲気を出してるのだろうか?

 それにしてもイフリートって負けず嫌いだったのか。もしかして俺の使い魔になったのっていつでも再戦できるようにだったりして。……ないか。ないな。うん。

『大方、その子についたのは仕返しする機会を待つためでしょ?』

『そ、それは違うぞっ!こやつには少し常人とは違うものを感じてついたのだ!間違うでないぞ!』

 俺って常人とは違うの?結構まともだと思うんだが。

 戦ったり、料理したり、大会に出場したり。普通だと思うけどなぁ。まぁ戦うのがドラゴンだったり、料理の腕がシェフ並だったり、大会で優勝したりしてるけど。

『精霊の君がそう言うのならそうなんだろうね。それでそんな事を言われ君は何か聞きたかったんじゃないのかい?』

「えぇ、俺が推測するに、トラップマスターになるとダンジョンから一歩も出れなくなると思うんです。だから、何故外の世界を捨ててまでトラップマスターになったのかと……」

『そんなの簡単な話さ。仲間の為だよ』

「仲間の?上手く話が分からないのですが……」

『君達は、この一つ前で悪魔二体と戦ったでしょ?あの二体、本当は僕の仲間でカストルとポルクスって言っていうんだ。双子で旅をしていた子達だよ』

 カストルとポルクスと言えば双子座の有名なやつだ。ここでも前の地球の話が出てくるのか。もう何でもありだな。

『でも、この二人は僕がヘマしたせいで悪魔に取り憑かれてしまったんだ。どうにかして救いたくて見つけたのが、転移トラップの性質を利用することだった』

「転移トラップの性質……?」

『君達は一度使われた罠はどうなっていると思う?』

 そりゃあ、使われっぱなしじゃないのか?……いや、俺達が転移する直前は魔物の死体とかが無くなっていたな。という事は……?

「もしかしてなにかの力によって再生している?だとしたらイフリート達と戦った時、それが罠だと見たら、イフリートを殺してしまってもまた復活するのか?」

『うん。君が言っていることは全て当たっているよ。その性質を使ったとして、カストルとポルクスだけは罠の一部として扱って悪魔を罠ではないとしたら、後は倒すだけカストルとポルクスが復活し、悪魔だけが消滅するってわけさ』

 なるほど、よく考えてある。

『でも、一つだけ問題があってね。罠を壊すもしくは解除する事が出来るのは、ダンジョンに入った冒険者だけなんだ。ただでさえ強い悪魔を倒す事が出来る冒険者は少ないのに、これじゃあすごく時間がかかってしまってね。耐え続けるのに苦労したよ』

「ってことは、カストルとポルクスはもう元に?」

『おかげ様で元に戻ったよ。本当にありがとう。強き冒険者達』

 だから、サトシさんの開口一番が"冒険者に会えてよかった!"だったのか。納得がいったわ。

「じゃあサトシさんはもうトラップマスターである意味が無いのでは?」

『まぁそうなんだけどね。ここでの暮らしに慣れるとトラップマスターを続けててもいいかなって思ってるよ。住めば都とはよく言ったものだね』

 サトシさんはここで暮らすのか。まぁ人それぞれだし俺がとやかく言うことじゃないか。

『『サトシー!』』

『おぉ!ようやくお目覚めか!』

『『うん!約束守ってくれたんだね!』』

『それはそうさ。お前達も俺の大切な仲間なのだから』

 サトシさんの周りを妖精のように舞う双子の男の子がどこからともなく現れた。恐らくこの子達がカストルとポルクスだろう。

『すまなかった。僕のヘマで君達に辛い思いをさせたね』

『ううん。大丈夫』『だってサトシが助けてくれるって信じてたから』

『そうか……。でも君達を助けたのは何も僕だけじゃないんだ。あそこにいる人達にもお礼言わないとね』

『うん!』『分かった!』

 そう言って双子の男の子は俺達の目の前まで来て、お辞儀をした。

『僕はカストル!』『僕はポルクス!』『『助けてくれてありがとう!』』

「どういたしまして」

 俺がそういうと、カストルとポルクスは満面の笑みで手を叩きながら喜びはじめた。

「なぜなのかしら。すごく母性本能をくすぐられるわ」

「これが純粋な子供の力なんですね……」

「何を二人とも悟ったような事を言ってるの?ほら見てよ。そんなに年齢が違わないミルとゼロを」

 ジュリとレンが親目線で話をしているとフェイが会話に入ってそんな事を言った。

 ちなみにミルとゼロはカストルとポルクスと一緒に手を叩きながら喜んでる。何故そんな事をしているのかと聞かれてもよく分からんとしか言いようがないな。

 一人残されたリンとかあわあわして最終的に俺の隣に来て俺の裾をキュって掴んだんだぞ。リンも仲間に入れてさしあげろって。

『お主の仲間も中々にクセが強いのぉ。幼子ばかりじゃし、これはお主の趣味なのかの?』

『女神をパーティに入れてる人もサトシ以外に初めて見ましたし』

『私はあのゼロって子に底知れぬ恐怖をかんじてるんだけど』

『まぁこやつ自体おかしなやつだからな。変なもが集まるのだろう』

「こらこら!お前達は何を言っているんだ!俺達のパーティはちょっとおかしな点があるが、そこら辺にいるパーティと対して差はないぞ!」

『僕も君と同じような事を思ってる時期があったよ……』

「俺をサトシさんと一緒にしないでくれませんかっ!まだ希望は残ってるんですよ!」

『あれを見ても?』

 サトシさんが指を指した先では、何故かミルとゼロ対カストルとポルクスの戦いが始まっていた。

 さっきまで一緒に喜んでたじゃん……。なんで戦ってるの……?

『まぁそう気を落とすことはないよ。僕みたいに気にしなかったら楽しく生きれるからね』

「はぁ……。そうしますよ」

『うんうん。それがいい』

 先人の言うことは心に留めておいて損はないだろう。

『カストルー、ポルクスー。戻っておいでー』

『『はーい!』』

 サトシさんはミルとゼロと戦っていた二人を呼び戻し、再度俺達に向く。

『君達には感謝しているよ。君達でなければ二人を救う事はできなかっただろう。元々あげるつもりだったけど、君達が通ってきたステージをあげる。ステージ移動のスキルをあげるからそれでいつでも来ていいからね』

「ありがとうございます」

『じゃあ君達を元の場所に戻すよ。また会おう!』

 俺達はこの転移トラップに入った時と同じような光に包まれ、そして、元の世界へと戻った。

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