異世界に転生したので楽しく過ごすようです
第142話 厄災と超越のようです
ーside:主人公ー
『ここで待て。さすれば満たされよう』
今回の看板はこの一文しか載ってなかった。段々と攻略が難しくなっていくステージで何も情報がないのはいささか不安がある。
しかし、このような状況でもやらなければいけないのだ。今は万全な体制を取っておかねばならない。
「さて、今回は何が起こるんだ?謎解きか?戦いか?それともその他の何かか?どれにせよ先に進むだけなんだが……」
「マスターが入れば大丈夫なのー!」
「そ、そうですっ!あるじさまは今までも何とかしてきたんですからっ」
「そう言ってくれるのは嬉しいんだが、今回ばかりは嫌な予感がする。この予感が外れてくれればいいんだが」
「あなたがそんなこと言うなんて珍しいね」
女神の言うとおり、こんなに嫌な予感がするのは初めてかもしれん。今まで小さなもやっとした感じのは感じた事あったんだけどな。
まあここまで嫌な予感がするという事は十中八九戦闘になるだろう。もしもの時は女神の力を借りるしかなくなるかもしれん。
「なぁ女神お前に話が……っ!」
今一瞬だけ背中にゾワっとしたものが走った。これは敵の威圧などてはない。本能的に近づいてはならない悍ましいなにかの存在を感じたからだろう。ゼロやリンはそれで完璧に委縮してしまった。
「この感じ……もしかして悪魔……?」
女神はこの正体が何かを知っているみたいだった。俺は女神にその正体を問う。
「女神っ!この身の毛もよだつ感覚の正体を知っているのかっ!?」
「この感じは多分……」
その時、耳に不快な笑い声が聞こえ、上から黒くて強い威圧感を放つ何かが降りてきた。
『グゲゲゲッ!腐ッテモ神ダナ。オマエノヨウナ未熟モノデモ俺ヲ感知デキルトハ』
「自我が有るっ!?なんで……なんでこんなところに上位悪魔がいるのよっ!」
珍しく女神が焦っている。余程上位悪魔とやらがやばいやつらしい。
「お、おい女神っ!あいつはなんなんだ!上位悪魔ってなんだよ!」
俺が女神にそう聞いた時、悪魔の矛先が俺に向いた。
『愚カナ下等生物ノ人間ゴトキガ俺達、崇高ナ悪魔ヲ前ニ一歩モ引カヌカ。ソコデ跪イテイル魔物ノヨウニシトケバイイモノヲ』
「それはお前が決めることじゃない!確かにゼロとリンは元は魔物かもしれない。だが、今は人間として生きている!そんな二人を俺は信じている!」
「マ、マスター……」
「あるじさま……」
『愚カナリ人間ヨ。オマエハ悪魔ト神ノ戦イモ知ラヌカラソノヨウナコトガ言エルノダ。見セテヤロウ。我ガ同胞達ノ戦イヲ』
悪魔がそう言うと俺の頭の中に何かの映像が流れ始めた。
宙に浮かび向かい合う二つの影。その二つの影の背後にはそれぞれ大軍と呼べるほどの数が並んでいる。
その二つの大軍は言わば光と闇。一生相容れぬものだと勅勘で分かった。恐らくこれは悪魔が言っていた神と悪魔の戦いだろう。
そして、両者が動きを見せた時、その世界は混沌に包まれた。世界各地で天を裂き地を割る程の戦闘が行われた。戦争というレベルを遥かに超えていた。
『コレハマダ規模ガ小サイ聖戦ダ。ダガソレダケデモ、コノ世界ヲ滅ボスノニハ事足リタ。ソノ意味ガ人間ニ解ルカ』
「くっ……!こんなのを見せて何が目的なのっ!人間達は関係ないっ!」
『オマエモ神ノ端クレナラ分ルダロウ。我ラ悪魔ハ、アラユル生物ノ負ノ感情ヲ糧トスル。今モソコノ魔物ハ、我々ノ聖戦ヲ見テ負ノ感情ガ渦巻イテイル。実ニ脆弱ナ生物ダ』
映像の外で、悪魔と女神の会話が聞こえる。本当に悪魔が負の感情を糧とするのなら、その逆を与えてやればいいのではないか、そう思った。
「………………した」
『……我ラ悪魔ノ力ヲ知リ命乞イヲスルカ』
「違うっ!それがどうしたと言ったんだ!」
『ナニ?』
「悪魔がどうとか聖戦がどうとか御託は聞き飽きた!ここで一番重要なのは悪魔に打ち勝つ心の強さだ!俺達人間はそれを持っている!お前達みたいな卑劣な悪魔なんかに人間は負けないんだよっ!」
「マス……ターっ!」
「あ、あるじさまっ!」
ゼロやリンは今必死で悪魔に打ち勝とうとしている。この二人なら絶対に打ち勝てると信じている。
『愚カナ。自ラ死ヲ選ブカ』
「俺は死なない!まだやるべき事が残っている!だから俺はお前を消して先に進む!無論、ゼロとリンとシロ、それに女神も一緒にだ!」
『オマエ一人デソレガデキルト思ッテイルノカ?』
「お前は分かっていない。俺は一人じゃないぞ」
「マスター!」
「あるじさまっ!」
やはり二人は打ち勝つことが出来た。もう悪魔なんかに屈することは無いだろう。
『……ヨカロウ。オマエ達人間ガ、ドレダケ矮小ナノカ分カラセテヤル。マズハオマエ達ノ支柱ニナッテイルオマエカラダ』
悪魔は俺を標的として狙ってくるようで、手を俺に向けて黒い何かを集め始めた。
「っ!」
「マスター逃げてっ!」
「あるじさま、早くっ!」
「分かっているんだが、足が動かない!何かで抑えられている感覚がある!」
『ソレガ分カルトハ、大シタ人間ダ。ダガ分ッタトコロデ無意味ダ』
確かにそうだ。抜け出すために転移を使ってみたが効果がなかった。
「マスターはやらせないのっ!」
「あるじさまだけはっ!」
二人は俺の所に走って来ようとした。しかし、二人も俺と同じように抑えられているようで、動くことが出来ていなかった。
女神はどうかと思ったが女神も俺達と同じようで動くことができないようだった。
対処しようと思ってもあの力が何なのかを知らないから対処のしようがない。もう万策尽きた。ただやれるだけのことはしようと思う。万に一つの可能性にかけて。
『マズ一人ダ』
悪魔がその黒い何かを放ってきた。俺は出来うる限りの防御手段を使って迎えようとした。
しかし、その瞬間に何かが起こった。それが一体なんなのか分からない。だが、一つ分かったことは悪魔の攻撃が俺に届かなかったという事だった。
◇◆◇◆◇
ーside:ゼロー
このままじゃマスターが殺されてしまうっ!
初めて会った時からずっと優しくしてくれたあのマスターが!
わたしの我儘を聞いてくれるあのマスターが!
まだマスターに恩返し出来てないのに!マスターに好きって言ってないのに……!
こんな時じゃないとマスターの役に立てないのに、こんなところでマスターが殺されるところをただ見てるだけしかできない。
そんなのは嫌だっ!!
わたしは誓った!強くなるって!それはマスターが居なくなったら無意味になってしまうっ!
今この瞬間以外に誓いを護る時はないっ!絶対に……絶対にマスターを殺らせたりしない!わたしは強くなるんだ!
マスターの隣に居続ける為にっ!!
その時、わたしは自分の中で壁を越えて一つ先の境地に達した。そして、同時にその力をどう使うのかも理解した。
そして、わたしはそれを使ってマスターに向けられた攻撃を阻止することに成功した。
◇◆◇◆◇
ーside:リンー
う、動けないっ!これじゃあるじさまを助けに行けないっ!
あるじさまはあんなにわたし達を励ましてくれたのに、また何も出来ずに終わってしまう……。
やっぱりわたしは非力で、無能で、無力だった。
でも今回だけはなんとしても助けたい人がいるっ!わたしにも出来る事があるはずっ!
前はレンちゃんを逃がす事も出来ず、大会では勝てなかったけど、今この時だけは、絶対に諦めないっ!
あるじさまを助ける為にも……。そしてっ!
わたしでも出来ることがあるって証明する為にもっ!!
その時、わたしは自分の力が一つ先に進んだ事が分かった。その力の全てを引き出してあるじさまに向かう悪魔に攻撃を仕掛けた。
◇◆◇◆◇
ーside:主人公ー
「い、一体何が起きたんだ?」
俺に向けられたはずの攻撃は途中で爆散し、俺には届かなかった。そして、俺の拘束も同時に解けた。なぜこんなことになったのか未だに状況が理解出来ていない。
「マスターはやらせないの!」
「もう絶対に諦めないっ!」
二人は俺の前に陣取り、悪魔を見据える。
俺はその二人を見て今までのゼロとリンではないことを瞬時に理解した。
ゼロは体の一部をスライム化させて永続的に切り離していっている。そして、切り離されたスライムは超再生とも呼ぶべきスピードで細胞を増やし、新たなゼロとして誕生する。
一方リンの方は目立った変化はないものの、今の俺に匹敵するほどの力を秘めていることが分かる。
『オノレッ!魔物ゴトキガ超越シタカ……!』
爆散した後ろから悪魔が見えた時には既に体の四分の一が無くなっていた。
「もうわたしはやられるだけじゃないの!この力でマスターの助けになるの!」
「わたしもこの力で出来るだけのことを全力で成し遂げますっ!」
「お前達……」
「いくよっ、ゼロちゃん!」
「うん!」
ゼロは能力値が上がっているのだろう。分体が攻撃を仕掛ける時も、今までとはまるで違った速度と力を持っている。
『小癪ナァァァッ!!!』
悪魔が分体に向かって攻撃をするが、分体は攻撃を食らうたびにそこのスライム化した自分の一部を切り離し、また新たな分体が誕生する。
「リンっ!後は任せたの!」
「ゼロちゃん足止めありがとうっ!これなら次は外さない!」
リンが手の先に出しているのは、武道会の時に見たあのカオスホールなるものだった。あの時は時間をかけて出していたのだが、今は難なく出してしまっている。
「いけぇ!!カオスホールッッ!!!!」
『グオオォォォォッッ!!!!!』
リンの放ったカオスホールは直撃し、悪魔を消滅させた。
「ふう。ゼロちゃん、終わったね」
「ちょっただけ疲れたのー……」
二人がそう言った瞬間、さっきまでの気迫が無くなってまたいつもの二人に戻った。
「…………私が出る幕はなかったね。よかった……」
「ん?女神、今なんか言ったか?」
「二人強くなったなあって」
「そうだな。もしかするとあれが魔王様の言っていた力なのかもしれない。ともあれ今回は二人に救われたよ」
今回俺がやった事と言えば悪魔への反抗くらいだ。それ以外の全ては二人が成し遂げた事だ。
俺はその二人のところへ向かう。
「二人共、俺を助けてくれてありがとうな」
助けてくれ他二人に感謝の気持ちを述べる。
するとゼロが俺に抱きついてきた。
「ねぇねぇマスター!」
「ん?なんだ?」
「わたしマスターのこと好きっ!!」
「ちょ、ゼロちゃん!」
「おぅ、俺も好きだぞ」
「えぇー!!」
「何も驚くことは無いだろう?リンも好きだし、ここにいない仲間だって好きだからな」
「な、なんだぁ良かったぁ」
リンは驚いたり安心したり忙しないな。まあまあいっか。これでこの戦いは終わったんだ。好きにさせておこう。ゼロとリンが一番頑張ったんだからな。
「ねね、私は?私はどうだった?」
「女神はいつも通り何もしてないだろ。お前にかける言葉はないっ!」
「えぇー!褒めてくれてもいいのにぃ!」
「ふん。褒めて欲しかったら褒められるくらいのことをするんだな」
この戦いは俺達のいつも通りの雰囲気で幕を閉じた。
『ここで待て。さすれば満たされよう』
今回の看板はこの一文しか載ってなかった。段々と攻略が難しくなっていくステージで何も情報がないのはいささか不安がある。
しかし、このような状況でもやらなければいけないのだ。今は万全な体制を取っておかねばならない。
「さて、今回は何が起こるんだ?謎解きか?戦いか?それともその他の何かか?どれにせよ先に進むだけなんだが……」
「マスターが入れば大丈夫なのー!」
「そ、そうですっ!あるじさまは今までも何とかしてきたんですからっ」
「そう言ってくれるのは嬉しいんだが、今回ばかりは嫌な予感がする。この予感が外れてくれればいいんだが」
「あなたがそんなこと言うなんて珍しいね」
女神の言うとおり、こんなに嫌な予感がするのは初めてかもしれん。今まで小さなもやっとした感じのは感じた事あったんだけどな。
まあここまで嫌な予感がするという事は十中八九戦闘になるだろう。もしもの時は女神の力を借りるしかなくなるかもしれん。
「なぁ女神お前に話が……っ!」
今一瞬だけ背中にゾワっとしたものが走った。これは敵の威圧などてはない。本能的に近づいてはならない悍ましいなにかの存在を感じたからだろう。ゼロやリンはそれで完璧に委縮してしまった。
「この感じ……もしかして悪魔……?」
女神はこの正体が何かを知っているみたいだった。俺は女神にその正体を問う。
「女神っ!この身の毛もよだつ感覚の正体を知っているのかっ!?」
「この感じは多分……」
その時、耳に不快な笑い声が聞こえ、上から黒くて強い威圧感を放つ何かが降りてきた。
『グゲゲゲッ!腐ッテモ神ダナ。オマエノヨウナ未熟モノデモ俺ヲ感知デキルトハ』
「自我が有るっ!?なんで……なんでこんなところに上位悪魔がいるのよっ!」
珍しく女神が焦っている。余程上位悪魔とやらがやばいやつらしい。
「お、おい女神っ!あいつはなんなんだ!上位悪魔ってなんだよ!」
俺が女神にそう聞いた時、悪魔の矛先が俺に向いた。
『愚カナ下等生物ノ人間ゴトキガ俺達、崇高ナ悪魔ヲ前ニ一歩モ引カヌカ。ソコデ跪イテイル魔物ノヨウニシトケバイイモノヲ』
「それはお前が決めることじゃない!確かにゼロとリンは元は魔物かもしれない。だが、今は人間として生きている!そんな二人を俺は信じている!」
「マ、マスター……」
「あるじさま……」
『愚カナリ人間ヨ。オマエハ悪魔ト神ノ戦イモ知ラヌカラソノヨウナコトガ言エルノダ。見セテヤロウ。我ガ同胞達ノ戦イヲ』
悪魔がそう言うと俺の頭の中に何かの映像が流れ始めた。
宙に浮かび向かい合う二つの影。その二つの影の背後にはそれぞれ大軍と呼べるほどの数が並んでいる。
その二つの大軍は言わば光と闇。一生相容れぬものだと勅勘で分かった。恐らくこれは悪魔が言っていた神と悪魔の戦いだろう。
そして、両者が動きを見せた時、その世界は混沌に包まれた。世界各地で天を裂き地を割る程の戦闘が行われた。戦争というレベルを遥かに超えていた。
『コレハマダ規模ガ小サイ聖戦ダ。ダガソレダケデモ、コノ世界ヲ滅ボスノニハ事足リタ。ソノ意味ガ人間ニ解ルカ』
「くっ……!こんなのを見せて何が目的なのっ!人間達は関係ないっ!」
『オマエモ神ノ端クレナラ分ルダロウ。我ラ悪魔ハ、アラユル生物ノ負ノ感情ヲ糧トスル。今モソコノ魔物ハ、我々ノ聖戦ヲ見テ負ノ感情ガ渦巻イテイル。実ニ脆弱ナ生物ダ』
映像の外で、悪魔と女神の会話が聞こえる。本当に悪魔が負の感情を糧とするのなら、その逆を与えてやればいいのではないか、そう思った。
「………………した」
『……我ラ悪魔ノ力ヲ知リ命乞イヲスルカ』
「違うっ!それがどうしたと言ったんだ!」
『ナニ?』
「悪魔がどうとか聖戦がどうとか御託は聞き飽きた!ここで一番重要なのは悪魔に打ち勝つ心の強さだ!俺達人間はそれを持っている!お前達みたいな卑劣な悪魔なんかに人間は負けないんだよっ!」
「マス……ターっ!」
「あ、あるじさまっ!」
ゼロやリンは今必死で悪魔に打ち勝とうとしている。この二人なら絶対に打ち勝てると信じている。
『愚カナ。自ラ死ヲ選ブカ』
「俺は死なない!まだやるべき事が残っている!だから俺はお前を消して先に進む!無論、ゼロとリンとシロ、それに女神も一緒にだ!」
『オマエ一人デソレガデキルト思ッテイルノカ?』
「お前は分かっていない。俺は一人じゃないぞ」
「マスター!」
「あるじさまっ!」
やはり二人は打ち勝つことが出来た。もう悪魔なんかに屈することは無いだろう。
『……ヨカロウ。オマエ達人間ガ、ドレダケ矮小ナノカ分カラセテヤル。マズハオマエ達ノ支柱ニナッテイルオマエカラダ』
悪魔は俺を標的として狙ってくるようで、手を俺に向けて黒い何かを集め始めた。
「っ!」
「マスター逃げてっ!」
「あるじさま、早くっ!」
「分かっているんだが、足が動かない!何かで抑えられている感覚がある!」
『ソレガ分カルトハ、大シタ人間ダ。ダガ分ッタトコロデ無意味ダ』
確かにそうだ。抜け出すために転移を使ってみたが効果がなかった。
「マスターはやらせないのっ!」
「あるじさまだけはっ!」
二人は俺の所に走って来ようとした。しかし、二人も俺と同じように抑えられているようで、動くことが出来ていなかった。
女神はどうかと思ったが女神も俺達と同じようで動くことができないようだった。
対処しようと思ってもあの力が何なのかを知らないから対処のしようがない。もう万策尽きた。ただやれるだけのことはしようと思う。万に一つの可能性にかけて。
『マズ一人ダ』
悪魔がその黒い何かを放ってきた。俺は出来うる限りの防御手段を使って迎えようとした。
しかし、その瞬間に何かが起こった。それが一体なんなのか分からない。だが、一つ分かったことは悪魔の攻撃が俺に届かなかったという事だった。
◇◆◇◆◇
ーside:ゼロー
このままじゃマスターが殺されてしまうっ!
初めて会った時からずっと優しくしてくれたあのマスターが!
わたしの我儘を聞いてくれるあのマスターが!
まだマスターに恩返し出来てないのに!マスターに好きって言ってないのに……!
こんな時じゃないとマスターの役に立てないのに、こんなところでマスターが殺されるところをただ見てるだけしかできない。
そんなのは嫌だっ!!
わたしは誓った!強くなるって!それはマスターが居なくなったら無意味になってしまうっ!
今この瞬間以外に誓いを護る時はないっ!絶対に……絶対にマスターを殺らせたりしない!わたしは強くなるんだ!
マスターの隣に居続ける為にっ!!
その時、わたしは自分の中で壁を越えて一つ先の境地に達した。そして、同時にその力をどう使うのかも理解した。
そして、わたしはそれを使ってマスターに向けられた攻撃を阻止することに成功した。
◇◆◇◆◇
ーside:リンー
う、動けないっ!これじゃあるじさまを助けに行けないっ!
あるじさまはあんなにわたし達を励ましてくれたのに、また何も出来ずに終わってしまう……。
やっぱりわたしは非力で、無能で、無力だった。
でも今回だけはなんとしても助けたい人がいるっ!わたしにも出来る事があるはずっ!
前はレンちゃんを逃がす事も出来ず、大会では勝てなかったけど、今この時だけは、絶対に諦めないっ!
あるじさまを助ける為にも……。そしてっ!
わたしでも出来ることがあるって証明する為にもっ!!
その時、わたしは自分の力が一つ先に進んだ事が分かった。その力の全てを引き出してあるじさまに向かう悪魔に攻撃を仕掛けた。
◇◆◇◆◇
ーside:主人公ー
「い、一体何が起きたんだ?」
俺に向けられたはずの攻撃は途中で爆散し、俺には届かなかった。そして、俺の拘束も同時に解けた。なぜこんなことになったのか未だに状況が理解出来ていない。
「マスターはやらせないの!」
「もう絶対に諦めないっ!」
二人は俺の前に陣取り、悪魔を見据える。
俺はその二人を見て今までのゼロとリンではないことを瞬時に理解した。
ゼロは体の一部をスライム化させて永続的に切り離していっている。そして、切り離されたスライムは超再生とも呼ぶべきスピードで細胞を増やし、新たなゼロとして誕生する。
一方リンの方は目立った変化はないものの、今の俺に匹敵するほどの力を秘めていることが分かる。
『オノレッ!魔物ゴトキガ超越シタカ……!』
爆散した後ろから悪魔が見えた時には既に体の四分の一が無くなっていた。
「もうわたしはやられるだけじゃないの!この力でマスターの助けになるの!」
「わたしもこの力で出来るだけのことを全力で成し遂げますっ!」
「お前達……」
「いくよっ、ゼロちゃん!」
「うん!」
ゼロは能力値が上がっているのだろう。分体が攻撃を仕掛ける時も、今までとはまるで違った速度と力を持っている。
『小癪ナァァァッ!!!』
悪魔が分体に向かって攻撃をするが、分体は攻撃を食らうたびにそこのスライム化した自分の一部を切り離し、また新たな分体が誕生する。
「リンっ!後は任せたの!」
「ゼロちゃん足止めありがとうっ!これなら次は外さない!」
リンが手の先に出しているのは、武道会の時に見たあのカオスホールなるものだった。あの時は時間をかけて出していたのだが、今は難なく出してしまっている。
「いけぇ!!カオスホールッッ!!!!」
『グオオォォォォッッ!!!!!』
リンの放ったカオスホールは直撃し、悪魔を消滅させた。
「ふう。ゼロちゃん、終わったね」
「ちょっただけ疲れたのー……」
二人がそう言った瞬間、さっきまでの気迫が無くなってまたいつもの二人に戻った。
「…………私が出る幕はなかったね。よかった……」
「ん?女神、今なんか言ったか?」
「二人強くなったなあって」
「そうだな。もしかするとあれが魔王様の言っていた力なのかもしれない。ともあれ今回は二人に救われたよ」
今回俺がやった事と言えば悪魔への反抗くらいだ。それ以外の全ては二人が成し遂げた事だ。
俺はその二人のところへ向かう。
「二人共、俺を助けてくれてありがとうな」
助けてくれ他二人に感謝の気持ちを述べる。
するとゼロが俺に抱きついてきた。
「ねぇねぇマスター!」
「ん?なんだ?」
「わたしマスターのこと好きっ!!」
「ちょ、ゼロちゃん!」
「おぅ、俺も好きだぞ」
「えぇー!!」
「何も驚くことは無いだろう?リンも好きだし、ここにいない仲間だって好きだからな」
「な、なんだぁ良かったぁ」
リンは驚いたり安心したり忙しないな。まあまあいっか。これでこの戦いは終わったんだ。好きにさせておこう。ゼロとリンが一番頑張ったんだからな。
「ねね、私は?私はどうだった?」
「女神はいつも通り何もしてないだろ。お前にかける言葉はないっ!」
「えぇー!褒めてくれてもいいのにぃ!」
「ふん。褒めて欲しかったら褒められるくらいのことをするんだな」
この戦いは俺達のいつも通りの雰囲気で幕を閉じた。
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