ELDERMAN(エルダーマン)

小鳥 遊(ことり ゆう)

エピソード5:イタリア到着

聖歴2019年4月15日 22:22 西園寺、石動、獅童
テリトリー2 永世中立州・ユノ州(旧イタリア・ミラノ)に到着。
西園寺はまるで観光に来た少年のように
「イタリア来たー!! 初めての海外旅行だぜ!」
「おい、ユーゲントもどき。観光で来たんじゃないぞ。」
浮かれる西園寺を石動がたしなめるが
「お二人さん、どうやら喧嘩している場合じゃないですよ。」
獅童が指し示したのはイタリアのユーゲント二体だった。どうやら彼らは西園寺達を歓迎しにやって来た訳では無さそうである。彼らのうち、一体目は火を扱うユーゲント、二体目は西園寺が出会った光の輪の付いたユーゲントに似た形の者であった。
「おいおい、二体かよ。勘弁してくれよ。」
「くそ、ろくにお前と背中預けて戦ってないんだ。せいぜい、私の足を引っ張らないでくれよ。」
「こっちのセリフだよ!」
〈エルダー!!〉
西園寺はエルダーマンに、石動新はアーマーを即座に装着してシルバーボルトに変身した。シルバーボルトの鬼のような顔立ちが今日はより一層怒りが増していたように感じた。彼は楔かたびらのような装備をひらつかせながら火を扱うユーゲントの方にむかって行った。石動の持つ刀、緋愚螺刺は並大抵の刀ではない。これは比喩でも、石動の鍛練の成果とはまた別の固有の力であるように感じる。
「オレは火のユーゲントを、貴様はもうひとつの方をやれ。」
火のユーゲントに取りかかりながら指図した石動は他の場所へと向かった。
「いちいち指示すんな!ここは俺が一歩引いてやるけどな。」
光の輪のユーゲントまがいは物を言わずにエルダーマンの方へと高速で近づいて拳で語ろうとしていた。
すぐさまエルダーマンはよけて初めに一発頭にお見舞いした。
一方石動の方も西園寺とは違う機械的な四角い目をぎらつかせながら炎使いのユーゲントに切りつけた。
切れはするが切れば切るほど刃はもろくなっていく一方であった。
「さすがに稲妻では勝てないか・・・。だが、俺にはもう一つあるんでね。」
そういって彼は右手首にある腕輪のようなものを左手で回転させた。そうすると周りにとてつもない冷気が立ち込め、緋愚螺刺も凍りついてしまった。
「火には水より氷のほうが効果いいかもな。」
凍てついた剣先は炎を纏う化け物を切り落として行く。
「これで、終わりだ!」
角のような形をした突起が特徴的なシルバーボルトの顔がエルダーマンには一瞬本物の鬼のような顔に見えた。かく言うエルダーマンも最後に大技「赤閃拳」を繰り出すところだった。
  <<銀凍斬!!フローズンアウト!!>>
シルバーボルトは両手で剣を持ち、怪物にまたがり心臓部を刺した。
エルダーマンのフレアドライブも見事に決まり、一時静寂が訪れた。
「まったくもって、手厚い歓迎だな、まったく。君たちの化け物じみた力には嫌気がさすほど、うらやましいです。」
建物の物陰に隠れていた獅童が肩を撫でおろしながら二人に近づいてそのまま続けて
「さてと、とりあえずこの国の情報を集めないといけないな。どこか情報を集めるところはないのか?」
と頭を悩まし、ふらついていると、どこかから助け船が来た。
「何?おじさん達、観光かい? なんなら案内しようか?」
「観光じゃないんだ。あっち行って・・・」
「おい、待てよ。ここは嘘でも情報を集めないと。」
「ここでは私が隊長だと言ったはずでは?」
「隊長、確かに西園寺君の言う通り、相手は子供だが、ここは現地の人間に話を聞かないと・・・。」
大の大人の男三人で小さくまとまる姿は声をかけた少年でさえも滑稽に思えた。少年は少し呆れた顔をし、嫌味たらしく三人を指さしながら
「で、どうすんのさ。お・じ・さ・ん・た・ち!」
「ボウズ、ここらで怪人の情報を知ってる奴はいないか。」
少年は少し困惑した表情を浮かべたが、少ししてから思いだしたかのように
「とりあえず、うちのボスならこの国すべてを知り尽くしてるから。うちの店においでよ。案内するよ。」
石動はその言葉に心の中で、一体どんなボスなんだと思索したがそんなことより情報を提供する場所に行くことが先決するべきだと思い、彼の意見に賛同した。他の二人も石動に従った。
 ヴェネチアのきらびやかな観光街から細い裏路地をいくつか通り、とうとう周りの人間もどこか薄暗く、人を受け付けない印象になっていった。少年はとある廃墟ホテル前の階段を指さし、
「ここがボスのいる裏カジノさ。ボスにはもうある程度話はついているよ。向こうも君たちに興味があるらしいし。」
照明のない階段を下りていくと屈強な門番を通り、カジノを嗜むごろつきたちを横目で見ながらさらに奥へと進んでいく。奥には”VIP ROOM"と書かれたドアがあり、そこを開けると髭面で部屋にいるにもかかわらずおしゃれな帽子を被ったいかにもギャングのボスのような奴がふてぶてしく葉巻を吸いながら座っていた。
「お前さん達、こんなぁ店初めてかい? 情報を聞きに来たんだろ?それだったら俺に聞くのが一番手っ取り早い。」
ボスは西園寺一向に座るよう勧めた。彼らは彼の圧倒的オーラにそうせざるを得なかった。西園寺はここまで連れてきた少年の方に向き
「ここまで連れ来てくれてありがとな! えーと・・・」
「マルコ。マルコ・ロッソ・・・。」
ボスもそれに便乗して
「申し遅れた。ここのオーナーのロレンツォ・ヘジホッグス。諸君、よろしく頼むよ。」
だれもがその名を聞いた時、身が凍った。
                                     続く


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