ELDERMAN(エルダーマン)

小鳥 遊(ことり ゆう)

エピソード2:衝突する正義

 時を同じくして、ここはかつて京都という西の都である。ここにはテリトリー4である日本を守るための関所テリトリーガードがある。そしてそこに駐在する人たちT.Ger(ティーガー)がおりそのリーダーとして若干二十歳という若手のエリート石動新が指揮を務めていた。今日も都市部でありながらユーゲントが出現しやすいこの場所で監視を続けていたのであった。
 団員の見回り部隊が帰ってきてそうそう皮肉な表情を浮かべながら
「ただいま戻りましたー。いやー平和平和。ここ数ヵ月なんもないと逆に暇なんですよねーなんか起こらないかなー?なんて(笑)」
と言うと石動は静かに、だが重々しく
「何もないということは我々がしっかりと抑止力になっている証拠だ。それは素直に受けとるべきだ。」
彼の一言一言はいつも隊員たちを鼓舞させたり、嗜めたりしている。そんな時、突如緊急警報がけたたましくなったのである。まわりにいたオペレーターや隊員がどよめきながらモニターに映るソナーの熱源を確認し合っていた。
「緊急!半径15m圏内に熱源体反応。ユーゲントのものと思われます。隊長、至急出撃命令を。」
即座に石動はオペレートルームから出て、それに続き副長の斉藤が風のように出て行った。
「一体どこから出たんだというんだ!見回り隊は何をしていたんだ!」
「隊長、お言葉ですが本当に見回りして、帰った時もなにも誰もいませんという報告でしたし、尾行もされていませんでしたし、されていたら内のだったら気づきますよ…。」
「…斉藤、一番隊を出す。お前たち二番隊は待機だ。 いいな。」
「了解」
 通達を終えた石動は第一カタパルトに向かう途中にある彼の部屋に行き、彼が愛用している刀<緋愚螺刺(ひぐらし)>を持ち、彼と彼の部下は石動が開発した対ユーゲント用の人体強化アーマーを身にまとってカタパルトハッチへと向かっていった。
石動新のアーマーは他と違いすこし凝ったデザインになっていてまるで鎧武者のようであることから-銀雷将ーシルバーボルトと名付けることにした。緋愚螺刺を抜刀すると雷のような力を纏っていて光っていた。カタパルトハッチ前に着いたシルバーボルトは刀を上げて
    「一番隊出るぞ! 俺につづけ!」
その掛け声とともに隊員たちは声を荒げて自分達を鼓舞していった。外へと出られるハッチを開けて出たところに「そいつ」はいた。姿形は女性のようで頭にはツインテールのような形の何かがある。身長は二メートル近い大きさであった。「彼女」は石動と何か因縁があるらしく、出会ってそうそう
「あら、ぼうやじゃない。おひさしぶり・・・。」
女性型ユーゲントは艶めかしく、ねっとりとした話し方で声をかけてきた。
石動は何も返答しなかった。
そして一瞬にして彼女の間合いに詰めよっていた。
彼のこころは怒りで我を忘れているようで隊員の引きとめる声もとどかずに剣を交えながら
「この時を待っていた。そう、お前がくるのをな!!!」
「うれしいわ。でもね、もうあなたには興味ないの。”偽物の”あなたにはね・・・」
「なにを・・・いっているんだ!」
激しい抗争のなか彼らは問答を繰り広げていた。彼らの戦場半径数十メートルは隊員一人が吹っ飛ばされるほどの威力の風圧が出ていた。
戦いは少しユーゲントの方に傾いていた。だが、彼にも必殺の剣技がある。雷の力を一気に放出しながら敵を一気にたたき切る大技それが・・・
ー銀雷斬ライトニングアウト!!!-
一瞬の隙であった。ユーゲントは間一髪で軽傷で済んでしまった。
「また、逢いましょう・・・」
そう言ってどこかへ消えてしまった。石動は悔しそうに空虚な空を見つめていた。
・・・
一方、ユーゲントを感知していたもう一人のヒーロー、西園寺豪がバイクで現場に着いたのはそのユーゲントが去ったあとであった・・・。西園寺は初めて見て去った敵、目の前の要塞、そして住んでいた渋谷よりましなこの都市を見てあっけにとられていてティーガーの基地だとも気づいていなかった。。石動もまたよくわからない珍客をみて動揺し、戦闘態勢に入った。
「誰だ貴様! さてはさっきな奴の手下か!?」
「とりあえず、確保して尋問だ。おとなしく捕まれよ!」
隊員たちは一斉に飛びかかったが西園寺はそれに応じるわけがなく
「よりによってティーガーのとこかよ。おい、おれはユーゲントの熱源をおって来、って・・・やめろ!話を聞け!」
といって蹴散らしてしまった。石動は即座に止めに入り西園寺の背後に回り込み刀の鞘の先で首をトンッと叩いて気絶させた。
「こいつ、ただものじゃない・・・。どこから来たんだ?何者なんだ一体?」
これは必然的な出会いだったのだろうか。彼らの戦いの運命はまだ始まったばかりである・・・

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