異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第44話 街を出発するようです

 翌日の朝。

 俺は気持ちよく寝ていた。

 だが、体の上になにか重いものが乗ってきたので息苦しくなった。

「んん……。なんだ…?」

「ミャッ!」

「うぉ!…びっくりしたぁ」

 目を開けると鼻と鼻の先がくっつく位の距離にシロの顔があった。

 おいおい...。朝っぱらから驚かさないでくれよ…。おかげで目が完全に冷めてしまったじゃないか…。

 俺はとりあえずシロをどけて、本当の重さの原因を確かめる。

 するとそこにいたのは、スライムが1匹と、剣が1匹、槍が1匹だった。剣と槍に匹なんて付けるの初めてだよ…。

「ゼロ、レン、リン。お前達は俺の上で何をしてるんだ?」

『初心に帰ろうかと思いまして、ゼロ様とリン様と話し合った結果がこれです』

『スライムの方がマスターとくっつけるのー!』

『ゼロよ。それは本格的にくっついている訳だが?』

『そっちの方がいいのー!』

『さようですか…。それで?リンはなんで話さないんだ?』

『えっ…あ、あの…ちょっと久しぶりに槍になったから…』

『あーなるほど。感覚がおかしいとかそんな感じだろ?』

『……。う、うん…』

 たまにあるよな。久しぶりに触ったらなんかいまいちピンとこないやつとか。

『まぁなんでもいいんだけどさ。俺の上からどいてくれない?寝苦しいんだけど』

『えー!』

『えー!、って言われてもなぁ。どうすることも……あ、できるわ。重量操作使えば軽く出来る』

 俺は触れている3人の重量を軽くして、寝苦しさを解消した。

 重量操作めっちゃ便利だわぁ。でも触れてないといけないっていうのがちょっと不便だな。

 と、そんなことを思いつつまた眠ろうとしたのだが…。

「ニャ」

「……」

「ニャン!」

「………」

「ニャンニャン!!」

「……はいなんでしょうか。シロさん…」

 寝ようとすると必ずと言っていいほどシロに起こされます。

「ミャー」

「なんだ?お腹が減ったのか??」

「ミャッ!」

「そうだったのか…。…ほれ」

 俺はマジックボックスの中から未だに残っているドラゴン肉を少しだけ取り出して、シロにあげる。

 俺も起きてご飯食べるか。今のやり取りで目が完全に覚めてしまったし。

 俺は結局起きる事にして、朝ご飯を食べる。

 朝ご飯を食べながら今日はどうするかをレン達と話し合っておくか。

「おーい。お前達起きてるんだろ?ちょっといいか?」

「はいなんでしょうか?」

「今日の事なんだけどさどうする?まだこの街にいる?」

「でるー!」

「ゼロは出るに一票。レンとリンは?」

「私はどちらでも」

「わ、わたしはまだ残ってたいかなぁ」

「どっちでもいいが一票。残るに一票。………綺麗に票が割れたな」

 これはミルとジュリにも聞いてみるしかないな。

 だが今ふたりはぐっすり眠っているんだよなぁ。これ起こすの気が引けるんだけど…。

「まぁいいや。ジュリはもうすぐ起きるだろうし、その時に聞こう」

「ミルはー?」

「ミルは頃合を見て起こすのがいいだろうな。ミルなら昼過ぎても寝続ける可能性あるし」

 と、こんな話をしているうちにジュリが起きてきた。

「今日は皆早いのね。それに朝ご飯も出来てるみたいだし、私も貰おうかしら」

 俺はジュリに俺と同じ朝ご飯を渡し、ついでに今日何したいかを聞いてみた。

「そうねぇ。大きな目的が帝国に行くことだからこの街を出る方がいいんじゃないかしら?」

「なるほどな。じゃ出るに一票か」

「そうなるわね」

 すると、ミルが朝ご飯の匂いに釣られ起きてきた。

 ………ミルってこういう起こし方すればいいのね…。

「…ごはん…たべる…」

「なぜにカタコト…。まぁいいや。ほらごはんあるからこっち来な」

「…ん」

 俺はミルにも朝ご飯を渡して、同じように聞いてみた。

「あたしはパパに会いたいから出たい…」

「確かにミルはそうか。お父さんに会いたいよな」

 これで出るが三票だな。ということは出るに決定か。

 ちなみに俺はみんなに任せるに一票。まぁレンとに似たようなものだな。

「皆からの意見を聞いた結果、この街を出ることにしましたー。なので、ご飯を食べたら出発の準備をするようにしてくださーい」

「「「「「はーい」」」」」

朝からいい返事。とてもいい事だと思います。

この後、ご飯を食べ終わり、皆の準備も終わり、リリアスさんに出発の挨拶まで済ませた。

 リリアスさん、目の下にクマができたなぁ…。ちょっとはしゃぎ過ぎていらんことまで喋ってしまったからだろうなぁ。心の中で謝っとこ。

 リリアスさんごめんなさい。

 よし!これで大丈夫だろう!

『あなたそれで大丈夫な訳ないでしょうに…』

『細かい事は気にするな!気にしだしたらこのパーティではやっていけんぞ!』

『…………それもそうね』

 おぅ…。納得しちゃったよ…。結構暴論言ったつもりだったのに…。

 まぁさっきも言った通り、細かいことは気にしなくていいか。

「それじゃ皆馬車を探せ!この近くにあるはずだ!」

 ふっ。今回の俺は一味違うのだ!いつものように気付いたら目の前にあるとかそんな事にならないようにこちらから先に探し始めるのだ!

 どうだ俺の完璧な作戦は!

「なんだい兄ちゃん達?馬車を探してるのか?」

 いざ探しに行こうとしたら、後ろから話かけられた。

 そっちを見てみると御者の人が引いている馬車があった。

 えぇ…。こっちから探しに行こうとしたら向こうから来たんですけど…。

 俺はどうやっても馬車を探すことは出来ないんですね…。

 いやだが行き先が違うということもありえる!!

「これは帝国行きの馬車だ。帝国に行きたいなら乗せていくぞ?だが、こっちも商売だから金は取るぞ?」

 はい。希望は潰えました。……なんなんだよ畜生…。

 はぁ…。行き先があってるならこの馬車に乗るか…。

「帝国は俺達が向かう場所なのでぜひ乗せてくだい」

「了解。それじゃ後ろに乗りな」

 俺は全員分のお金を払って、乗り込む。

「マスター?どうして涙が出てるのー?」

「俺の希望はもう無いことに気付いてしまったからかな…」

「きぼー?」

「だめよゼロ。この人は中二病って言う病気にかかっているの。そっとしておいてあげたほうがいいわ」

「おいこらジュリ。お前は何を言ってくれてるんだ。俺は決して中二病ではないぞ」

「マスターは病気なのー?」

「ゼロも真に受け内でいいから!」

 やれやれ全く。ツッコミは疲れるぜ。

「主様。もう門が見えてきました」

「もうすぐガランドの街を出るのか」

「パパ元気にしてるかな…?」

「ミルちゃんのお父さんはきっと元気にしてるよ!」

「うん。そうだと嬉しい」

 ミルはお父さんに会えるのが楽しみなんだな。

 じゃあ帝国に行ったら真っ先にミルのお父さんに会いに行くか。

 こうしてガランドの街を後にした。

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