異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第110話 結婚式の内容のようです

 朝食だが、ミルとゼロは毎度の事ながら凄い食欲を発揮していた。

 まあ美味しいからいっぱい食べたくなるのは分かるんだが、少し自重してくれない?帝王様とか顔が引きつってたぞ。

 そんな感じの朝食を取り終わった俺達は、その後にある本題の結婚式について説明を受けることになっている。

 その結婚式の内容次第で作戦も少し変わってくるから大事な事だ。しっかり聞いておかなければな。

 そして朝食の皿が全て下げられた時に、帝王様が話し始める。

「さて、朝食も取ったとこで結婚について話をしよう」

「お父さん。それについて私が何も聞かされていなかった事はどう説明してくれるの?」

 フェイは怒っているようで、帝王様にそう言った。

「それについては昨晩話すつもりだったが、フェイが自室にいなかった為に伝えれなかったんだ」

 しかし帝王様は悪びれる様子もなく、淡々と話す。

「しかしフェイもこの男が嫌というわけではあるまい。ましてや権力にしか目がないやつが言い寄ってくるよりはこの男のようなやつの方が、まだ信用出来ると言うものだ」

「た、確かにそうだけど……」

「それとも何か?フェイは権力溺れる愚かな者の方がいいのか?……まあそんな奴に私の娘はやるつもりはないがな」

 帝王様の言い方だと、俺にならフェイはやっても良いって事なんだか?

「その点、この男は向う見ずなところがあり王族には向かないが、信用に値する心は持っているからな。まぁ妥協というものだ」

 俺の評価は高い……のか?貶されてるのか褒められてるのかよく分からん。

 しかし、それに対しての皆の反応は納得している感じだ。俺の評価とは一体……。

「だけどお父さん達は自分達の都合でこの人と結婚させようとした……!」

「しかし、この男はそれを承知の上で結婚を受けたのだ。何も言われる筋合いはないと思うが」

「うっ……」

 はっはっはっ!……すいません。ほんとすいません。

「もう言いたい事は言ったな?では話を進めるぞ」

 この人、本当は親バカでフェイにも優しいはずなんだかなぁ。こんな状況じゃそれも無理な話ではあるが、もうちょっと優しくしてやってもいいと思う。

「まず結婚式の日程だが、一週間後となった。その間に帝都住民に結婚式を開催する事を報告し、式場の準備から招待状を送ることまでを行う」

「それだと、俺がすることはほとんどないのでは?」

「その通りだ。その間お前には結婚式まではこの帝都ないで過ごして貰うことになる」

 作戦準備には願ったり叶ったりではあるが、勇者の件が先延ばしになるのは痛いところ。

 それに関しては俺が悪いのだからなにも言えないのだがな。

「結婚式当日には、まず帝都を凱旋し住民に結婚する姿を見せる予定だ」

「がいせんってなにー?」

 ゼロは凱旋という言葉を聞くのが初めてらしいな。

「簡単に言えば、声援を貰いながら街を回ることだな。こういう大きい式典の時は結構する事が多いから覚えておくといいぞ」

「わかったー!」

 自分で言ってて気付いたんだが、回る時ってやっぱり馬車になるのだろうか?

「凱旋の時は馬車で回るという事になるのですか?」

「そうだ。屋形部分はお前達の顔が見えるように天井がないようになっている」

 なるほど。という事は俺は笑顔で手を振るというあれをすれば言い訳だ。

「凱旋後の結婚式場だが、予定では教会という事になっている」

 その点に関してはジュリの時と同じということか。しかし、予定という所が気になる。

「予定という事は場所が変わるという可能性もあるのですか?」

「現在の式場の候補として教会、城の前の二つが有力なのだ。その二つでもやはり教会という声が多く上がっているのだが、決定権はフェアリアになるのでな。まだ完全に決まった訳では無いのだ」

 俺的にはこのまま教会であってほしいな。その方が作戦を変更することもないからな。

「後はお前達が、本番で上手くやってくれればそれで結婚式は終了となる」

 この結婚式は帝都をあげての一大イベントとなる訳で、尚且つ俺達の復讐イベントとなる訳だ。上手くやるに決まっている。

「了解です」

「では、当日よろしく頼む。それと言い忘れていたが、すまないと思っている」

「その言葉は俺にではなくフェイにやってください。俺は全て知った上で了承しているので」

「確かにそうかもしれん。フェイよ、お前の気持ちも考慮せずにこんな事になって悪かった」

「うん。次はないからね」

「ありがとう。……では私は仕事があるのでな。失礼する」

 帝王様はそのまま立ち去っていった。

 割といい人なのだろうな。良心が痛む的なそんな感じだったのだろう。フェアリア様の方は知らんが。

「さてと、これからどうするか……」

「結婚式の日程も分かった事ですし、早速準備に取り掛かってみては如何ですか?どうせこの帝都からは出られないのですし」

「それもそうだな。そうするか。じゃあ材料を買いに……って金がねぇ!」

「「「はぁ!?」」」

 マジかよ……。あんなにあった金が今ではすっからかんだ……。

 原因はよく分かっている。まずは食費。これに尽きる。大体八割方食費だ。

 その他で言ったら宿代やら、生活必需品やらだろうなぁ。

「金、どうするかなぁ……」

「お金なら私達がクエストをして稼げばどうにかなるんじゃないかしら?」

「もし良かったら、ついでに食材になりそうなものも取ってきてくれ。じゃないと食材もないからひもじい思いを……」

「やる。全力でやる」

 ミルよ、そんなに食い気味こなくてもいいと思わないか?

「当分の予定がこれで決まったわね」

「俺とフェイはこの帝都内で準備をする。残りの皆がクエストで金を稼ぎつつ、食材集めという事で」

「でも私とエルシャはパーティメンバーじゃないからお金の問題は……」

 女神がなんか言ってるな。

「エルシャさんはともかく、女神はもう俺達のパーティメンバーとして扱ってもいいレベルだぞ」

「嫌だ!私は働きたくない!せっかく女神の業務から逃れられてるのに!」

「なるほど、それが本音と言うわけか」

「はっ!ちょ、ちょっと待って!今のなし!」

「そんなの知らんな。お前にも金を稼いでもらおうか。少なくとも自分の食費程度はな!」

「嫌だぁぁ!!働きたくない!働きたくないよぉぉぉ!!」

 こいつは駄々をこねる子どもか。

「あ、あるじさま……。もうそこらへんでからかうのはやめてあげては?」

「そうだそうだー!……ニヤリ」

 リンは心優しいなぁ。しかし俺は見逃さないぞ。そんな優しさを利用してやりたくない事から逃げる奴のことを。

「女神……お前にはきついお仕置きが……」

「全力でお金を稼がせていただきます!」

 お前、プライドというものは全くないのか。素晴らしお程の手のひら返しだぞ。

「乗りかかった船だ。もし良かったら、私も手伝うぞ」

 エルシャさんが突然そんな事を言った。手伝ってくれるのは助かるので、ありがたくその提案に乗ることにした。

「ありがとうござ……」

「……恩を売っておけばいつか私も……ん?なにかな?」

「い、いえ。ありがとうございます」

 なんだろう。この恐怖すら覚えるほどの執念深さは。好かれるのが嫌ってわけじゃないが、愛が重いのもどうかと……。

「じゃあ、早速行きましょうか。早めに終わらせた方が何かと都合がいいだろうし」

「そうだな。じゃあそっちは任せるぞ」

 俺はジュリにそう言って、ここは解散をした。

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