転生王子は何をする?
第47話 旅立ちの時
あの歴史的大勝利からはや10年、トゥール王国第3王子のトリスタン・ラ・トゥールは独り立ちの時を迎えようとしていた。
「今までお世話になりました!…とはいっても数ヶ月に一度は戻ってくる予定ですけど。」
トリス達は現在、王城の裏口に居る。早朝のため周りには人は見えない。そこでささやかながらもメンバーは豪華な見送りが行われていた。
「ふふ、そうね。それにしてもあのトリスがもう15歳だなんて、時が経つのは早いものね。あ、これを持っていってね。」
「ありがとうございます。」
 母であり王妃のフランセットは朗らかに笑いながら、王家の紋章が刻まれた指輪を手渡す。彼女は、今年でもう40近いというのに昔と全く変わらず、20代前半と言われても余裕で信じられるほどだ。
「うむ、そうだな。トリス、自身の選択に悔いの残らないよう、精一杯頑張ってくれ。」
「はい。」
父であり王のオウギュストは涙ぐみながら言う。本人はそれを必死に隠しているつもりだが、声が震えていて全く隠せていない。どうやら大分親バカのようだ。
そんな父にトリスは苦笑しつつ返事をする。
「ベルとクリフは、急な公務で見送れなくて残念だわ。」
「まぁ、今生の別れというわけでもありませんし、またいつか会える時もありますよ。」
「お前は案外ドライなんだな。」
アリアーヌはトリスの言葉に呆れながら返す。
ここ数年で最も変化が無かったのは彼女であろう。何しろエルフであり、もう肉体的には成熟しているのだから。残念ながら男旱というのも変わってはいないのだが。
逆に最も変わったのはトリスであり、身長は175程になり、体格は痩せすぎもせず太ってもいない絶妙なバランスを保っている。顔付きは幼い頃からフランセットに似ていたが、今でも女性っぽい印象を受けるまぁまぁな美少年となった。
その後も少々雑談をし、一旦区切りのついたところでトリスはそろそろ旅立つことを告げる。
「よし。そろそろ行きます。」
「気をつけろよ。」
「頑張ってね。」
「私に何か面白い話を持ってきてくれよな。」
アリアーヌの言葉にクスリと笑いながら、トリスは彼女たちを背に王城の外へと出る。途中出る寸前に振り返り、手を大き振ってからそこからは一気に城壁の方へと向かう。
「…ふぅ。一応騎士達の目に留まるように、普通に門から出るか。」
トリスの顔を知っている者対策として、フード付きのローブを着ているのだが、端からのぞく黒髪は誤魔化せず、珍しいため印象に残ってしまう可能性があった。それにいきなり王都内で消息不明になれば、アリアーヌ達に迷惑をかけるのは明白である。そうならない為には一定程度は人の目に留まっていなければならないのだ。
「そこの者、フードをとってこちらに顔を見せてくれ。」
まだ朝5時であるため出入口は混んでいなかったため、速攻通り抜けようとしたが騎士に止められてしまう。
仕方なしにトリスは顔を見せる。
「これで大丈夫ですか?」
「ふむ。黒髪黒目か。見かけない顔だが、何処から来たのだ?」
騎士は純粋にトリスの出身地が気になったようで質問してくる。
「え〜っと、王都出身なんですが…。」
「ほう、そうか。外に何の用なんだ?」
「旅に出ようかと思ってるんですが…。」
トリスの言葉に騎士は眉を顰める。
「旅?手ぶらでか?」
「アテムボックス持ちですので。値は張りますが、便利でいいですよ?」
アイテムボックスは、収納をバッグ状の物に付与した魔道具である。王金貨5〜6枚が相場であり、日本円にして約600万円ほどだ。
このように非常に高いのだが、良いものであれば一戸建ての家ほどの収容量に、時間停止機能なども備えている事もある。しかしその希少性から多くの者に狙われるので、あまり大っぴらに使う事は避けるべきであると言われている。
「アイテムボックス!アンタ若いのに凄いな!」
「いえ、父のお下がりですよ。それよりも、そろそろ行きますけどいいですか?」
「お、おう。引き止めて悪かったな。気を付けろよ。」
「はい、ありがとうございます。」
こうしてトリスは無事王都の外まで出る。しかし10年前に何処ぞの規格外がどでかい壁を建てたので周りの様子は見えない。
トリスは壁に空いた、横幅が馬車2つ分ほどの広さの穴から外に出る。
「すぅ〜、はぁ〜。」
早朝独特の空気を一気に吸い込んでから吐き出す。
門から続く道の先には、トリスよりも先に出ている旅人や冒険者がちらほら見られる。流石に人目のある場所で堂々と転移する訳にはいかないので、ある程度進んでから岩陰に隠れて、自身の様子を見る者が居ないのを確認してから魔法を使う。
「よし、『転移』。」
こうしてトリスは目的地まで瞬間的に移動するのだった。
「今までお世話になりました!…とはいっても数ヶ月に一度は戻ってくる予定ですけど。」
トリス達は現在、王城の裏口に居る。早朝のため周りには人は見えない。そこでささやかながらもメンバーは豪華な見送りが行われていた。
「ふふ、そうね。それにしてもあのトリスがもう15歳だなんて、時が経つのは早いものね。あ、これを持っていってね。」
「ありがとうございます。」
 母であり王妃のフランセットは朗らかに笑いながら、王家の紋章が刻まれた指輪を手渡す。彼女は、今年でもう40近いというのに昔と全く変わらず、20代前半と言われても余裕で信じられるほどだ。
「うむ、そうだな。トリス、自身の選択に悔いの残らないよう、精一杯頑張ってくれ。」
「はい。」
父であり王のオウギュストは涙ぐみながら言う。本人はそれを必死に隠しているつもりだが、声が震えていて全く隠せていない。どうやら大分親バカのようだ。
そんな父にトリスは苦笑しつつ返事をする。
「ベルとクリフは、急な公務で見送れなくて残念だわ。」
「まぁ、今生の別れというわけでもありませんし、またいつか会える時もありますよ。」
「お前は案外ドライなんだな。」
アリアーヌはトリスの言葉に呆れながら返す。
ここ数年で最も変化が無かったのは彼女であろう。何しろエルフであり、もう肉体的には成熟しているのだから。残念ながら男旱というのも変わってはいないのだが。
逆に最も変わったのはトリスであり、身長は175程になり、体格は痩せすぎもせず太ってもいない絶妙なバランスを保っている。顔付きは幼い頃からフランセットに似ていたが、今でも女性っぽい印象を受けるまぁまぁな美少年となった。
その後も少々雑談をし、一旦区切りのついたところでトリスはそろそろ旅立つことを告げる。
「よし。そろそろ行きます。」
「気をつけろよ。」
「頑張ってね。」
「私に何か面白い話を持ってきてくれよな。」
アリアーヌの言葉にクスリと笑いながら、トリスは彼女たちを背に王城の外へと出る。途中出る寸前に振り返り、手を大き振ってからそこからは一気に城壁の方へと向かう。
「…ふぅ。一応騎士達の目に留まるように、普通に門から出るか。」
トリスの顔を知っている者対策として、フード付きのローブを着ているのだが、端からのぞく黒髪は誤魔化せず、珍しいため印象に残ってしまう可能性があった。それにいきなり王都内で消息不明になれば、アリアーヌ達に迷惑をかけるのは明白である。そうならない為には一定程度は人の目に留まっていなければならないのだ。
「そこの者、フードをとってこちらに顔を見せてくれ。」
まだ朝5時であるため出入口は混んでいなかったため、速攻通り抜けようとしたが騎士に止められてしまう。
仕方なしにトリスは顔を見せる。
「これで大丈夫ですか?」
「ふむ。黒髪黒目か。見かけない顔だが、何処から来たのだ?」
騎士は純粋にトリスの出身地が気になったようで質問してくる。
「え〜っと、王都出身なんですが…。」
「ほう、そうか。外に何の用なんだ?」
「旅に出ようかと思ってるんですが…。」
トリスの言葉に騎士は眉を顰める。
「旅?手ぶらでか?」
「アテムボックス持ちですので。値は張りますが、便利でいいですよ?」
アイテムボックスは、収納をバッグ状の物に付与した魔道具である。王金貨5〜6枚が相場であり、日本円にして約600万円ほどだ。
このように非常に高いのだが、良いものであれば一戸建ての家ほどの収容量に、時間停止機能なども備えている事もある。しかしその希少性から多くの者に狙われるので、あまり大っぴらに使う事は避けるべきであると言われている。
「アイテムボックス!アンタ若いのに凄いな!」
「いえ、父のお下がりですよ。それよりも、そろそろ行きますけどいいですか?」
「お、おう。引き止めて悪かったな。気を付けろよ。」
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