to be Continued ~ここはゲームか異世界か~

秋乃ヒダマリ

9話 『プレイヤー』





「――次……身分証を出せ」

 オレの番だ。昨日作ったばかりの身分証を無言で出す。すると、門番の顔色が変わった。
 一体どうしたんだ?
 門番は「む、むしょぞく……ムショゾク」などとブツブツ呟いている。

 疲れてるから早くして欲しいんだけど。

「おい、通っていいのか?」

「ヒィッ――ど、どうぞ!」

 本当にどうしたんだ。オレ何かしたか?

 不思議に思いつつも、通っていいとのことなので遠慮なく通らせてもらう。その足で、まずは魔物の素材を売るためにギルドへと向かう事にした。

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「――――動くな」

 押し殺した声

 門を過ぎて、ギルドに向かって暫く歩いていたら突然、首筋の辺りに冷たいモノが触れた。
『ナニヤツ!!』とか、『む、アヤシイ気配』とか出来るはずもなく、動きたいのを我慢するだけで精一杯だった。

「黙ってついてこい」

 ギュっ、と首筋に触れているモノ――小さめのナイフを、更に強く押し当てられた。無言の肯定でそれに従う。

 裏路地に入って、入り組んだ道をグングンと進む。やがて、辿り着いたのはどこかの建物の裏口だろうか。建物自体はかなり大きい。

 ここって……

 ドアを開けて中に入るとすぐに階段があり、奥に進むように促される。
 さらに進みとある部屋の前、『ギルドマスター室』と書かれている。部屋の中は会議室のようになっていて、中に入るとそこには、知らない人物が二人、こちらに顔を向けていた。
 そのうちの片方、禿げ上がった頭の中年っぽいおっさんの方が口を開いた。

「そこに座りたまえ」

 ……初対面なのに偉そうだなオイ。

「なぁ、その前に質問いいか?」

「口の利き方には気を付けろ」
 と言ったのはオレを拘束している女――アズ=ナ=ブール
 再び、首筋に当てられたナイフに力が込められる。チクッ、と軽い痛みを感じた。

 いい加減面倒だな……〔歩光・閃〕からの麻痺付与

 高速移動でナイフを持ったアズ=ナ=ブールの手から抜け出し、麻痺弾で無力化する。実は抜け出そうと思えばいつでも出来たのだが、知った顔だったし何か事情があるのかと思って我慢していたのだ。
 ともあれこれで、一気に形勢逆転だ。

「なッ! バカな“赤い彗星のアズ”がやられただと!!」

 おい、赤い彗星はマズいだろ流石に……

 わーわーと騒ぎ出した禿のおっさんと、無言のもう片方の髪のあるおっさん。
 禿のほうは「貴様、無礼者!」や「死刑にしてやる」など吠えていた。

 ……いい加減イライラしてきたぞ。

「ウッサイ黙れ…「ひいぃ!」……それで、質問いいか?」

 さっきと同じ問いかけ――違うのはオレが銃を向けていることだけだ。
 禿のおっさんは首をブンブンと縦に振る。質問の許可と言う事だろう。

「まず、お前らダレ?」

 目の前にいる二人にはまったく見覚えがない

 口を開いたのは無言だっ髪のあるほうのおっさんだった。
「俺はこの街の冒険者ギルドのマスターをしているアグノットだ。隣にいるのはこの街の領主のガルド=ルートワン伯爵だ」

 貴族とギルドマスターか、予想通りだな。

「なんでオレを連れてきたんだ?」

「それは――君が突然現れた無所属だからだ」

 どういうことだ。と疑問に思っていると、ギルドマスターは続けて言った。

「かつて、世界は無所属の人間で溢れていたという。そして、この“アルタの街”は無所属の人間が最初に現れる場所だった。彼らは同じ服装でどこからともなく現れ、全員が不死の力を持っていたそうだ。彼らは魔物を討伐し、世界の果てと言われる場所を目指していた」

 おいおい、それってどう考えても……プレイヤーだよな。
 でも《ゼノスト》に世界の果てなんか無かった筈だ。

 ギルドマスターは続ける。
「しかし、彼らはある日突然いなくなった。誰一人として姿を見せなくなった。彼らが存在していたのは、数百年前とも数千年前ともいわれているが、この話を信じる者は殆どいない。」

「事実、我々もその伝説は知ってはいたが信じてはいなかった。だが、一昨日、君が突然この街に現れた。そのことが、領主家に古くから伝わる“システム”によって確認された。最初は故障かとも思ったが、後日、君がギルドにやって来た。」



 なるほど、よくわからんが失敗したな。


「無所属の人間は、少ないが存在している。殆どが強者と呼ばれる部類の者たちだ。だが、君はそうは見えないとギルド職員の一人から、『無所属の人間がカードの再発行に来ているが様子がおかしい』と言う報告を受けた。もしや、と思った。そこで、君の行動を監視していた」


「たまたま、君が現れた直後に君を見ていたのが彼女“赤い彗星のアズ”だ。彼女に依頼して君の行動を監視してもらっていた。ああ見えて彼女は暗殺者なのだ。」


 つまり、最初から仕組まれていたと。

「彼女は、君の力を確認するために魔物の群れに突っ込んでいって、やられた振りをして見ていたそうだ。その彼女の報告によれば、君の体は傷を負っても一瞬で治っていたそうだ。つまり、不死の体だ…………君は一体何者なんだ?」

 話しは以上らしい。
 合点がいった。かなり巧妙に仕組まれた罠だったってわけだ。

「話は分かった。オレが何者かは想像に任せる」

 いや、正直自分でも分からん。

「それで?オレをどうしたいんだ?」

「――君に敵意があれば放って置くわけにはいかなかったが、どうやらその必要はなさそうだ。我々は不干渉を取らせてもらう。」

「なんで敵意がないと分かるんだ?」

「君に敵意があれば、いま我々は生きていないだろうな」

 ごもっとも、人間を撃つのは躊躇うが、敵なら撃つつもりだった。それは相手も同じだろう。敵意があればどちらかが仕掛けるという事だろう。

「分かった、話はそれだけか?」

「あぁ、すまなかった。また、いつでもギルドに顔を出してくれ


 こうして、長い長い話しは終わった。
 あ、ちなみに禿の貴族は借りてきた猫のようにおとなしく座っていて動かなかった。
 どうでもいいが。


――それにしても、ただゲームの世界に入った、と思っていたがどうやらそんな簡単な話ではないらしい。

 さい果ての場所……か。

 その場所がなぜか気になる。一度行ってみるべきかもしれないな。
 先ほどまでの会話を思い出しながら、秋山は宿へと戻った。









 ―――やっぱり女は信用するもんじゃ無いな


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