転生王子は何をする?
第46話 穴があったら入りたいです
油断し、魔族の攻撃を受けて死亡する者や重症に陥る者も居たが、魔族の侵攻された割には犠牲者が圧倒的に少なく幕を下ろした。というか歴史上快挙とされるレベルでの圧倒的勝利である。
魔族の殲滅から数時間後、王都の中に居た人々の多くはこの圧倒的勝利に未だ信じられないでいた。それはあまりに早すぎるからである。しかしそういった者には、魔族の殲滅に参加していた騎士や魔導師、冒険者からこう言われるのだ。
『規格外の魔法使いが王都を囲む壁を築き、更にその上空に結界を張って魔族の侵入を防いだ。しかも魔族の殆どはその魔法使いが殲滅していた』と。
その話を聞いた人々は、王都の城壁の外へと出て高い壁を見上げて納得して帰るというのを繰り返していた。
『いや〜、上手くいって良かったですよ。』
『あぁ、そうだな。トリスには感謝の念しかいだかないよ。本当にありがとう。』
アリアーヌと対話により会話しているトリスは、その真っ直ぐな感謝の言葉に照れつつも言葉を返す。
『い、いえ。別に俺はただ自分のやりたいようにやっただけですから。』
『ふ、そうか。しかしこの混乱はどうにかせねばならんな。』
『あ〜、確かにそうですね。父に言って、演説でもしてもらえばいいんじゃないですか?やっぱりこういう時はトップが言葉をかけることによって幾らか落ち着くんじゃないですかね?後は1つの物に集中させるような事をして、皆の気をそっちに引き付けるとか?』
トリスの呑気な言葉に、アリアーヌは思考の海に潜る。
『ふむ…。』
『え?冗談ですよ?というか何か嫌な予感がするんですけど。』
妙な悪寒に襲われたトリスは、アリアーヌを必死に思考の海からサルベージしようとするが無駄であったようだ。
『よし、決めた!』
『何を?』とトリスが質問する前に、アリアーヌは対話を切ってしまう。トリスは口をあけたまま暫く呆然とするのだった。
1時間後、国民の大多数は王城前に集まっていた。何故なら王城からの使いの騎士が、今回の件について王からの御言葉があると触れて回ったからだ。その報せは当然、街中に居たトリスも知る事となり、気配を隠しつつその場に現れる。
少しすると騎士達が現れて、静粛にするように呼びかける。人々が静かにしたのを見てから、王城前からでも見えるバルコニーにオウギュストが登場する。すると人々は一斉に跪く。
「面をあげよ。」
魔法で拡声しているのか、その声は集まっている人々にはっきりと届く。指示に従い顔を上げた人々を見てからオウギュストは演説を始める。
「此度は、我の呼びかけに応え、集まってくれた事を感謝する。魔族の侵攻は、現時点を以て我オウギュスト・ラ・トゥールの名において終わりを宣言する。」
オウギュストの宣言により、人々が戦いの終わりをはっきりと実感し、その実感は喜びへと変わってゆく。
『ウォォォォ!!』
その歓声は数十秒続いたが、騎士達の呼びかけでどうにか収まる。
そして再びオウギュストの演説が始まる。今回の魔族の侵攻について、何故2方向から同時に攻めてきたのかや、どのように侵攻を止めたのかを説明を行う。そしてその説明に出てくる謎の魔法使いについての疑問が人々の中で大きく膨らむ中、オウギュストは更に火に油を注ぐような事をする。
「──という訳で、此度の戦いの勝利は、この魔法使いの功績によるところが大きい。その者の名はBランク冒険者のトリスである。奇しくも我が国の第3王子の愛称と同じではあるが、この者は今までまったくの無名であった平民である。」
無名の冒険者が常識外れな活躍をした事に、人々のざわめきは大きくなる。
しかしその当のトリスは絶賛混乱中であった。
-え?Bランク?あの試験ってCランクまでしか上がらないんじゃ?というかこの流れはマズいんとちゃう?-
似非関西弁が出るほど焦ったトリスは、続くオウギュストの演説を見守ることしか出来ないでいる。
「この功績を以て、我はこの者をSSランク冒険者に推薦する。また、王国から謝礼として褒美を下賜したいと考えている。そのため冒険者トリスは、明後日の昼頃に王城へ来られよ。」
一気に2つもランクをとばして、最高ランクとなったトリスに、人々は驚きの声を上げてしまう。というか驚きのあまり、口をあけたまま声が出せないでいる者も居たほどだ。
だが驚きから回復した人々は、口々にトリスは賞賛する。
「スゲーよ。今まで平民でSSランク冒険者になった奴なんて、数える程しか居ないだろ!」
「あぁ!外に出来た壁はトリスっていう冒険者がやったんだよな!?」
「本当に凄すぎて、次元が違うとしか思えねぇよな!」
「ふふふ…。籠絡…。玉の輿…。一生安泰…。」
若干1名危ない者が居たが、概ね人々に好意的に受け入れられたトリス。しかしトリスにとってはある意味危険な流れであった。
「おい!トリスっていう冒険者に二つ名つけようぜ!」
「お!いいなそれ!」
「何かいい案は無いか?」
「あれだけでっかい壁が作れるんだから、それに因んだ二つ名がいいよな?」
「なら鉄壁は外せないんじゃないか?」
-え〜。マジで恥ずかしいから止めてくれ〜!-
今すぐその会話を止めたいが、ここで姿を現せば明らかに大変な事になるのは、火を見るより確かであったので聞き役に徹するトリス。
「よし!鉄壁の魔法使いって事で大賢者もつけて、『鉄壁の大賢者』でいいんじゃないか?」
「お!それいいな!これからは鉄壁の大賢者トリスだ!」
『鉄壁〜!鉄壁〜!鉄壁〜!』
何故か始まってしまった鉄壁コールに、トリスは耐え切れなくなりその場を転移であとにする。
その日の祝の場では、トリスの話題は尽きなかったようで、翌日には国民のほぼ全員がその名前を知るところとなった。恥ずかしい二つ名と共に…。
魔族の殲滅から数時間後、王都の中に居た人々の多くはこの圧倒的勝利に未だ信じられないでいた。それはあまりに早すぎるからである。しかしそういった者には、魔族の殲滅に参加していた騎士や魔導師、冒険者からこう言われるのだ。
『規格外の魔法使いが王都を囲む壁を築き、更にその上空に結界を張って魔族の侵入を防いだ。しかも魔族の殆どはその魔法使いが殲滅していた』と。
その話を聞いた人々は、王都の城壁の外へと出て高い壁を見上げて納得して帰るというのを繰り返していた。
『いや〜、上手くいって良かったですよ。』
『あぁ、そうだな。トリスには感謝の念しかいだかないよ。本当にありがとう。』
アリアーヌと対話により会話しているトリスは、その真っ直ぐな感謝の言葉に照れつつも言葉を返す。
『い、いえ。別に俺はただ自分のやりたいようにやっただけですから。』
『ふ、そうか。しかしこの混乱はどうにかせねばならんな。』
『あ〜、確かにそうですね。父に言って、演説でもしてもらえばいいんじゃないですか?やっぱりこういう時はトップが言葉をかけることによって幾らか落ち着くんじゃないですかね?後は1つの物に集中させるような事をして、皆の気をそっちに引き付けるとか?』
トリスの呑気な言葉に、アリアーヌは思考の海に潜る。
『ふむ…。』
『え?冗談ですよ?というか何か嫌な予感がするんですけど。』
妙な悪寒に襲われたトリスは、アリアーヌを必死に思考の海からサルベージしようとするが無駄であったようだ。
『よし、決めた!』
『何を?』とトリスが質問する前に、アリアーヌは対話を切ってしまう。トリスは口をあけたまま暫く呆然とするのだった。
1時間後、国民の大多数は王城前に集まっていた。何故なら王城からの使いの騎士が、今回の件について王からの御言葉があると触れて回ったからだ。その報せは当然、街中に居たトリスも知る事となり、気配を隠しつつその場に現れる。
少しすると騎士達が現れて、静粛にするように呼びかける。人々が静かにしたのを見てから、王城前からでも見えるバルコニーにオウギュストが登場する。すると人々は一斉に跪く。
「面をあげよ。」
魔法で拡声しているのか、その声は集まっている人々にはっきりと届く。指示に従い顔を上げた人々を見てからオウギュストは演説を始める。
「此度は、我の呼びかけに応え、集まってくれた事を感謝する。魔族の侵攻は、現時点を以て我オウギュスト・ラ・トゥールの名において終わりを宣言する。」
オウギュストの宣言により、人々が戦いの終わりをはっきりと実感し、その実感は喜びへと変わってゆく。
『ウォォォォ!!』
その歓声は数十秒続いたが、騎士達の呼びかけでどうにか収まる。
そして再びオウギュストの演説が始まる。今回の魔族の侵攻について、何故2方向から同時に攻めてきたのかや、どのように侵攻を止めたのかを説明を行う。そしてその説明に出てくる謎の魔法使いについての疑問が人々の中で大きく膨らむ中、オウギュストは更に火に油を注ぐような事をする。
「──という訳で、此度の戦いの勝利は、この魔法使いの功績によるところが大きい。その者の名はBランク冒険者のトリスである。奇しくも我が国の第3王子の愛称と同じではあるが、この者は今までまったくの無名であった平民である。」
無名の冒険者が常識外れな活躍をした事に、人々のざわめきは大きくなる。
しかしその当のトリスは絶賛混乱中であった。
-え?Bランク?あの試験ってCランクまでしか上がらないんじゃ?というかこの流れはマズいんとちゃう?-
似非関西弁が出るほど焦ったトリスは、続くオウギュストの演説を見守ることしか出来ないでいる。
「この功績を以て、我はこの者をSSランク冒険者に推薦する。また、王国から謝礼として褒美を下賜したいと考えている。そのため冒険者トリスは、明後日の昼頃に王城へ来られよ。」
一気に2つもランクをとばして、最高ランクとなったトリスに、人々は驚きの声を上げてしまう。というか驚きのあまり、口をあけたまま声が出せないでいる者も居たほどだ。
だが驚きから回復した人々は、口々にトリスは賞賛する。
「スゲーよ。今まで平民でSSランク冒険者になった奴なんて、数える程しか居ないだろ!」
「あぁ!外に出来た壁はトリスっていう冒険者がやったんだよな!?」
「本当に凄すぎて、次元が違うとしか思えねぇよな!」
「ふふふ…。籠絡…。玉の輿…。一生安泰…。」
若干1名危ない者が居たが、概ね人々に好意的に受け入れられたトリス。しかしトリスにとってはある意味危険な流れであった。
「おい!トリスっていう冒険者に二つ名つけようぜ!」
「お!いいなそれ!」
「何かいい案は無いか?」
「あれだけでっかい壁が作れるんだから、それに因んだ二つ名がいいよな?」
「なら鉄壁は外せないんじゃないか?」
-え〜。マジで恥ずかしいから止めてくれ〜!-
今すぐその会話を止めたいが、ここで姿を現せば明らかに大変な事になるのは、火を見るより確かであったので聞き役に徹するトリス。
「よし!鉄壁の魔法使いって事で大賢者もつけて、『鉄壁の大賢者』でいいんじゃないか?」
「お!それいいな!これからは鉄壁の大賢者トリスだ!」
『鉄壁〜!鉄壁〜!鉄壁〜!』
何故か始まってしまった鉄壁コールに、トリスは耐え切れなくなりその場を転移であとにする。
その日の祝の場では、トリスの話題は尽きなかったようで、翌日には国民のほぼ全員がその名前を知るところとなった。恥ずかしい二つ名と共に…。
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コメント
小説書いてみたいけど内容が浮かばない人
王城に行くのはまずいよな