転生王子は何をする?

血迷ったトモ

第43話 魔族の侵攻を止めよう

「…はぁ。よくもまあそんな非常識な事が考えられるな。というか考えても人に言わないし、実行しようともしないだろうな。」

アリアーヌはジト目でトリスを見る。そんな視線を受けながらトリスは苦笑いする。

「ハハハ。まぁ、出来ちゃうんですから仕方が無いじゃないですか。」

「まぁ、その件に関しては一任してもいいか?」

トリスはアリアーヌの問に、自身を持って答える。

「はい!任せて下さい。」

「我々はその後始末を行う。…まぁ、お前に言っても無駄なんだろうが、気を付けろよとだけ言っておこう。」

「!ありがとうございます。まぁ、今の自分を殺すなら、神でも持って来なければ無理そうですけどね。」

アリアーヌのさり気ない温かい言葉にトリスは驚いたが、心配させないためにもおちゃらけて言う。

「まったく…。では、後は任せたぞ。『転移テレポーテーション』。」

トリスは転移テレポーテーションで消えるアリアーヌを見送ると、両手を勢い良く打ち鳴らして気合を入れる。

「よし!やるか!」

ここトゥール王国王都のトゥールは、高さ凡そ10メートルほどの石壁で円形に覆われている。そしてその外側には幅30メートル深さ6メートルほどの堀、内側には幅3メートル深さ2メートルの堀兼用水路が設置されている。しかし魔族達にとってはそんな物は無いも同然であり、このままにしておけばあと数分で王都トゥール内は地獄と化すであろう。
しかしそんな事をトリスは許さない。凡そ30平方キロメートルの面積を誇る王都の外側に立ち、両手を地面に勢い良く付ける。
気分はまるで、某身体の一部を持っていかれた錬金術師の様である。

「行くぞ〜。『土壁ソイル・ウォール』!からの『付与エンチャント 強化エンハンス』!」

最初の土属性中級魔法の土壁ソイル・ウォールで、約20キロメートルある王都の城壁の更に外側に、高さが城壁の2倍ほどの土壁が出来上がる。
そしてそれに付与術により、1キロ先で核が爆発しても耐えられそうなレベルの強化を施す。最初の土壁だけで魔力を一気に20万ほどごっそり持っていかれたが、スキルの超回復の効果で一瞬で満タンになる。その後の強化では30万ほど持っていかれたが先程と同様即回復した。
これだけでも守りは十分すぎると思えるが、敵は何といっても魔族であり、中には飛べる個体も居る。そのためトリスは更に重ねて魔法を使う。

「『収納インベントリー』。」

トリスは収納インベントリーから、5トンほどのミスリルの塊を取り出す。
ミスリルは、以前アリアーヌに連れられて色々な場所を探索した際に偶然見つけていたものだ。この金属は鍛冶師が奥義としている、一定のパターンで魔力を送り込むと粘土のように柔らかくなるという性質を持っている。しかしそんな事は、スキル鍛冶神を持つトリスには一切関係無く容易に加工が可能となっている。
トリスは適当に魔力を込めて、長さが60メートルほどの細長い棒状にする。それを20本造ると、次は魔法を使う。

「ふぅ。『送還センド』。」

一瞬で目の前にあったミスリルの棒が、凡そ1キロメートル感覚で土壁の中に埋め込まれていく。送還センドとは時空属性の上級魔法で、任意の場所に物体を送り込む事が出来る魔法だ。ただし生物の体内には送り込めないという制限がある。これは一説によると、生物の体内に含まれる魔力が、この魔法で指定した場所に送り込むという性質にエラーを発生させ、結果として生物の体内には送り込めないという事が起こっているのではと考えられている。
それは兎も角トリスは次の工程に映る。収納インベントリーで回収していた魔族の死体から、魔石と呼ばれる宝石のような物を取り出す。これは魔物や魔族にとっての心臓部であり、強力なモノであればあるほど巨大な魔石を持つ。魔石は付与術がかけやすい物で、度々魔道具マジックアイテムのコア部分として使用される。
魔族達からは、握りこぶしより少し大きめな魔石が手に入った。それに付与術をかける。

「『付与エンチャント 聖域サンクチュアリ』。」

光属性の上級魔法聖域サンクチュアリを付与する。これは一定の効果領域内に、魔族や魔物の魔石に反応して障壁を張るという魔法であり、今回は少々トリスで手を加えてあり、普通とは違う発動の仕方をするようにしてある。
それらをそれぞれ先程送還センドで設置し、少し頭が見えているミスリル棒の上に差し込む。

「よし、これで完成だ!」

トリスの言葉通りこれで王都の守りは、それこそ神でも持ってこないと破れないレベルの頑丈さを誇るようになったのだった。

コメント

  • 血迷ったトモ

    口癖みたいなものですねw
    すいません…。

    0
  • アマスさん

    兎と角って使いすぎな感じがしますが・・・

    1
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