転生王子は何をする?

血迷ったトモ

第91話 教育の必要がありそうですね(物理的な)

入学式に出席していたお偉方の話が終わり、閉式となった後、いよいよトリス達のクラス発表の時間となった。今年の新入生は320名で、一クラス40名となるようだ。この人数は他の学校に比べて2倍近くの人数であり、いかにこの学園が人気校であるかを物語っている。
そんな大人数を、各クラスの担当の先生が壇上に出て、1人1人丁寧に名前を呼んでいくスタイルのようだ。

『では、まずはAクラスから発表します。』

そう言いながら壇上で名簿に目を通しているのは、例の行き遅れ…釣り合う相手が中々いない才女マルティナである。
そんなマルティナは一瞬トリスの方を見て、まるで獲物を狙う肉食獣のような目付きをしたが、すぐに名簿に目を戻す。

「ひっ。…嫌な予感が、ビシビシするわ。ワタクシ、マジで怖いっすよ。」

スキルの直感をステータスに入れていない筈なのに、何故か感じる確信とも言えるほどの悪い予感。そのため、滅茶苦茶な言葉遣いになりながらもトリスはその場から逃げ出そうとする体を必死に抑える。

「トリス?何か物凄く汗をかいてるよ?それに心做しか顔色も悪いし。」

「お、おう。多分大丈夫、うん。多分俺とホルスは、Aクラスで同じだから。多分リアさんとリタさんも同じだよ。けどローゼマリーさんは厳しそうだね。」

全然大丈夫そうではない受け答えをしながら、トリスは自分の予想をホルスに伝えていく。それを聞いたホルスは難しそうな顔をして、唸り始める。

「う〜ん、確かにね。流石に一クラスに上位3名を入れるのは、少し不自然だよね。やっぱり難しいかな。」

「ま、考えてても仕方ないし、今はマルティナ先生の言葉に耳を傾けてようぜ。」

「そうだね。」

トリスとホルスは、食い入るようにマルティナの話を聞く。

『―――ホルスト・ラ・レンバッハさん。―――トリスさん。――――――ローゼマリー・アルトナーさん。―――リタ・ベッセルさん。リア・ベッセルさん。以上40名が、Aクラスとなります。1年間よろしくお願いします。』

そう言って、マルティナは頭を下げて、壇上から去っていく。

「お、おおう…。マジか。」

「やった!皆同じクラスだね。」

予想外にも、上位3名を同じクラスにしてきたため、トリスは驚いて呟くが、隣でホルスは喜びを爆発させていた。

-ま、まぁ、皆纏まってくれた方がよりやりやすい・・・・・から良いか。-

トリスは戸惑いながらも、心の中でそう考える。
このようなクラス配置になったかというのは、トリス達の規格外さが要因となっている。規格外な連中は、纏めた方が問題の対処もしやすく、また少しでも顔見知りであるマルティナなら、幾分かは楽にコントロール出来ると考えたようだ。因みに、マルティナはトリス達の処遇についての職員会議で、自らこのクラスを受け持ちたいと志願し、他に適任と思えるような人物も居なかったために、そのまま全員一致で担当が認められたのだった。また、ローゼマリーも何故一緒なのかというと、常識人でえる彼女が2人と親しいという情報があったので、マルティナの指示に従って、トリス達をより問題を起こさせないための采配だ。
リアとリタは完全な偶然であるのだが。
こうしてトリスの考えうる限り、最高のクラス編成(担任は除く)で新学期は始まるを迎えるのだった。


と、思っていたのだが、そう上手くは事は運ばないようだ。

「と、トリス〜、助けて〜。」

「…。」

か細い声で助けを求めるホルスに、憐憫の眼差しと諦めろという意味合いを込めてサムズアップを贈ってやる。

「トリス?誰なんですか、その人は?」

「あ、若しかして彼処の黒髪のイケメン君?」

「何処の貴族家の方なんですか?」

ホルスを取り囲んで、壁を成している連中が問うてくる。
現在トリス達はクラスの教室に居るのだが、物の見事にホルスが取り囲まれて、トリスは完全に蚊帳の外状態になっているのだった。

「い、いや、トリスは貴族じゃなくて、平民だよ。僕の親友なんだ。」

-実は王族だけどね。-

トリスが心の中で茶々を入れる。が、口に出していないため、取り囲んでいるクラスメイトは、口々に好き勝手言う。

「えぇ?平民?」

「若しかして、彼に利用されてるか、脅されてるかしてるのでは?」

「そうよ、そうよ!でなければ平民と友人だなんて。」

-あれ?若しかして、俺って今大分敵意向けられてる?-

ギロっと周囲から視線が向けられ、トリスは呑気にも涼しい笑みを浮かべながらそう考える。まぁ、予想していた事であるため、別に驚きはしないのだが。世間一般的にいえば、平民であるのに普通に接する、ホルスやローゼマリーがおかしいのだ。

「そ、そんな事は無いよ!ねぇ、トリス!」

「ん?俺はそうだと思ってるけど。ま、信じるか信じないかはあなた次第ですってやつだね。」

涼しい笑みのまま、トリスは肩を竦めてそう答える。しかしその態度は火に油を注ぐ行為であったようだ。
周囲から殺気が殺到する中、トリスは静かに考えのだった。『これはお話・・が必要だな』と。

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