転生王子は何をする?
閑話 帰宅後の様子
「たっだいま〜!」
 ここ数年で1番良い気分で、レンバッハ邸に帰ってきたトリスは、いつもホルスと溜まり場にしている、1坪ほどの広さの部屋のドアを開ける。
「ありゃ?まだ帰ってないのか。じゃあ今のうちに、監視カメラを回収…?何か寒気が?」
 入口で立ち止まり、ブツブツと不穏な事を呟いていたトリスに、突如寒気が襲い掛かった。そのため、実に嫌な予感がし、恐る恐る振り返ると…。
「やぁトリス。ご機嫌だね。」
 まるで幽鬼の様に、鬼気迫る表情をしたホルスが立っていた。
「ひぃ!」
「ん?どうしたの?急に悲鳴なんかあげて。」
 トリスが悲鳴をあげて、反射的に目を閉じると、ホルスはいやに優しい声音で心配してくる。
「え、あ、何でもないよ?い、何時から居たんだ?」
「確かトリスが、『ありゃ?まだ帰ってないのか』と言った辺りかな?」
「そこ!?最初から居たんかい!?」
 何故か物凄く懐かしい気がする、ホルスとの掛け合いにノリノリなトリスは、先程感じた寒気と、呟いていた事を忘れてツッコミを入れる。
「でね、さっきトリスが言ってた、監視なんちゃらって何?何かを、もしくは誰かを監視するための道具だと思うんだけどさ。」
「あ。」
 何とも間抜けな声を出すトリス。どうやら浮かれ過ぎていたようだ。
「さ〜て、トリス。じっくり聞かせてもらおうじゃないか。」
 トリスの首根っこをむんずと掴み、そのまま部屋へと入って行く。
「ちょお!?これ、絶対バッドエンドだ〜!!」
 トリスの虚しい叫びを最後に、ドアは閉められるのだった。―fin.
 などという所で終わるわけも無く、その30分後、監視カメラを本来あるべき使い方で運用するという約定を交わし、無事生還を果たしたトリスは、仲良くその日起きた事について、意見交換をしていた。
「おぉ〜!!漸くくっ付いたんだ!!」
「そ、そんなに感心しなくても。」
 恐怖の折檻タイムの余韻か、若干引き攣った表情で照れるトリス。
「というかさ、俺ってホルスに漸くって言われるほど分かりやすく、先生に対して好意を態度に出てたか?」
「うん。」
 曇り無き笑顔で頷かれたトリスは、かつてないほどのショックを受ける。
「え〜、マジで?…具体的にはどの辺が?」
 分かりやすい自分がちょっと悔しかったトリスは、口を尖らせながら聞く。
「まず全体的に、トリスはマルティナ先生に対して、距離感が近かった点かな。他の女性とか女子なら、普通は絶対にあそこまで近付かせないもん。」
「う〜ん。確かに、そうかも。で、他は?」
 素直に答えたホルスに対して、まだ論破出来る範囲と判断したのか、更に考えを吐かせるようだ。
「後は、先生のスキンシップに対して、強い焦りを隠しきれていなかった点だね。」
「焦り?」
 「うん、焦り。普段のトリスなら、無表情ではね飛ばすであろうスキンシップを、マルティナ先生の場合は感情を顕にして、出来る範囲で本気を出して逃げようとしてたから。」
「にゃ〜るほど〜。」
 弁解の余地なしと、完全に諦めたトリス。冷静になって分析すると、ホルスの言う通りであるのが簡単に理解出来た。
 そして更に、ホルスは追い討ちをかけてくる。
「後は、マルティナ先生と話している時は、ちょっと声のトーンが高くなって、動悸も上がってたし、心做しか嬉しそうだったし。」
「や〜め〜て〜。冗談抜きで、俺のHPはゼロよ〜。」
 更に赤裸々に、自身の醜態を説明されたトリスは、あまりの恥ずかしさに悶える。
 だがそんなトリスに、トドメの一撃をくらわせるホルス。
「あ〜、そういえば、クラスの男子で、トリスとマルティナ先生は、いつ付き合うかって賭け事してたよ。ちなみに僕は、夏の長期休暇前に賭けてたから、儲かっちゃった!」
「なん…だと!?賭け事の対象になるレベルで分かりやすかったのか…。」
 自身の感情に気付いていなかったとはいえ、普通に接していたつもりだったトリスは、膝をついて項垂れる。
「いや〜、なんと言っても、今回の賭け事には、お金だけじゃなくて、予約が一年先まで埋まってるレッカーっていうレストランの、ディナーのペア招待券が5,6枚掛けられてるし、長期休暇前で賭けたのは僕だけだから、何回か一緒に食べに行けるね!」
 レッカーとは、50年以上前から続く老舗であり、ここ、学園都市エコールに来た王侯貴族は、必ず立ち寄るとさへ言われている、超有名高級店である。
 そんな高級店に行ける事になったホルスは、とびっきりの笑顔で、喜びを隠しきれない様子だ。
「むむ。…これは、チャンスだな。」
 嬉しそうなホルスには悪いが、トリスとしてはこんなチャンスを逃す理由は無い。
 先程、散々絞ってくれた事と、勝手に人の色恋を賭け事の対象にしたホルスに対し、意趣返しも兼ねている。
「ふふ…。」
 『美味しい料理が食べられる。』その事に夢中だったホルスは、怪しすぎるトリスの笑い声を、聴き逃してしまったのだった…。
 ここ数年で1番良い気分で、レンバッハ邸に帰ってきたトリスは、いつもホルスと溜まり場にしている、1坪ほどの広さの部屋のドアを開ける。
「ありゃ?まだ帰ってないのか。じゃあ今のうちに、監視カメラを回収…?何か寒気が?」
 入口で立ち止まり、ブツブツと不穏な事を呟いていたトリスに、突如寒気が襲い掛かった。そのため、実に嫌な予感がし、恐る恐る振り返ると…。
「やぁトリス。ご機嫌だね。」
 まるで幽鬼の様に、鬼気迫る表情をしたホルスが立っていた。
「ひぃ!」
「ん?どうしたの?急に悲鳴なんかあげて。」
 トリスが悲鳴をあげて、反射的に目を閉じると、ホルスはいやに優しい声音で心配してくる。
「え、あ、何でもないよ?い、何時から居たんだ?」
「確かトリスが、『ありゃ?まだ帰ってないのか』と言った辺りかな?」
「そこ!?最初から居たんかい!?」
 何故か物凄く懐かしい気がする、ホルスとの掛け合いにノリノリなトリスは、先程感じた寒気と、呟いていた事を忘れてツッコミを入れる。
「でね、さっきトリスが言ってた、監視なんちゃらって何?何かを、もしくは誰かを監視するための道具だと思うんだけどさ。」
「あ。」
 何とも間抜けな声を出すトリス。どうやら浮かれ過ぎていたようだ。
「さ〜て、トリス。じっくり聞かせてもらおうじゃないか。」
 トリスの首根っこをむんずと掴み、そのまま部屋へと入って行く。
「ちょお!?これ、絶対バッドエンドだ〜!!」
 トリスの虚しい叫びを最後に、ドアは閉められるのだった。―fin.
 などという所で終わるわけも無く、その30分後、監視カメラを本来あるべき使い方で運用するという約定を交わし、無事生還を果たしたトリスは、仲良くその日起きた事について、意見交換をしていた。
「おぉ〜!!漸くくっ付いたんだ!!」
「そ、そんなに感心しなくても。」
 恐怖の折檻タイムの余韻か、若干引き攣った表情で照れるトリス。
「というかさ、俺ってホルスに漸くって言われるほど分かりやすく、先生に対して好意を態度に出てたか?」
「うん。」
 曇り無き笑顔で頷かれたトリスは、かつてないほどのショックを受ける。
「え〜、マジで?…具体的にはどの辺が?」
 分かりやすい自分がちょっと悔しかったトリスは、口を尖らせながら聞く。
「まず全体的に、トリスはマルティナ先生に対して、距離感が近かった点かな。他の女性とか女子なら、普通は絶対にあそこまで近付かせないもん。」
「う〜ん。確かに、そうかも。で、他は?」
 素直に答えたホルスに対して、まだ論破出来る範囲と判断したのか、更に考えを吐かせるようだ。
「後は、先生のスキンシップに対して、強い焦りを隠しきれていなかった点だね。」
「焦り?」
 「うん、焦り。普段のトリスなら、無表情ではね飛ばすであろうスキンシップを、マルティナ先生の場合は感情を顕にして、出来る範囲で本気を出して逃げようとしてたから。」
「にゃ〜るほど〜。」
 弁解の余地なしと、完全に諦めたトリス。冷静になって分析すると、ホルスの言う通りであるのが簡単に理解出来た。
 そして更に、ホルスは追い討ちをかけてくる。
「後は、マルティナ先生と話している時は、ちょっと声のトーンが高くなって、動悸も上がってたし、心做しか嬉しそうだったし。」
「や〜め〜て〜。冗談抜きで、俺のHPはゼロよ〜。」
 更に赤裸々に、自身の醜態を説明されたトリスは、あまりの恥ずかしさに悶える。
 だがそんなトリスに、トドメの一撃をくらわせるホルス。
「あ〜、そういえば、クラスの男子で、トリスとマルティナ先生は、いつ付き合うかって賭け事してたよ。ちなみに僕は、夏の長期休暇前に賭けてたから、儲かっちゃった!」
「なん…だと!?賭け事の対象になるレベルで分かりやすかったのか…。」
 自身の感情に気付いていなかったとはいえ、普通に接していたつもりだったトリスは、膝をついて項垂れる。
「いや〜、なんと言っても、今回の賭け事には、お金だけじゃなくて、予約が一年先まで埋まってるレッカーっていうレストランの、ディナーのペア招待券が5,6枚掛けられてるし、長期休暇前で賭けたのは僕だけだから、何回か一緒に食べに行けるね!」
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 そんな高級店に行ける事になったホルスは、とびっきりの笑顔で、喜びを隠しきれない様子だ。
「むむ。…これは、チャンスだな。」
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コメント
決事
このまま更新続けてください……!
血迷ったトモ
久方振り過ぎる投稿なので、そ〜っと、皆さんに気付かれないように…。