異世界に転生したので楽しく過ごすようです
第84話 帝都で起こっている異変のようです
準々決勝の第三回戦が終わり、魔力切れによって気絶したリンが担架で救護室に運ばれていく。
リンの対戦相手だったフェルトも体がボロボロだったので救護室に連れて行かれたようだ。
流石にないとはと思うがフェルトがリンをどうこうしそうで怖い。さっきまでのフェルトを見ていればそう思うのも無理はないだろ。
「よし。次は私の番だから行ってくるわ」
俺の隣にいたジュリはひとつ気合を入れ、リングに足を向けた。
俺はその背中に声を掛ける。
「頑張れよー」
ジュリは俺の応援を背中越しにサムズアップして応える。
やだ、なにあれ。ちょっとかっこいいんですけど。
そういえば、ジュリってこの大会に参加してからやけにかっこよさを追求している気がする。手刀で相手を気絶させたり、余裕を見せて圧倒的な強さを見せたり。さっきのサムズアップもそうだ。
……ジュリは一体何になろうとしているんだ?
いや、あいつの事だ。どうせ、かっこいい方がいいに決まってるじゃない、とか言うだけだ。
それに、それが無駄にかっこいいから困るんだよな。
『あらやだ。そんなに褒めないでくれる?』
『……褒めてないぞ』
ジュリが俺の思考を読んで念話を飛ばすなんていつもの事だ。もうツッコんだりするか。
『なによ、その薄い反応。期待したのだけど?』
『そんな期待しなくていい!』
『ふふふっ』
くっ!いつもの癖がこんなところで……!
俺は可笑しそうに笑うジュリを恨めしそうに見つめた。
◇◆◇◆◇
ーside:ジュリー
ふふふっ。やっぱりあの人と話すのは楽しいわね。でも、あの人はそうは思ってないみたいだけど。
それでもいいわ。今はとりあえずこの先の戦いをこなしていくだけよ。
私はリングに上がる。
それと同時に私の対戦相手もリング上に登ってきた。
私の対戦相手は確かロニっていう王都の冒険者だったわね。強いのかしら?
「さあ!第四回戦に出場する選手が揃ったぞぉ!!ジュリエット選手とロニ選手だぁ!!」
もうっ!ほんとにジュリエットって呼ぶのやめて欲しいわ!その名前で呼ばれる私が恥ずかしくて死にそうになる。
「この勝負、ロニがどう戦うかで勝敗が分かれる。ジュリエット様は強いからな」
やめてえぇぇ!!死ぬぅ!恥ずかしくて死んじゃうぅ!!
「なるほど、ロニ選手にはそういう所に注意して試合を進めてほしいですね。……では早速、試合開始!!」
試合が始まった途端に、ロニが手を上げた。
私はロニが得意とする魔法が飛んでくると思い、構えたのだが、どうやら違うみたいだ。
思考が見え見えでつまらない。本当は読まなければいいだけの話なのだけど、もう癖みたいなものだからそうそう治るものじゃないし。
「俺は棄権だ。どう考えても俺では六種族に勝つことは出来ない。だが、ジュリエット王女様は六種族に勝たれた。それが何を意味するかは言わなくてもわかる。俺は無駄な戦いはしない。勝てないなら早々に負けを認める」
はぁ。ちょっとは張り合ってほしいものなのだけれど、そういうことなら無理強いをしても仕方ないわよね。
「ロニ選手棄権により、ジュリエット選手の勝利!!」
私としてはあまり嬉しくない勝ち方だけれど、準決勝で、フェルトと戦えると思えばまぁいいかと思えてしまう。
私は次の戦いに少しの期待に心を膨らませてリングから降りた。
◇◆◇◆◇
ーside:主人公ー
ロニさんってただ単にジュリエット様に手を出すのが恐れ多いとか思ってただけなんじゃ……?
……まあそんなことはどうでもいいか。取り敢えずはジュリの勝ちを喜んでおこう。
だが、ジュリの次の対戦相手はフェルトだ。どう見てもレオンとフェルトは未だに本気を出していない。そんなやつに勝てるのかどうか……。
「今そんな事を考えても仕方ないわ。なるようになるわよ」
リングから降りてきたジュリが思考を読んだ上で話しかけてきた。
「だが、あいつらはちょっと規格外というか」
「あなたも大概よ?」
「いやそうなんだが、そういう事じゃなくてだな……。なんというか戦いに飢えているというか、強者との戦いを狂ったように望んでいるところが規格外と言いたいんだ」
「それはあるかもしれないわね。だけれど、私はそれを相手にしたいと思っているわよ?あなたもでしょ?違うの?」
ジュリは俺を見つめ問いてきた。
「いや、それは……」
言い淀んだ俺に、ジュリは俺の心を見透かした様に話をする。
「あなたはレオンとフェルトの二人を見て、強いと思って心配した。でもその心配はゼロやリン達に向けられたもので、自分自身に心配はない。それにあなたは思ったはずよ、こいつらと戦うならって」
俺はハッとした。
確かに俺はレオンと戦うなら苦戦が必須だと思っただけで戦いたくないとか怖いとかそんな感情を一つも抱いていなかった。
「そんなあなたが、あなたと同じ規格外を相手にしたくないなんて思うはずがないわ」
「……そうかもしれないな。だがジュリ、お前はどうなんだ?相手は強さも何もかもが規格外なんだぞ?」
「あなた忘れたの?私は転生者よ。私が規格外でないわけないじゃない。むしろ規格外相手とか望むところよ」
ジュリは鼻を鳴らして自慢するように言った。
「……バカだな」
「そういうあなたも私と同じなんだからバカよ」
「そうだな俺もバカだ」
俺は今、無性にレオンと戦いたい。
そういえば次の戦いは何時だ?今はもう昼だし、昼休憩を挟むと思うのだか。
すると、タイミングよく進行役が今後のスケジュールを告げた。
「これより昼休憩を二時間ほど挟みます。その後、準決勝を執り行います。出場する選手は準々決勝で傷ついた体をしっかり休めて英気を養っておいてください」
との事らしい。
「ジュリ、これから観客席にいる皆と合流してから救護室に向かうがそれでいいか?」
「ええ」
俺とジュリは予定した通りに観客席にいた皆と合流後、救護室に向かった。
ミルとリンは二人とも魔力切れでまだ眠っている。どうにかして起こしてやりたいとこなんだが……。
「この二人を起こす方法ってないのか?」
俺が皆に聞いてみると、女神が呆けた表情で首を傾げ何言ってるのこいつみたいな目をしてきた。
「そんなの望めばどうにでもなるでしょ?」
「あーだわ。それでいける気がする」
俺はミルの額に触れ、目を覚ませと望んでみた。
《復活魔法を獲得しました》
懐かしいこの感じ。不意に女神の声が聞こえるこの現象。
……ん?女神の声が聞こえる?そこにいる女神は何もしてないんだが。
まあいっか。小さいことは気にするな。
俺は獲得した復活魔法をミルに使ってみた。使ったはいいが何の変化もなく何が起こったのか全くわからなかったが、少しの間をあけてミルが目を覚ました。
「ん。おはよ」
「ああ、おはよう」
俺はミルに挨拶をして、すぐにリンにも復活魔法を掛けた。
やっぱり何が起こっているのかわからなかったがミルと同じように目を覚ました。
「お、おはよーございます…」
「おう、おはよ」
で、何が起こったのだ?すごく知りたいのだが。
「なにが起きたのか知りたいっていう顔してるから教えてあげる!復活魔法は欠けた物、壊れた物を文字通り復活させるたの!今回は魔力を物としてみたからなくなった分が補給されたってわけよ!」
女神が仁王立ちで偉そうにしながら俺を指さして説明してくる。
めちゃくちゃむかつくが、言ってる事が真面目な分怒鳴れない。
「とりあえず原理は分からったから良しとするか……。じゃ、ミルとリンが目を覚ましたし、美味しいもの食うか」
「「美味しいもの!?」」
ミルとゼロが目を輝かせて俺に詰め寄ってきた。こいつら美味しいものって聞けば途端に元気になるよな。
「おう。美味しいものって言っても俺が作るんだがな。時間もあるし昨日の夜は好評だったからな」
「あたし麻婆豆腐……!」
「わたしは炒飯がいい!」
「分かった分かった!だから落ち着け!」
なんとか二人を落ち着かせ、皆で救護室から出る。
「そういえば主様。どこで料理をお作りになるおつもりですか?」
救護室を出て、もうすぐ会場から出ようという時にレンが俺に聞いてきた。
「宿屋でいいんじゃないか?昼休憩は二時間ぐらいあるし」
「材料など買っておかなければならないものなどあれば私が買って宿屋までお送りいたします」
「レ、レンちゃん一人だと大変だと思うからわたしも一緒に」
「よし、ならレンとリンは今から言う材料を先に買ってきてくれ」
「「はい」」
二人は買う材料を言い渡されてすぐ、先に行ってしまった。
「じゃ、俺達は先に戻るか。どうせ料理もしないといけないからな」
俺達は宿屋に向けて街中を歩き始める。
観戦していた方からは何が凄かったとか、どこに隙があったとか、試合の事で盛り上がっている。
そういう俺もその会話に混ざってミルとの戦いはどうだったとか、皆の戦いを褒めたりしていた。
俺達がそんな事を話していたら、俺の目の端に、ローブをきた奴が冒険者っぽい男を抱えて路地裏に入るのが映り込んだ。
どうやら俺以外に誰も気付いていないみたいだ。
さっきのは何だったんだ?
……もしかすると誘拐か?行方不明者が結構出てるっていてたし、確認だけでもしておかなければ。
「ちょっと用事思い出した。皆先に行っててくれる?」
俺は皆にそう告げて、何か言われる前に走ってローブを着た奴が入っていった路地裏にはいる。
……やはり見当たらないか。俺は完全感知を使って二人重なって動いている反応がないか探った。
するとこの先を右に曲がったところにいることが分かった。
俺はその反応を目指し急ぐ。もし誘拐だったとしたら捕まっていた男を助けなければ。
急いだ事で俺の視界にローブを着た奴を捉えることが出来た。そして、後から近づいてそいつの肩を掴んでこちらを向かせる。
「おい、お前!なに…を……」
俺はローブを着た奴の顔を見て驚きが隠せなかった。
だってそいつは俺が知っているで、もう一度戦おうって約束した奴だったから。
「タ、タクマ……!お前、なんで……!!」
「…………」
タクマは何も言わない。だが、俺の目をじっと見つめる。俺を見つめるタクマの瞳は深淵のように暗く、闇を見つめているかのようでおぞましかった。
「おい!タクマ!なんでお前がここに居るんだ!!他の三人はどうした!!答えろ!!」
「…………」
尚も黙ったままのタクマ。
俺の手に力が入る。頭に血が上りタクマを殴ろうとする。
と、ここで一つの声が聞こえた。
「マスターどこなのー!!いたら返事してー!」
ゼロか!なんでここに!
俺がタクマから気をそらした途端、タクマが俺の腕を振り払い、転移して消えて行った。
……クソっ!感知外に逃げられた!
「あ!いたー!」
ゼロが俺を見つけ走り寄ってくる。
「マスターきい……?どうしたのマスター?怖い顔して」
「……ああ、なんでもない。用事は終わった。皆の元に戻ろうか」
「うん?」
さっきのタクマの様子は明らかにおかしかった。俺の声に反応も示さなかった上にあの目だ。
俺の知っているタクマの目はあんなくらいものではなく、希望に満ちた目になってたはずだ。
だとしたらあいつはなんなんだ……。タクマなのか……。それとも別人なのか……。
それとあいつらが攫っていったあの男をどうするつもりなのか。
考えれば考えるほど謎は深まるばかりだった。
リンの対戦相手だったフェルトも体がボロボロだったので救護室に連れて行かれたようだ。
流石にないとはと思うがフェルトがリンをどうこうしそうで怖い。さっきまでのフェルトを見ていればそう思うのも無理はないだろ。
「よし。次は私の番だから行ってくるわ」
俺の隣にいたジュリはひとつ気合を入れ、リングに足を向けた。
俺はその背中に声を掛ける。
「頑張れよー」
ジュリは俺の応援を背中越しにサムズアップして応える。
やだ、なにあれ。ちょっとかっこいいんですけど。
そういえば、ジュリってこの大会に参加してからやけにかっこよさを追求している気がする。手刀で相手を気絶させたり、余裕を見せて圧倒的な強さを見せたり。さっきのサムズアップもそうだ。
……ジュリは一体何になろうとしているんだ?
いや、あいつの事だ。どうせ、かっこいい方がいいに決まってるじゃない、とか言うだけだ。
それに、それが無駄にかっこいいから困るんだよな。
『あらやだ。そんなに褒めないでくれる?』
『……褒めてないぞ』
ジュリが俺の思考を読んで念話を飛ばすなんていつもの事だ。もうツッコんだりするか。
『なによ、その薄い反応。期待したのだけど?』
『そんな期待しなくていい!』
『ふふふっ』
くっ!いつもの癖がこんなところで……!
俺は可笑しそうに笑うジュリを恨めしそうに見つめた。
◇◆◇◆◇
ーside:ジュリー
ふふふっ。やっぱりあの人と話すのは楽しいわね。でも、あの人はそうは思ってないみたいだけど。
それでもいいわ。今はとりあえずこの先の戦いをこなしていくだけよ。
私はリングに上がる。
それと同時に私の対戦相手もリング上に登ってきた。
私の対戦相手は確かロニっていう王都の冒険者だったわね。強いのかしら?
「さあ!第四回戦に出場する選手が揃ったぞぉ!!ジュリエット選手とロニ選手だぁ!!」
もうっ!ほんとにジュリエットって呼ぶのやめて欲しいわ!その名前で呼ばれる私が恥ずかしくて死にそうになる。
「この勝負、ロニがどう戦うかで勝敗が分かれる。ジュリエット様は強いからな」
やめてえぇぇ!!死ぬぅ!恥ずかしくて死んじゃうぅ!!
「なるほど、ロニ選手にはそういう所に注意して試合を進めてほしいですね。……では早速、試合開始!!」
試合が始まった途端に、ロニが手を上げた。
私はロニが得意とする魔法が飛んでくると思い、構えたのだが、どうやら違うみたいだ。
思考が見え見えでつまらない。本当は読まなければいいだけの話なのだけど、もう癖みたいなものだからそうそう治るものじゃないし。
「俺は棄権だ。どう考えても俺では六種族に勝つことは出来ない。だが、ジュリエット王女様は六種族に勝たれた。それが何を意味するかは言わなくてもわかる。俺は無駄な戦いはしない。勝てないなら早々に負けを認める」
はぁ。ちょっとは張り合ってほしいものなのだけれど、そういうことなら無理強いをしても仕方ないわよね。
「ロニ選手棄権により、ジュリエット選手の勝利!!」
私としてはあまり嬉しくない勝ち方だけれど、準決勝で、フェルトと戦えると思えばまぁいいかと思えてしまう。
私は次の戦いに少しの期待に心を膨らませてリングから降りた。
◇◆◇◆◇
ーside:主人公ー
ロニさんってただ単にジュリエット様に手を出すのが恐れ多いとか思ってただけなんじゃ……?
……まあそんなことはどうでもいいか。取り敢えずはジュリの勝ちを喜んでおこう。
だが、ジュリの次の対戦相手はフェルトだ。どう見てもレオンとフェルトは未だに本気を出していない。そんなやつに勝てるのかどうか……。
「今そんな事を考えても仕方ないわ。なるようになるわよ」
リングから降りてきたジュリが思考を読んだ上で話しかけてきた。
「だが、あいつらはちょっと規格外というか」
「あなたも大概よ?」
「いやそうなんだが、そういう事じゃなくてだな……。なんというか戦いに飢えているというか、強者との戦いを狂ったように望んでいるところが規格外と言いたいんだ」
「それはあるかもしれないわね。だけれど、私はそれを相手にしたいと思っているわよ?あなたもでしょ?違うの?」
ジュリは俺を見つめ問いてきた。
「いや、それは……」
言い淀んだ俺に、ジュリは俺の心を見透かした様に話をする。
「あなたはレオンとフェルトの二人を見て、強いと思って心配した。でもその心配はゼロやリン達に向けられたもので、自分自身に心配はない。それにあなたは思ったはずよ、こいつらと戦うならって」
俺はハッとした。
確かに俺はレオンと戦うなら苦戦が必須だと思っただけで戦いたくないとか怖いとかそんな感情を一つも抱いていなかった。
「そんなあなたが、あなたと同じ規格外を相手にしたくないなんて思うはずがないわ」
「……そうかもしれないな。だがジュリ、お前はどうなんだ?相手は強さも何もかもが規格外なんだぞ?」
「あなた忘れたの?私は転生者よ。私が規格外でないわけないじゃない。むしろ規格外相手とか望むところよ」
ジュリは鼻を鳴らして自慢するように言った。
「……バカだな」
「そういうあなたも私と同じなんだからバカよ」
「そうだな俺もバカだ」
俺は今、無性にレオンと戦いたい。
そういえば次の戦いは何時だ?今はもう昼だし、昼休憩を挟むと思うのだか。
すると、タイミングよく進行役が今後のスケジュールを告げた。
「これより昼休憩を二時間ほど挟みます。その後、準決勝を執り行います。出場する選手は準々決勝で傷ついた体をしっかり休めて英気を養っておいてください」
との事らしい。
「ジュリ、これから観客席にいる皆と合流してから救護室に向かうがそれでいいか?」
「ええ」
俺とジュリは予定した通りに観客席にいた皆と合流後、救護室に向かった。
ミルとリンは二人とも魔力切れでまだ眠っている。どうにかして起こしてやりたいとこなんだが……。
「この二人を起こす方法ってないのか?」
俺が皆に聞いてみると、女神が呆けた表情で首を傾げ何言ってるのこいつみたいな目をしてきた。
「そんなの望めばどうにでもなるでしょ?」
「あーだわ。それでいける気がする」
俺はミルの額に触れ、目を覚ませと望んでみた。
《復活魔法を獲得しました》
懐かしいこの感じ。不意に女神の声が聞こえるこの現象。
……ん?女神の声が聞こえる?そこにいる女神は何もしてないんだが。
まあいっか。小さいことは気にするな。
俺は獲得した復活魔法をミルに使ってみた。使ったはいいが何の変化もなく何が起こったのか全くわからなかったが、少しの間をあけてミルが目を覚ました。
「ん。おはよ」
「ああ、おはよう」
俺はミルに挨拶をして、すぐにリンにも復活魔法を掛けた。
やっぱり何が起こっているのかわからなかったがミルと同じように目を覚ました。
「お、おはよーございます…」
「おう、おはよ」
で、何が起こったのだ?すごく知りたいのだが。
「なにが起きたのか知りたいっていう顔してるから教えてあげる!復活魔法は欠けた物、壊れた物を文字通り復活させるたの!今回は魔力を物としてみたからなくなった分が補給されたってわけよ!」
女神が仁王立ちで偉そうにしながら俺を指さして説明してくる。
めちゃくちゃむかつくが、言ってる事が真面目な分怒鳴れない。
「とりあえず原理は分からったから良しとするか……。じゃ、ミルとリンが目を覚ましたし、美味しいもの食うか」
「「美味しいもの!?」」
ミルとゼロが目を輝かせて俺に詰め寄ってきた。こいつら美味しいものって聞けば途端に元気になるよな。
「おう。美味しいものって言っても俺が作るんだがな。時間もあるし昨日の夜は好評だったからな」
「あたし麻婆豆腐……!」
「わたしは炒飯がいい!」
「分かった分かった!だから落ち着け!」
なんとか二人を落ち着かせ、皆で救護室から出る。
「そういえば主様。どこで料理をお作りになるおつもりですか?」
救護室を出て、もうすぐ会場から出ようという時にレンが俺に聞いてきた。
「宿屋でいいんじゃないか?昼休憩は二時間ぐらいあるし」
「材料など買っておかなければならないものなどあれば私が買って宿屋までお送りいたします」
「レ、レンちゃん一人だと大変だと思うからわたしも一緒に」
「よし、ならレンとリンは今から言う材料を先に買ってきてくれ」
「「はい」」
二人は買う材料を言い渡されてすぐ、先に行ってしまった。
「じゃ、俺達は先に戻るか。どうせ料理もしないといけないからな」
俺達は宿屋に向けて街中を歩き始める。
観戦していた方からは何が凄かったとか、どこに隙があったとか、試合の事で盛り上がっている。
そういう俺もその会話に混ざってミルとの戦いはどうだったとか、皆の戦いを褒めたりしていた。
俺達がそんな事を話していたら、俺の目の端に、ローブをきた奴が冒険者っぽい男を抱えて路地裏に入るのが映り込んだ。
どうやら俺以外に誰も気付いていないみたいだ。
さっきのは何だったんだ?
……もしかすると誘拐か?行方不明者が結構出てるっていてたし、確認だけでもしておかなければ。
「ちょっと用事思い出した。皆先に行っててくれる?」
俺は皆にそう告げて、何か言われる前に走ってローブを着た奴が入っていった路地裏にはいる。
……やはり見当たらないか。俺は完全感知を使って二人重なって動いている反応がないか探った。
するとこの先を右に曲がったところにいることが分かった。
俺はその反応を目指し急ぐ。もし誘拐だったとしたら捕まっていた男を助けなければ。
急いだ事で俺の視界にローブを着た奴を捉えることが出来た。そして、後から近づいてそいつの肩を掴んでこちらを向かせる。
「おい、お前!なに…を……」
俺はローブを着た奴の顔を見て驚きが隠せなかった。
だってそいつは俺が知っているで、もう一度戦おうって約束した奴だったから。
「タ、タクマ……!お前、なんで……!!」
「…………」
タクマは何も言わない。だが、俺の目をじっと見つめる。俺を見つめるタクマの瞳は深淵のように暗く、闇を見つめているかのようでおぞましかった。
「おい!タクマ!なんでお前がここに居るんだ!!他の三人はどうした!!答えろ!!」
「…………」
尚も黙ったままのタクマ。
俺の手に力が入る。頭に血が上りタクマを殴ろうとする。
と、ここで一つの声が聞こえた。
「マスターどこなのー!!いたら返事してー!」
ゼロか!なんでここに!
俺がタクマから気をそらした途端、タクマが俺の腕を振り払い、転移して消えて行った。
……クソっ!感知外に逃げられた!
「あ!いたー!」
ゼロが俺を見つけ走り寄ってくる。
「マスターきい……?どうしたのマスター?怖い顔して」
「……ああ、なんでもない。用事は終わった。皆の元に戻ろうか」
「うん?」
さっきのタクマの様子は明らかにおかしかった。俺の声に反応も示さなかった上にあの目だ。
俺の知っているタクマの目はあんなくらいものではなく、希望に満ちた目になってたはずだ。
だとしたらあいつはなんなんだ……。タクマなのか……。それとも別人なのか……。
それとあいつらが攫っていったあの男をどうするつもりなのか。
考えれば考えるほど謎は深まるばかりだった。
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