ELDERMAN(エルダーマン)

小鳥 遊(ことり ゆう)

エピソード6:衝突する意志

ロレンツォ・ヘジホッグス、彼はイタリアの裏社会を統べる「ギャング・ヘジホッグス」のリーダーで死の商人でもある。息のかかった人間はほとんど彼のカジノ組合『777(フロード)』のメンバーで彼らはロレンツォと共に武器商やカジノで儲けた金でついに国家をも乗っ取り、今のヴェネツィア帝国を築いた。表向きではロマノフ・ハミルとして合法カジノで大儲けした大富豪として有名である。なぜ彼が本名を名乗ったのか分からないがこの状況が相当まずいのは誰の目にも理解できた。
「俺が、本名名乗るってことはお前らわかってんだろうなぁ。それはここがおまえらの墓場ってことよ! お前らは日本から来た変なユーゲントってことは情報で聞いているんだよ!」
彼はマシンガンを取りだすといつの間にか周りにいた取り巻きたちも拳銃を取り出しこちらに向けてきている。彼らの乱暴な挨拶に豪たちも臨戦態勢になっていた。
「石動、変身するぞ!」
「指図するな。言われなくても、俺の邪魔をする奴はだれであっても!」
彼らはエルダーマンとシルバーボルトに変身して獅童も腰に実に着けていたハンドガンを取りだして彼らと共に応戦した。シルバーボルトの緋愚螺刺は前へと進みながら前方からの弾幕を払い避けながら周りの手下を薙ぎ払っていく。エルダーマンは少し後方で前へ行くシルバーボルトを後ろから狙う敵を拳で一人一人策敵していく。獅童は彼らの邪魔にだけならない程度に援護をしていた。彼自身はそれを不満には思ってはいなかったが心のどこかで強大な力を持つ彼らの戦いぶりに羨望があった。しかしそれを噛み殺したような苦悶の表情で手下を手負いながら倒していた。
「・・・ギャング・ヘジホッグスのゴッドファーザー、ロレンツォ。貴様はこの私シルバーボルトが直々に裁きを下してやる。」
「それはどうかな? 偉大なるお方が我々を勝利へと導くだろうさ。本物の”ゴッド”、神ってやつさね。」
彼の言葉にその場の空気がピタリと止まっているように感じていた。エルダーマンはロレンツォの方に振り向き、いつもの丸顔が少しこわばりながら彼の言葉の真意を聞いた。
「どういうことなんだ! 神ってまさか!?」
「俺の前にお前らに神の怒りを、鉄槌をくらわすためにほら、おいでなすった!!」
その言葉と共に轟音が鳴り響いて、いつの間にか硬そうな白い天井や壁は壊れ果てて大きな飛行物体がそこに存在していた。そこから伸び出ているアームは今まで端に隠れていたマルコをがっしりと掴んでいた。
「マルコ!! いま助けてやる!何が神だ、人質なんてせこいことしやがって!」
「おい、うかつだ西園寺!やめろ、相手がどんな敵かわからんのだ。」
『オロカナ。ワガ、サーターン、ゴウカノコウゲキ、トクト、クラウガイイ。(愚かな。我がサーターン、業火の攻撃、とくと食らうがいい!)』
その飛行物体からは轟音とも騒音ともとれる音は機械音で人間のことばを話していた。飛行物体の正面には球体があり、それには目のようなものが付いていた。その目は威圧があり、敵を探すようにぐるぐると回り続けている。
 ”サーターン”と名乗ったその飛行物体は地上数メートル地点で浮遊してエルダーマン達を蹂躙していった。それの武器の破壊力は今の地球上では考えることのできない熱量と威力であった。カジノ場付近は少し焼け野原のようで建物も熱でただれていた。獅童はそれに驚きを隠せないまま
「あんたの神さま、あんたの財産全部焼き払ったぞ?俺たちは何とか西園寺くんたちがいて助かったが、そっちの残りはあんたとその神様くらいじゃないのか?」
と困惑していたが、ロレンツォはその姿を鼻で笑いながら
「なに、構わんさ! どうせお前らはこのカジノを破壊するまで俺と戦っていたさ。それがこのサーターン様になっただけさ。このお方はすばらしい! 俺に地球外の武器を売る権利を与えた。怪人になる薬も提供してくれた。俺には最強の体を与えてくれた!見ろ!!」
ロレンツォは着ていた服を脱ぎ捨てるとその体は機械のような光沢感で包まれた彼の姿があった。
「サイボーグか。だが、一つ勘違いをしている。俺の緋愚螺刺に切れないものはない。」
シルバーボルトはサーターンの猛攻に臆さず、前に進んでいった。エルダーマンを追いかけながら彼はサイボーグへエルダーマンは引き続きあの飛行物体の懐に飛び込んだ。
 その時、一瞬アームの方から光が放ち始めた。そう、光の根源はマルコである。マルコは苦しんでいるような声をあげながら光を放っている。彼は何者かになろうとしている。
「僕はここから自由になるんだ!この手を ”ハ ナ セ”!!!」
同時に彼をがっしりと掴んでいたアームは彼を包んでいた光ごと吹き飛んでしまった。
 マルコの姿は以前と違い、エルダーマン達と似たような形となっていた。頭には虫の様な触覚、両目はT字で細く体の各部が不思議な紋章で覆われていて、少し光を帯びていた。
「僕を捕まえてみろこのデカ物!」
サーターンはそれに怒り狂ってもう一方のアームで捕まえようとするが彼のスピードは以上に早く光の様であった。
突然のマルコ覚醒に驚く西園寺一同であるが
「あの時の薬は本当に怪人覚醒剤だったのか!?」
ロレンツォだけは彼の経緯を知っていたので違う驚きがあったのだった。それを聞いていたシルバーボルトは刀を振りかざしながら
「貴様、あんな子供に実験をしていたのか?やはり、下衆はとことん下衆だな。もういい、自慢の不死の身体とおさらばしろ。」
<銀雷斬(ライトニング・アウト)>!!
ロレンツォは悲鳴をあげぬまま自慢の機械の身体も真っ二つになって無惨に横たわっていた。
サーターンとマルコの攻防戦は続いていたが一方に勝敗は決まらずに消耗戦となっていた。それに気づいたエルダーマンは
「マルコ、もうここらで引き揚げよう。奴は手負いだが手ごわ過ぎだ! っておい、聞いてんのか!?」
「日本人のあんちゃん、確か、ゴウだっけ。ありがたいけどこれは僕の問題だ。ボス亡き自由を奪った今、果たすべき復讐の対象はこいつになった。こいつがいなけりゃイタリアは腐敗しなかった!」
                そのとおりだ!
誰かの声が響き渡った。声を辿るとサーターンの上に人間が立っているように見えた。その人間はそこから飛び降り、エルダーマン達の焼けたカジノ場に見事着地しマルコを抱えて
「吾輩は君たち革命者に賛同するもの。よく聞きたまえ。ここは引き時、とりあえず君たち、仲間を連れて我が王国”スペイン”へと!労いは後だ。」
エルダーマン達は知らない人間に退陣を命令されたがここは疲労してまで戦うより彼の言うことを聞く方が利口であると思い、従った。マルコは戦線を離脱する彼らに憤ったが一人では何もできず、この屈強な男に抱えられ、故郷を後にすることになった。

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