異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第65話 クエストを受けるようです

「ねぇねぇマスター!この短刀使ってみたい!」

 俺達が武器を買って店を出たすぐの事、ゼロが突然そんなことを言ってきた。

 使い慣れるという意味でも、今買った武器を試してみた方がいいかもしれないし。

「そうだな。じゃあクエストか何か受けてみるか。皆もそれでいいか?」

「私は構わないわ」

 ジュリ以外の皆もそれに同意するように頷いた。

「それじゃギルドへゴー!」

 女神の掛け声と共に俺達はギルドへと足を運んだ。

 今日ギルドへ来るのは2度目だが、最初はゼロ、レン、リンの冒険者登録だけしかしていないので、どんなクエストが出ているのか知らない。

 ということで全員で、クエストの張り紙が貼ってあるボードのところに集まった。

「武器を使うんだから討伐系のクエストがいいよな」

「それならウルフの群れの討伐なんてどうかしら?場所は帝都の東に位置する山の頂上付近だそうよ」

「群れ?数はどれくらいなんだ?」

「まぁまぁ多いみたいよ。推定Bランク以上あるといいみたいね」

「それで大丈夫なのか?武器の使い心地とかを確かめる為のクエストだろ?群れだとちょっと危なくないか?」

「武道会の初戦は大勢と戦うことになると思うしちょうどいいくらいじゃないかしら?」

 そうかもしれんが……でもなあ……。

「あたし、それでいい」

「わたしもそれでいい!」

「群れを相手にできるようになれば武道会での心配はなくなりますからね」

「レンちゃんの言った通りだと思います…」

「みんなもこう言ってるしやってみたら?危なくなっならあなたが助かればいいんだし」

 レンの言ってることはごもっともだし、皆もやる気みたいだから受けるか。

 俺はそのクエストの張り紙を受け付けの方に持っていき受注した。

「一つ言っておくが、危なくなったら逃げろ。蘇生させることは出来るが、できるだけ死にたくないだろ?」

「「「「「「はーい」」」」」」

 こいつらほんとに分かってんのかね……。それと女神。お前戦いに行くつもりなの?ちゃっかり返事しちゃってるけど。

「それじゃ早く行こ!時間が惜しいし!」

 どうやら行くつもりのようだ……。無事に帰ってこれるか心配になってきたわ。

「マスターもぼっとしてないで早く行こー!もう皆外出ちゃったよー!」

「マジか。とりあえず皆を追いかけるか」

「うん!」

 皆、俺を置いていくとかどんだけ戦いたいんだよ……。なに?戦わないと気が済まない戦闘民族なの?

 俺が下らないことを考えているうちに皆に追いついた。

 皆どこかわくわくした表情をみせている。

 それは新しい武器を使うことから来てるわくわくなのか、戦うことが楽しみで仕方がないことからきてるわくわくなのかどっちなんですかね?

 俺の予想じゃ圧倒的に後者。だってこいつら脳筋だし。

「東門を出たらすぐに転移しながら山まで向かうことにするか」

「その山って、ここからどれくらいの距離のところにあるんでしょうか?」

「歩いて2日かからないほどって書いてあったから、そう遠くはないと思うわよ」

「ましてや転移を使うから俺達はそれよりも何十倍の速さで行けるし」

「でしたら大丈夫ですね」

「……よく考えたら二日のところを半日位で行く俺達ってやばくね?」

「そんなの今更」

「むしろ、なんで今までやってきたのに気づかなかったのかしら?」

「俺の中では転移で移動が普通になっていたんだろうな……。はは、いつからこんなにアホみたいになってしまったんだ」

 転移で移動以外にも、王国の女王と結婚とか、魔王の娘と同じパーティとか、女神が目の前に現れたりとか。あげたらキリがないわ。

「そんなの気にしたら負けよ。そんなことよりもう東門に着いたわよ?さ、仕事してちょうだいな」

「仕事とか言うなよ!便利だからやってるだけなんだから!」

「マスター早くー!」

「すまんなゼロ。……そんじゃ転移するか」

 俺はいつものように皆に触れてもらい、千里眼からの転移というコンボを決めていく。

 しかし、このコンボが切れる時が1回だけあった。女神が途中でいなくなっていたのだ。

 いつから居なくなってたのか分からん。皆に聞いても、あれ?とかしか返事が貰えなかったし。

 このまま置いて行きたい気分だが、さすがにそれはやりすぎだろうな。

 俺はしょうがないから、女神の寵愛を受けた者という称号から女神を呼び出してみた。なんか女神が呼べるって言ってたし、多分これでいけるだろ。

 呼び出し方は至ってシンブル。いつも念話してる時みたいに頭の中で呼ぶだけだ。

 俺が呼び出してみたら、目の前に女神が現れた。唐突過ぎてびびったくらいだ。

 呼び出された女神は目尻に涙を浮かべ、地面をつんつんしていた。

 うわー。完全にいじけてるじゃないですかー。ちょっと誰か慰めてあげて!

「あ!女神様帰ってきたー!迷子になったらだめなんだよー?」

「だ、だめだよゼロちゃん!そんな直接言ったら!」

「……うぅ……」

 慰めるんじゃなくて追い討ちをかけていくんだな。女神から涙が零れてるぞ?

「まぁそんなに泣くな女神。人には失敗なんて付き物だ。……あ、女神は人じゃなかっ」

「……私をいじめてそんなに楽しい……?」

 あっ。これはいかん。女神の目が虚ろになってる。どうにかして慰めなければ!

「って言うのは冗談で!俺達はいつも女神には働いて貰って助かってるんだ。少し失敗したくらいどってことないだろ」

「……だよね。私、ちゃんと働いてるもんね!」

 単純な女神で良かったわ……。まぁこれで揃ったしそろそろ行くか。

「うっし、女神も帰ってきた事だし先に進むぞー」

 それから30分程かけて目的の山に辿り着いた。

 その山は草木に覆われ、いかにも強そうな魔物がいる雰囲気を出していた。

「おいおい、ほんとにここであってるのか?」

「あっているはずよ?ちゃんと確かめたわ」

「って事はこの山の頂上付近にウルフの群れがあるってことか。どんなウルフなのか気になるところだ」

「そうですね。この雰囲気だととても強いと思うので気を抜かない様にしませんと」

「確かにそうだなぁ」

 そうして、俺達は山へ突入する。

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