ELDERMAN(エルダーマン)

小鳥 遊(ことり ゆう)

エピソード3:運命との出会い

 さかのぼること二時間前、西園寺豪は京都へと向かっていた。大きなエネルギー反応が京都に集中していたからだ。エルダーマンの変身時でも耐えることのできるよう改造した愛車のバイク『エルドロン号』に乗り、颯爽と県境を越えていく。その速さは人の乗るバイクではない早さで夜を欠けていった。
 「待ってろ。京都の人たち!」
京都に到着し、エネルギーの集中していた比叡山に向かった。そこには山間のふもとに大きな基地があり何やら戦闘の終わった後の様であった。
「何だここ? 俺の他に戦ってるやつがいるのか!?」
豪は初めての大きな基地と仲間の存在に興奮していた。しかし、そこには仲間と認識するものなど誰もいなかった。急に起こった戦闘で混乱したが、戦闘員相手に負けることはなかった。
「お前達、ティーガーの隊員だったのか!だったら俺は敵じゃないんだ!」
そんな弁明も受け答えてもらえず、大将の不意打ちで捕まってしまった。
ーーーーう、うぅ、・・・あれは、うちゅう? おれのなかでひかって・・・。ゆめ、をみているのか? ・・・やめてくれ、うばうな、そのひかりを、うばうな!!!----
「…何なんだ、今のは。俺は自分が思っているより、特別で、強大な力を持っているのかもしれない。」
辺りを見回し、ようやく自分が捕まってすぐ、この暗い牢屋に入れられたことがわかった。閉じ込められて特に何もできないのでゆっくり横にでもなろうかと思った矢先、
「おい、侵入者。ここに何の用だ。場合によってはここで死罪にしてもいいんだぞ。」
ものすごい剣幕で俺に脅迫めいた質問を投げかけた。俺は隠さずすべてを話していった。
「俺は西園寺豪。おそらく、おまえたちと同じように、東京を拠点として戦っていた者だ。エルダーマンって名前少しは聞いたことあるだろう?」
「知らん。戦うということはお前も何か能力を持っているのか?」
無言でうなずきながらも豪の額に冷や汗がスッと落ちていく。石動は何も言わず牢屋のカギをゆっくり開けて静かに話し始めた。
「出ろ。お前の言葉が真実かどうか、俺の剣で見極めてやる。戦えばその人間の生い立ちが理解できる。だが、俺はじゃまをする奴が嫌いなんだ。結局は死んでもらうかもな。」
豪は石動に言われるがまま彼の基地にある闘技練習場へと足を進めた。そこはがらんとしていて本当にさっきの戦闘員たちがいるのかが分からないほどであった。闘技場の砂埃のみが彼らを激しく、また、やさしく包み込む。
石動はおもむろに剣を抜き、変身して愛刀緋愚螺刺を構えながら、
「さあ、早くお前も”変身”して見せろ、ユーゲント。そして戦え。オレはユーゲントがたとえ元は同じであろうと嫌いなんだよ!」
「俺は戦いに来たんじゃない。できれば一緒にこの世界を守っていきたいんだ。頼む。俺の話を聞いてくれ。」
だが、豪の言葉は石動にはまったく届いておらず、問答無用で豪に切りかかろうとしていた。
「しょうがない。 -エルダー!!-」
拳と剣が激しく混じりあう。戦いの火花は激しくフィールド全体にわたって散っていた。
エルダーマンの拳がシルバーボルトの腹部を付く
しかし、剣筋の方が早くすぐ防御される。
シルバーボルトも虚をついて間合いに入るがエルダーマンのパワーに圧倒されていた。二人の戦いのは攻守入れ違いに激しく体力を消耗していく一方であった。
だが、シルバーボルトの剣が有利に働き、エルダーマンの防御を見事に崩し、猛攻を仕掛ける。
(ここで負ければ、あいつに復讐できない・・・。正義もクソもあるか! 俺の邪魔する奴はたとえ正義を掲げてるやつでも容赦しない!)
シルバーボルトの執念のような信念で豪にとどめをさそうとしていた。その時、豪が口を開いた。
「君の力なら、俺が戦った奴とも戦えるだろう。君の気が済むのなら俺は君の剣を信じて死ねる。その正義の力を無駄にはしないでくれ。」
「うるさい!正義もくそもあるもんか!俺は復讐しか考えてない。地位も名誉も捨ててでもオレはお前が邪魔するならここで望み通りたたき切ってやる!」
豪は殺される直前に自分自身のこれまで集めてデータファイルであるUSBを彼に見せて、
「ここには、今までの俺の戦闘データが入ってる。俺が負けたあの天使まがいの野郎はおそらく、おまえが戦った奴とエネルギー反応が似てるから繋がっているかもしれない。だからこのデータを使って解析すれば奴らの正体や目的が分かるかもしれない!もちろん、居場所も・・・。 信じているぞ。」
「馬鹿なのか? 俺は目的を果たせばそれでいいんだ。それ以上のことはしないかもしれないんだぞ。なぜそこまで俺を信じきるんだ?」
豪は気が抜けたように少し笑みを浮かべて核心をつくように
「フフッ・・・。君の眼が復讐だけで終わらない、奥底にある俺と同じ正義がある・・・からかな。」
その言葉に感銘を受けたのか、呆れたのかはわからないが、石動新は剣を納めた。閑静な戦いはあっけない形で終わりを迎えたのであった。石動は踵を返し、基地の方へと戻っていこうとしていた。その前に石動は豪の方に振り向き
「…ついてこい。お前には聞く価値のあることが山ほどありそうだ。西園寺豪。自分の名前は石動、石動新だ。」

彼のオフィスへと向かったが途中、何人かの隊員と出会い、そのたびに変な目で見られたり、犯罪者でも見るかのように覗いていた。彼のオフィスにはデータ化された世界地図があった。石動新は少し疲れぎみに座り込み、豪にも座るよう示唆した。
「そのデータとやらが正しいならお前はこの日本以外に奴らが現れる場所を知っているだろ?。奴らはこんなちんけな場所で無い、もっと大きなものを望んでいるはずだ。教えろ、どこだ。」
「ここだと思う。でも君が追っかけてる奴かどうかはわからないぞ。」
豪が指し示したのは、かつてイタリアと呼ばれていたヴェネチア帝国であった。
「やはりそのデータとお前の勘は当てになるかもな。いや、今はどんな情報でも奴に近づけるならそれでいい。」
石動は矢継ぎ早に
「とりあえず、ヴェネチア帝国に向かう。俺とお前、そしてヴェネチアまでの飛行をうちの獅童にやってもらう。」
といって彼の部屋の内線電話で獅童を呼び出した。その獅童は呼ばれたと同時に風のように飛び出し、駆けつけた。
「自分は獅童正義であります。階級は二等兵。飛行主任でフライトに自信があります。どうぞ大船に…いえ、ジャンボ機に乗ったつもりで安心して下さい。」
「獅童二等、うちにはヘリしかないだろ?」
「あなたの上官は冗談が通じないな。」
豪が獅童にニヤニヤしながら肩をポンポンと叩き、いい放った。石動はそれを知ってか知らずか、けたけた笑う二人をにらみつけていた。隊長室を後にして、隊員達全員をグリーフィングルームによんで
「これより、私とこいつらはヴェネチアへと活動を移す。留守の間は斉藤、お前が指揮を頼む。この先、ここで何があるかわからん。皆、心してかかれよ。」
こうして西園寺、石動、獅童の三人はヘリで遠くヨーロッパのヴェネチア帝国へと向かうのであった。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品