異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第106話 親睦を深めるようです

 フェイが俺たちの仲間になることが決まったことで、一旦フェアリア様との話は終わった。

 だがまさかフェイを仲間に入れることになるとは。世の中どうなるか分からないものだ。

 とりあえずフェイには俺達と旅をする中で人見知りが柔らかくなることを期待しておこう。そうすればより一層世界が違って見えるだろうしな。

 そしてその為の一歩として、俺の仲間達と普通に話せるくらいにはなって欲しい。

 と、言うことでフェイの所に皆で押しかけよう。少し可哀想だが、俺も一緒だし、人見知りしない人がいれば多少は安心できるだろうからな。

 俺は皆のことろに向かったら、面白そうな話が聞こえてきた。

「それで実際どうなのよ。フェルトとレオンは進展あったんでしょ?」

「それがね……」

「フェルト!お前は静かに飯でも食ってろ!」

 ジュリの質問に応えようとしたフェルトが口を開けた隙にレオンが食べ物を入れている。

 レオンの焦り方とか答え言っているようなものだが、もう少し聞いてみるか。面白くなりそうだし。

「それじゃあレオン。どうなの?答えてくれるわよね?」

 ジュリが無駄に迫力のある言い方をしたせいで、レオンの背筋が伸びた。

 さぁどうするレオン!

「あ、あのー、俺とフェルトには一切の進展もないんですよ。だ、だから聞きたがってる話とかできないと思います」

 普通に嘘つきやがったぜこいつ!

 レオンはバレないとでも思っているのだろうが、バレバレだ。それ以前に看破のスキルがあるジュリに嘘は通用しない。

「あなた嘘付いたわね。という事はなにか進展があったのね」

「う、嘘なんてついてねぇ!全部ホントだ!」

「って言ってるけどそれも嘘じゃない。私には嘘ついたかどうか分かるのよ?」

「なんだと……そんなの卑怯だ!俺はもう答えねぇ!」

「ならフェルトに聞くわ。皆、レオンを押さえるのよ!」

「「「おぉー!」」」

「や、やめろおぉぉ!!」

 ふっ、良かったじゃないかレオン。お前傍から見たらモテモテの男にしか見えないぞ。なにせお前の体に何人もの女子がくっついているんだからな。

「じゃあフェルト、改めて聞くわ。レオンと進展あったでしょ?」

「うんあったよ!」

「フェル…もごもご!」

 レオンの口が塞がれた。しかしそれでもレオンは口を動かしている。このやり取りだけで両者の必死さが伺えるな。

「じゃあその話、詳しく聞かせて」

「それがね私にもよく分からないの。最初はマッサージをしてもらっていたんだけどなんか途中で変な気持ちになっていったの」

「……もがもが!」

「多分レオンのマッサージが凄く良かったからだと思う。それでね、体がほぐれてきてあったかくなってきた時に、なんか分からないけど耐えきれなくなりそうだったの」

「……んー!んー!」

「そして耐えきれなくなった私はレオンにキスをしたの。そしたらレオンが舌を絡めてきて、頭がぽーっとしてきて、何が何だか分からなくなっちゃった」

「それでそこからはなし崩し的にというわけね?」

「……うん」

 女性陣の方からはキャーだのなんだのの黄色い声が上がっている。

 ちなみに解放されたレオンはその場で四つん這いになって項垂れている。

「俺、もうだめだ……。女に勝てねぇよぉ……」

 レオンの魂のこもった本音がこぼれる。

 俺もその気持ち分かるぞ。たが、負けるな!お前ならいける!

 俺は心の中でレオンを励まして、ようやく皆のところに行く。

「よっ」

「あらあなたもう少し早くくれば面白い話が聞けたのに」

「離れたところで聞いてたから大丈夫だ」

「そうだったの?なら話の内容知っているわよね?」

「まぁそうだな」

「じゃあ話に出てきたマッサージの件、あなたの仕業でしょ?」

 おっと。バレるの早いなぁ。ここは流していこう。

「え、あー、いやー、俺には何のことかさっぱりだなー!あははー」

「あなた嘘ついても無駄だということをさっきのやり取りで見てなかったのかしら?」

「その件に関しては俺が言わなければ、真相は闇の中さ」

 レオンにはフェルトという時間を共有した人がいたせいでバレた。なら俺は大丈夫だ。全て一人でやった事だし。

「へぇ。全部一人でやったのね。ふーん」

 俺の考えていることが筒抜けだと……!

「まさかお前俺の思考を……!そんな手使うなんて汚いぞ!お前それでも人間か!」

「隠すあなたが悪いのよ」

 あまりにも横暴すぎやしませんか……。

 俺はレオンと同じ体制になり項垂れた。さっきのレオンの気持ちが痛いほど分かる……。

「それであなたはなにか用があって来たんじゃないの?」

「あ、そうだった。皆、聞いてくれ」

 俺は一回皆を集め、フェイが人見知りだと言うことを伝えた。

「その上で頼みがあるんだが、今からフェイに会ってくれないか?仲間になる事が決まった祝いも兼ねてな」

「それくらいお易い御用よ」

 ジュリだけでなく他の皆も了承してくれている。

「じゃあフェイを連れてくる。多分皆でいくよりはそっちの方がいいだろう」

「そうね。その方がいいと思うわ」

 そういう事になったので俺は一旦フェイの所へ。

 フェイはさっきまで帝王様と話していたが帝王様はフェアリア様に呼ばれ、そっちに行っている。

 だから今、フェイは一人でご飯を食べている。

「フェイ、ちょっといいか?」

「うん?どうかした?」

「今から親睦を深める為に、俺の仲間達に会わないか?」

「え、でも……」

「言いたいことは大体わかるぞ。だがいつまでもそのままでいるつもじゃないんだろ?」

「うん……」

「お節介かもしれないがこれくらいはやらせてくれ」

「分かった、やってみる」

 フェイは納得してくれたようだ。これでフェイの人見知りを治す手助けになればと思う。

「でもでも!どうやって会えばいいのかな?クールな感じ?それとも可愛く?最初は初めましてだよね。やっぱり笑顔は忘れずにいた方がいいだろうし、あんまり失礼な事すると……」

「ストップストーップ!」

 俺も人に会う前からどうするか決めてた頃があったが、それをすると失敗しかして来なかった。

「フェイ、お前は今のままでいい。もし失敗しても俺が近くでフォローしてやるから」

「……分かった。頑張る」

 そうして俺は皆のところにフェイを連れていく。

 フェイは緊張してか出す手と足が同じになっている。しかも体はガチガチだ。

 こんなんで大丈夫か分からんがとりあえずやって見なければな。

「みんなー連れてきたぞー」

 俺が声をかけると皆がこちらを向く。それ同時にフェイの体がピクンと反応を示す。

 そんなのを知らずしてゼロが真っ先にフェイのところに来た。

「わたしゼロ!あなたがフェイ?」

「は、はじめましぇて!……あうぅ……」

「か、かわいいのー!」

 ゼロは噛んで恥ずかしそうにしているフェイを見て悶えている。

「噛んでしまったけど落ち込むことないぞ。むしろそれで良かったくらいだ」

「でも恥ずかしい……」

 そう言ってフェイは俺の服の裾をキュッと握ったが、その手は少し震えていた。

 まあ頑張っているのだ。服の裾の一つや二ついくらでもあげよう。

「よし。じゃあ皆のところにいくか」

「……うん」

 そして遂にフェイは皆の輪の中に入っていく。

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