転生王子は何をする?
第108話 学園モノといえば、やはり転校生ネタですね 6
「えっと、フロレンティーナ様。」
ホルスは真剣な表情で、フロレンティーナの目をしっかり見て手を取り、覚悟を決めようとする。
「はい、何でしょうか?あ、これからは私のことは、ティナとお呼びください。」
「え?あ、はい。ティナ…でいいですか?」
がしかし、フロレンティーナの思わぬ言葉に戸惑い、素直に聞き入れてしまう。
「はい。出来れば敬語も止めていただきたいですが、それは後々という事で。」
すると満足そうな表情をしたフロレンティーナ。
「え?は、はい。」
「ジー…。」
「わ、分かったよ。だからそんな目で見ないで。コホン。…ティナ。」
「はい、何でしょうか?」
腑抜けた顔をしていたホルスだったが、トリスの視線に気付き、慌てて予定通りの言葉を口に出そうと、再びフロレンティーナに目を合わせる。
「僕は、ティナのような綺麗な女性に、あの様に距離をつめらた事がなくて、とても緊張してしまうんだ。」
「はい。」
通常の女性なら、顔を真っ赤にしてしまいそうな言葉を、無表情で頷いて流すフロレンティーナ。
そんなフロレンティーナに手応えを全く感じないホルスは、トリスの計画に若干疑問を覚えるも、他に手がないので言葉を紡いでいく。
「ティナの息遣い、温もり、仄かに香るいい匂い。どれをとっても僕には刺激が強いんだ。だから、ここは1つ僕を助けると思って、席の距離を定位置まで戻してくれないかな?」
何とも生々しい表現に、流石のホルスも少し顔を朱に染めながら、それでも優しい笑顔を意識して、更に距離を詰めて言う。
「はい──」
「おぉ、ありがとう!」
フロレンティーナの言葉に、『ここまでした甲斐があったか!』と喜びを爆発させるホルス。しかし続く言葉でドン底に突き落とされる。
「──お断りします。」
「な…。」
「ズコーッ!」
ホルスは唖然、トリスは態々口に出しつつずっこけて居る。
これには周りで見守っている生徒達も口々に戸惑いを顕にしている。
「なんだと!?あのホルスト様の笑顔を、至近距離で回避した!?」
「嘘っ!?男でも落ちると言われている、ホルスト様の笑顔を!?」
「あの笑顔、守りたいわ…。」
「無表情で斬り捨てるお姉様!素敵だわ!」
…半数ほど趣味を優先した叫びだったが、それでもホルスの笑顔には一定の定評があるらしく、表情を変えないなど最早人間の所業では無かった。
-嘘だろ、おい!不意をつかれれば、枯れてる俺ですら驚くってのに、例えフロレンティーナが同性愛者であっても、見ようによっては可愛らしいとも天使とも表現出来るホルスの笑顔を、無表情で受け流すなど無理だろ!-
「ど、どどどどど、どうするよ!?」
「いや、トリス!噛みすぎだから!」
「…?」
慌てる2人を見て、小首を傾げるフロレンティーナ。
「!」
「え?急に目を見開いてどうしたの?」
今まで見た中で、最も綺麗で可愛いフロレンティーナがやれば赤面モノである筈なのに、それを見て何故か背筋に冷たいものが走り、言葉を失うトリス。
「トリス?お〜い?」
「…ん?あ、あぁ。ちょっとこっち来てくれない?内緒の話があるんだけど。」
「え?うん?」
放心状態のトリスを、ホルスは肩を揺さぶって現実世界に呼ぶ戻す。
するとトリスは最初は戸惑っていたが、すぐに真剣な顔付きになり、ホルスの肩に手を回しながら廊下に連れ出す。
「1つ、フロレンティーナ様について、仮説がある。」
廊下に出ると同時に、小声でトリスは話し始める。
「!どういう仮説?」
「おう、それはだな、さっきので確信したんだけど、彼女からは感情…いや、自意識が感じられない。」
トリスは言葉を選びつつ、なるべく正確な言い方になるように言葉を紡ぐ。
「?どういう意味?」
しかしあまり上手くホルスには伝わらなかったようで、小難しい顔で腕を組んでいる。
「う〜んと、つまり、彼女自身の意思で動いているように見えないって事。」
「そ、それはつまり、誰かに操られているって事?」
「あぁ。昔、何かの本で読んだんだけど、魔力は感情によって多少の波長の変化が見られる事があるらしいんだ。で、俺たちみたいな結構感覚の鋭い奴らだと、それを気配みたいに感じられるらしいんだ。」
事実、トリス達は冒険者として魔物を狩る際、殺気のようなものを感じ取って攻撃を躱したりする事が出来る。
「って事は、この間気配がイマイチ掴めなかったのは、それが原因って事?」
「多分な。で、自意識が無いって事は、誰かが操っているという事になる。それも大分時間をかけて暗示みたいに魔法をかけられたんだろうよ。」
眉を顰めながらトリスは言う。あまりいい気分では無いようだ。
「ん?どういう事?」
自意識が無いという事に気を取られていたホルスは、トリスの言葉の意味が分からなかったようで、聞き返してくる。
「自意識が無いのに、生活を常人のように、特に違和感なくこなせるんだ。よっぽど多くのパータンを最初から組み込んでおかなければ、そうはいかないだろ?」
「うん、そうだね。それはつまり、フロレンティーナ様が幼少の頃から魔法を使われていたという事を意味するよね?」
「あぁ。1、2年でどうにかなる代物ではなさそうだしな。」
「という事は、狙いは分からないけど、黒幕はフォルツ王国の上層部。若しくはソイツらに依頼された組織の仕業か…。」
「あぁ、そうなるな…。」
結論に至った2人の間に、重苦しい空気が流れるのだった。
ホルスは真剣な表情で、フロレンティーナの目をしっかり見て手を取り、覚悟を決めようとする。
「はい、何でしょうか?あ、これからは私のことは、ティナとお呼びください。」
「え?あ、はい。ティナ…でいいですか?」
がしかし、フロレンティーナの思わぬ言葉に戸惑い、素直に聞き入れてしまう。
「はい。出来れば敬語も止めていただきたいですが、それは後々という事で。」
すると満足そうな表情をしたフロレンティーナ。
「え?は、はい。」
「ジー…。」
「わ、分かったよ。だからそんな目で見ないで。コホン。…ティナ。」
「はい、何でしょうか?」
腑抜けた顔をしていたホルスだったが、トリスの視線に気付き、慌てて予定通りの言葉を口に出そうと、再びフロレンティーナに目を合わせる。
「僕は、ティナのような綺麗な女性に、あの様に距離をつめらた事がなくて、とても緊張してしまうんだ。」
「はい。」
通常の女性なら、顔を真っ赤にしてしまいそうな言葉を、無表情で頷いて流すフロレンティーナ。
そんなフロレンティーナに手応えを全く感じないホルスは、トリスの計画に若干疑問を覚えるも、他に手がないので言葉を紡いでいく。
「ティナの息遣い、温もり、仄かに香るいい匂い。どれをとっても僕には刺激が強いんだ。だから、ここは1つ僕を助けると思って、席の距離を定位置まで戻してくれないかな?」
何とも生々しい表現に、流石のホルスも少し顔を朱に染めながら、それでも優しい笑顔を意識して、更に距離を詰めて言う。
「はい──」
「おぉ、ありがとう!」
フロレンティーナの言葉に、『ここまでした甲斐があったか!』と喜びを爆発させるホルス。しかし続く言葉でドン底に突き落とされる。
「──お断りします。」
「な…。」
「ズコーッ!」
ホルスは唖然、トリスは態々口に出しつつずっこけて居る。
これには周りで見守っている生徒達も口々に戸惑いを顕にしている。
「なんだと!?あのホルスト様の笑顔を、至近距離で回避した!?」
「嘘っ!?男でも落ちると言われている、ホルスト様の笑顔を!?」
「あの笑顔、守りたいわ…。」
「無表情で斬り捨てるお姉様!素敵だわ!」
…半数ほど趣味を優先した叫びだったが、それでもホルスの笑顔には一定の定評があるらしく、表情を変えないなど最早人間の所業では無かった。
-嘘だろ、おい!不意をつかれれば、枯れてる俺ですら驚くってのに、例えフロレンティーナが同性愛者であっても、見ようによっては可愛らしいとも天使とも表現出来るホルスの笑顔を、無表情で受け流すなど無理だろ!-
「ど、どどどどど、どうするよ!?」
「いや、トリス!噛みすぎだから!」
「…?」
慌てる2人を見て、小首を傾げるフロレンティーナ。
「!」
「え?急に目を見開いてどうしたの?」
今まで見た中で、最も綺麗で可愛いフロレンティーナがやれば赤面モノである筈なのに、それを見て何故か背筋に冷たいものが走り、言葉を失うトリス。
「トリス?お〜い?」
「…ん?あ、あぁ。ちょっとこっち来てくれない?内緒の話があるんだけど。」
「え?うん?」
放心状態のトリスを、ホルスは肩を揺さぶって現実世界に呼ぶ戻す。
するとトリスは最初は戸惑っていたが、すぐに真剣な顔付きになり、ホルスの肩に手を回しながら廊下に連れ出す。
「1つ、フロレンティーナ様について、仮説がある。」
廊下に出ると同時に、小声でトリスは話し始める。
「!どういう仮説?」
「おう、それはだな、さっきので確信したんだけど、彼女からは感情…いや、自意識が感じられない。」
トリスは言葉を選びつつ、なるべく正確な言い方になるように言葉を紡ぐ。
「?どういう意味?」
しかしあまり上手くホルスには伝わらなかったようで、小難しい顔で腕を組んでいる。
「う〜んと、つまり、彼女自身の意思で動いているように見えないって事。」
「そ、それはつまり、誰かに操られているって事?」
「あぁ。昔、何かの本で読んだんだけど、魔力は感情によって多少の波長の変化が見られる事があるらしいんだ。で、俺たちみたいな結構感覚の鋭い奴らだと、それを気配みたいに感じられるらしいんだ。」
事実、トリス達は冒険者として魔物を狩る際、殺気のようなものを感じ取って攻撃を躱したりする事が出来る。
「って事は、この間気配がイマイチ掴めなかったのは、それが原因って事?」
「多分な。で、自意識が無いって事は、誰かが操っているという事になる。それも大分時間をかけて暗示みたいに魔法をかけられたんだろうよ。」
眉を顰めながらトリスは言う。あまりいい気分では無いようだ。
「ん?どういう事?」
自意識が無いという事に気を取られていたホルスは、トリスの言葉の意味が分からなかったようで、聞き返してくる。
「自意識が無いのに、生活を常人のように、特に違和感なくこなせるんだ。よっぽど多くのパータンを最初から組み込んでおかなければ、そうはいかないだろ?」
「うん、そうだね。それはつまり、フロレンティーナ様が幼少の頃から魔法を使われていたという事を意味するよね?」
「あぁ。1、2年でどうにかなる代物ではなさそうだしな。」
「という事は、狙いは分からないけど、黒幕はフォルツ王国の上層部。若しくはソイツらに依頼された組織の仕業か…。」
「あぁ、そうなるな…。」
結論に至った2人の間に、重苦しい空気が流れるのだった。
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