to be Continued ~ここはゲームか異世界か~

秋乃ヒダマリ

6話 『冒険者ギルド』




 ギルドまでは歩いて十五分ほどの距離だ。


 そして、オレの記憶が正しければ、いま目の前にある建物がギルドの筈だ。
 画面で見るのと実際見るのでは少し違った印象を受ける。特に、ゲームでは自分達プレイヤー以外は存在しなかった筈のこの場所が、NPC――いや、この世界の人々で賑わっているのだから違和感だらけだ。

「……取り敢えず入るか」

 木製の扉を押して中に入った。
 まず、目に入ったのは両サイドにズラッと並べられた銀色の鎧だった。それから、ギルド内の酒場にたむろしている武器を担いだおっさんや、列に並んでいる集団。恐らくそこが受付なのだろう。

 取り敢えず、その中でも比較的空いている列に並ぶことにした。
 簡単に言うと男が受付をしている列だ。……定番だろ?




 それで……だ。ついうっかりしていたが、ゲーム時代にはギルドカード的なものは存在しない。つまり、オレの前に居る人が出しているようなカードを持っていない訳でして……。
 これは、まさかの初心者スタートかもしれない。


「――次の方どうぞ」

 っと、オレの番か。どう説明すれば……
 うまく言葉が見つからない。少し間が出来てしまった。受付の人は、どうしたんだ? と訝しんでいる。

 仕方ないから一度出直してから、また来よる事にしよう、

「すみませ――」

「――もしかして初めての方ですか!? アルタの冒険者ギルドへようこそ!!」

 Oh、何だこの激しい人は。ってか冒険者ギルド? 討伐ギルドじゃないの?
 ゲームの時とは少し違うみたいだな。


 どうやら受付の人は、秋山の様子を見て初心者だと勘違いしたらしい。
 呆気にとられている秋山の周りに、何故か人が集まって来る。


 な、なんだ!! なんなんだよ!!


 あっという間に人だかりが出来た。その中心にいる秋山は、四方八方を塞がれて逃げようにも逃げられない。

 戦うか?! いやでもコントローラー無いのにどうやって?!!

 かなりテンパっている秋山の事など梅雨知らず、受付の人は話を続ける。

「どうぞ!! 粗茶ですが――」

「あ、これはどうもご丁寧に……って、ちがーう!!」

 思わず頭下げてお礼言っちゃったし。

「え、初めての方ではないのですか?!」

 「うん、」と頷くと受付の人と、その周りにいた人までもがあからさまに落胆した表情を浮かべて去って行った。よく見ると周りを囲んでいた人たちもここのギルド職員の様だ。(服装が同じだし)


「では、ご用件は何でしょうか」

 おい、さっきまでとのギャップが激しいな。悪意のある棒読みじゃねぇか。


「その前に……さっきのは何だったんだ? 初心者だと何かあるのか?」
 もう敬語なんて使ってやらんぞ。


「ご存知ないのですか!?」

 なんだ、存じてなきゃいけないのか?

「ハッ――もしや都のご出身ですかな?……服装も奇抜ですし(ボソボソ)……」

 “シトラスの都”のことか? この街の人間なら知ってて当然って事か。
 あと、パーカーは好きで着てんだよ。気にすんな

「実は……この街のような、小さな街ですと新規の登録者が少ないのです。加えて、この街は商いが盛んな街でして……近くにいるモンスターはレベルが低いので、モンスターから得られるギルドとしての利益も、冒険者側の利益も少ないのです。」

 なるほど、危険で収入の少ない冒険者になるよりも、安全な商人が人気で新規がいないという事か。

「でも、古株の冒険者っぽいのが結構いるみたいだけど……何で新規の初心者に拘(こだわ)るんだ?」
 武器担いでる人とか……チラッ

「それは…ですね…ゴニョゴニョ……」

 いや、口籠るおっさんは只々(ただただ)気持ち悪いだけだから。


「まぁ言いたくないならいいけど、……質問いいか?」
 ビックリしただけで、特に興味もないしな。

「ギルドに登録してなくても素材を売ったりできるのか?」

「はい、必要の際に受付にお越しいただいて、身分カードを提出して頂ければお引き取り可能です……もしや無所属の冒険者様ですか?」

 無所属?何だそれ、確かにどこにも入ってはいないが。

「あー、まぁそんな感じだ」

「何と珍しい! そうでしたか! 身分証はお持ちですか?」

「……いや、無くしてしまったらしい」

 嘘も方便だ。

「では、こちらで再発行致しましょう。少々お待ちください」

 そう言って、断る間もなく裏へと引っ込んでいった。(帰ろうかな)

 何だかんだ残って、待つこと一分。
 戻って来た受付のおっさんの手にはトランプくらいのサイズのカードが――

「こちらに血を一滴お願い致します」

 血? え、痛いじゃん。勘弁してよ。

 嫌々ながら――渡された針を人差し指に刺して血を垂らす。


_________________________ 

『ソレガシ』
年齢:十九歳
ギルド:無所属
ステータス:非公開
パーティー:無所属
_________________________ 

何とも簡素な情報だな。

「犯罪歴もありませんし、驚くことに再発行も完了したようです」

 驚くことにって何だよ、疑ってたのか? まぁ、オレも元から持って無い物の再発行が出来て驚いてるけどな。


「ありがとう、じゃあオレ用事あるんで失礼します」

 お礼を言ってギルドを後にする。去り際に、受付のおっさんが「ギルドは冒険者と共に!」とか言っていた。

 え、なにその恥ずかしいセリフ。

 ともあれ、当初の目的のギルド登録では無いが、何故か身分証も手に入ったし今はこれで
いいか。

 ――実は、無所属はかなり珍しく、無所属でカードを持てる人間は限られているのだが、それを知るのはもう少し先の話だ。




 その後、少し街を散歩して回ってから宿に戻った秋山は、宿の娘のリカに仲直りのお土産に買っておいた甘いお菓子を渡して「明日は優しく起こしてね?」とお願いしておいた。隣で見ていたエリアさんは苦笑いをしていたが……

 ちなみに晩御飯はお任せで宿で食べる事にした。エリアさん特性肉野菜炒めだった。
 そう言えば、エリアさんの旦那さんを見たことが無いが……触れないでおこう






 さてと、明日は実践でもしようかな――



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