転生王子は何をする?
第54話 学園都市到着!
トリスがレンバッハ家に世話になる事が決定してから数時間後、日も傾き始めた頃に漸く学園都市エコールへと到着した。
ここエコールは、王都の2倍程度の敷地に大小様々な学校があり、多くの貴族の子弟が集まる地である。またその中でも特に王立トゥール学園は名前の通り王族も利用する格式高い学園であり、多少の腐敗は見られるものの高い実力と実績を誇る。
「いや〜、漸く着いたな〜。…今更だけど、歩きでここまで来ようとしていた自分がアホらしい。」
「う〜ん、確かに歩きで来る距離では無いよね?」
「トリスさんはどこ出身なのですか?」
いきなりの自分を探る様な質問に、トリスは冷や汗をかきながら、自身の設定を思い出して答える。
「王都近くの村ですよ。」
「「そんな場所から歩きで…。」」
すると2人は上手く騙されたようで、可哀想な子を見る目でトリスを見てくる。
「ま、まぁそれよりも、ホルスト。俺はこのまま馬車に乗って門を素通りでいいのか?」
この世界では、通常街に入る際は身分証の提示が求められる。しかし貴族の馬車を止めてまで、その中に乗っている人を確認するかといえばそうでもない。これが貴族達の間で行われている違法奴隷の所持を許す原因となっているのだが、それは兎も角トリスは平民であるのに(そういう設定)門を素通りしているのだ。
「う〜ん、いいんじゃない?というかトリスの身分は僕が保証するから大丈夫だよ。」
「う〜ん、まぁホルストがそう言うならアテにさせてもらうよ。」
いざとなれば『この紋章が目に入らんか!』風に奥の手を使えばいいだけの事なので、ここはホルストに任せる事にする。
「ところで盗賊はどうしたんだ?」
最初のホルスト一行を襲っていた盗賊と、ローゼマリー一行を襲っていた盗賊のうち生き残りは、一つの馬車に詰め込んで運んでいた。
途中通り過ぎた村に馬車があれば買ったのだが、生憎と見つからなかったためにマルセルをはじめとする付き人の方々は騎士達の馬に二人乗りの形でここまで来ていたのだ。
「門を入ってすぐのところに、近衛兵の詰所があるから、そこで下ろしたと思うよ。」
「えぇ。恐らく2日後までには情報を引き出した後、処刑されると思います。」
「あ〜、処刑ですか。」
処刑という言葉に馬車の中の空気は微妙な感じになる。
この世界で盗賊の処刑方法は、『見せしめ』の意味も含めて大変に残酷な目に合わされる。
別に盗賊達に肩入れするつもりは無いが、捕縛された者よりも、その場で殺されている者達の方がよっぽど幸せであっただろう。
「ローゼマリー様。到着いたしました。」
微妙な空気を読んだかのように丁度タイミング良く、ローゼマリーの屋敷に到着したようで、外からマルセルの声がかけられる。
そして馬車が停車し、扉が開かれるとそこは門扉から屋敷まで数百メートルはありそうなほど広大な敷地を持つ屋敷であった。
「この光景を改めて見ると、ローゼマリーさんが伯爵家のご令嬢っていうことを深く実感するな〜。俺とは住んでる世界がまるで違うよ。もはや妬み僻みを感じる余地すら無いね。」
「い、いやですわ。それに、ホルスト様の屋敷の方がもっも広いですよ?」
ローゼマリーはトリスの言葉に、照れながらも言う。
「あ〜、確かに。ホルストは更に上の侯爵家のお坊ちゃんだからな〜。というかこれより広いって、想像もつかないよ。」
トリスはローゼマリーの言葉に呆れながらも納得と頷く。
「ローゼマリー様?どうかなさいましたか?」
ホルストがトリスの言葉に口を開こうとした時、マルセルが再び呼びかけてきたので、セリフを中断してマクシーネを送り出す。
「…コホン。では、また近いうちに会いましょう、マリー。」
「はい、ホルスト様。」
「う〜ん。そのホルスト様ってやめない?出来ればマリーにはホルスって呼んでほしいんだけど。」
「え、えっと、それって…。」
どうやらローゼマリーの脳内では『ホルスって呼んでもらいたい→愛称で呼んでほしい→愛称は親しい者しか呼ばない→自分と親しくなりたい→将来的には婚約』というような変換が行われたらしく、真っ赤になってしまった。
しかし、次の言葉で一気に落とされる。
「良い機会だから、トリスにも愛称のホルスって呼んでもらってもいいかな?」
「え…。」
一瞬でこの世の終わりのような雰囲気を醸し出すローゼマリー。
上げて落とすホルストの手腕に、トリスは戦慄しつつも了承する。
「お、おう。んじゃあ今後はホルスって呼ぶから。ほ、ほらローゼマリーさんも。」
「…はい。ホルス。また近いうちにお会いしましょう。トリスさんも。」
落ち込んだ様子でマクシーネは馬車の外に出ようとする。だがそんな様子に気付かないホルスは、呑気に手を振っている。
「うん、またね。」
「げ、元気出してください。」
ホルスの称号の鈍感の実力に引きながら、トリスは月並みの言葉しかかけることが出来ないのであった。
ここエコールは、王都の2倍程度の敷地に大小様々な学校があり、多くの貴族の子弟が集まる地である。またその中でも特に王立トゥール学園は名前の通り王族も利用する格式高い学園であり、多少の腐敗は見られるものの高い実力と実績を誇る。
「いや〜、漸く着いたな〜。…今更だけど、歩きでここまで来ようとしていた自分がアホらしい。」
「う〜ん、確かに歩きで来る距離では無いよね?」
「トリスさんはどこ出身なのですか?」
いきなりの自分を探る様な質問に、トリスは冷や汗をかきながら、自身の設定を思い出して答える。
「王都近くの村ですよ。」
「「そんな場所から歩きで…。」」
すると2人は上手く騙されたようで、可哀想な子を見る目でトリスを見てくる。
「ま、まぁそれよりも、ホルスト。俺はこのまま馬車に乗って門を素通りでいいのか?」
この世界では、通常街に入る際は身分証の提示が求められる。しかし貴族の馬車を止めてまで、その中に乗っている人を確認するかといえばそうでもない。これが貴族達の間で行われている違法奴隷の所持を許す原因となっているのだが、それは兎も角トリスは平民であるのに(そういう設定)門を素通りしているのだ。
「う〜ん、いいんじゃない?というかトリスの身分は僕が保証するから大丈夫だよ。」
「う〜ん、まぁホルストがそう言うならアテにさせてもらうよ。」
いざとなれば『この紋章が目に入らんか!』風に奥の手を使えばいいだけの事なので、ここはホルストに任せる事にする。
「ところで盗賊はどうしたんだ?」
最初のホルスト一行を襲っていた盗賊と、ローゼマリー一行を襲っていた盗賊のうち生き残りは、一つの馬車に詰め込んで運んでいた。
途中通り過ぎた村に馬車があれば買ったのだが、生憎と見つからなかったためにマルセルをはじめとする付き人の方々は騎士達の馬に二人乗りの形でここまで来ていたのだ。
「門を入ってすぐのところに、近衛兵の詰所があるから、そこで下ろしたと思うよ。」
「えぇ。恐らく2日後までには情報を引き出した後、処刑されると思います。」
「あ〜、処刑ですか。」
処刑という言葉に馬車の中の空気は微妙な感じになる。
この世界で盗賊の処刑方法は、『見せしめ』の意味も含めて大変に残酷な目に合わされる。
別に盗賊達に肩入れするつもりは無いが、捕縛された者よりも、その場で殺されている者達の方がよっぽど幸せであっただろう。
「ローゼマリー様。到着いたしました。」
微妙な空気を読んだかのように丁度タイミング良く、ローゼマリーの屋敷に到着したようで、外からマルセルの声がかけられる。
そして馬車が停車し、扉が開かれるとそこは門扉から屋敷まで数百メートルはありそうなほど広大な敷地を持つ屋敷であった。
「この光景を改めて見ると、ローゼマリーさんが伯爵家のご令嬢っていうことを深く実感するな〜。俺とは住んでる世界がまるで違うよ。もはや妬み僻みを感じる余地すら無いね。」
「い、いやですわ。それに、ホルスト様の屋敷の方がもっも広いですよ?」
ローゼマリーはトリスの言葉に、照れながらも言う。
「あ〜、確かに。ホルストは更に上の侯爵家のお坊ちゃんだからな〜。というかこれより広いって、想像もつかないよ。」
トリスはローゼマリーの言葉に呆れながらも納得と頷く。
「ローゼマリー様?どうかなさいましたか?」
ホルストがトリスの言葉に口を開こうとした時、マルセルが再び呼びかけてきたので、セリフを中断してマクシーネを送り出す。
「…コホン。では、また近いうちに会いましょう、マリー。」
「はい、ホルスト様。」
「う〜ん。そのホルスト様ってやめない?出来ればマリーにはホルスって呼んでほしいんだけど。」
「え、えっと、それって…。」
どうやらローゼマリーの脳内では『ホルスって呼んでもらいたい→愛称で呼んでほしい→愛称は親しい者しか呼ばない→自分と親しくなりたい→将来的には婚約』というような変換が行われたらしく、真っ赤になってしまった。
しかし、次の言葉で一気に落とされる。
「良い機会だから、トリスにも愛称のホルスって呼んでもらってもいいかな?」
「え…。」
一瞬でこの世の終わりのような雰囲気を醸し出すローゼマリー。
上げて落とすホルストの手腕に、トリスは戦慄しつつも了承する。
「お、おう。んじゃあ今後はホルスって呼ぶから。ほ、ほらローゼマリーさんも。」
「…はい。ホルス。また近いうちにお会いしましょう。トリスさんも。」
落ち込んだ様子でマクシーネは馬車の外に出ようとする。だがそんな様子に気付かないホルスは、呑気に手を振っている。
「うん、またね。」
「げ、元気出してください。」
ホルスの称号の鈍感の実力に引きながら、トリスは月並みの言葉しかかけることが出来ないのであった。
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