転生王子は何をする?
第31話 試験を受けよう 2
「お、お待たせ致しました!川魚のサンドイッチと果実酒をお持ちいたしました。」
数分後、再び同じ店員がトレーを持ってやって来て言った。
「川魚?」
トリスは思わず店員にそう聞き返す。
何故ならば、川魚といえば独特の臭みを持っていて、トリスにはあまりいいイメージが無かった。
そしてその反応は店員にとっては恐怖でしかないようで、震えながら聞いてくる。
「ひっ!魚は苦手でしたでしょうか!?」
「い、いや大丈夫ですよ。運んでくれてありがとう。…お会計はどうすれば良いのかな?」
「お、お会計でしたら、お食事が終わりましたらお声をかけてください。」
「はい、分かりました。」
そう言って、トリスはサンドイッチに目を向ける。どうやら川魚の甘露煮の水気をきり、シンプルにパンでサンドしたものらしい。
トリスは意を決して一口かぶりつく。すると何の臭みも無く、寧ろ美味しいとしか言えない程の味だった。自然と二口、三口と口に運んでしまう。
そんな様子を、何故だか店員が横でじっと見つめている。
「…とても美味しいです。毎日にでも食べたいほどです。丁寧に下処理をなさっているんですね。聞いていた臭みをまったく感じません。」
店員の視線に耐えきれなくなったトリスは、素直に美味しいと伝える。すると店員は顔を綻ばせ、大喜びでお礼を言ってくる。
「は、はい!ありがとうございます!…怒らなくて良かった〜(ボソッ)。」
流石に恐怖されるのが目的でゲースとゴーリラを人前でのしたのでは無いので、トリスはこの機会にとイメージの払拭を図ろうとする。
「いやいや。俺はそこまで短気じゃないですよ。所謂目には目を歯には歯をってやつですよ。」
「き、聞こえてました?」
店員は顔を青ざめさせながら聞き返してくる。
「ええ、聞こえてましたよ。そんなに怖がられると、幾ら俺でも心がポッキリ折れちゃいますよ。あははは。」
「え、あ、はい、すみません。」
トリスはここぞとばかりに追い討ちをかけていく。
「ほら、そんなに畏まらなくてもいいですし。」
「う、うん。分かったわ。…確かに今こうして話してみれば、貴方は普通に優しく礼儀正しい人だって感じるよ。」
「分かってもらえて良かったです。」
「良く考えれば、別に貴方は喧嘩を売ってないし、寧ろあの迷惑な人達をやっつけてくれたんだから、感謝しないとね!」
「へ〜、そんなに迷惑行為をしてたんですか?」
「うん、そうなのよ。あちこちの女性をナンパしては、『Cランクの俺様と1晩付き合う権利をやる!着いて来い!』とかなんとか意味分からない事を言って無理矢理連れてこうとしたり、無銭飲食もたまにやってたわよ。私も何回か声を掛けられたし。あぁ!何か今思い返すと、貴方が2人をやっつけてくれた時、股間を思い切り踏んづけてやれば良かったと思うわ!」
店員はどんどんエキサイトしていき、終いには叫びたした。どうやらよっぽど嫌われていたらしい。酒場の店員の女性達が『うんうん』と頷いている。
「何だか気分がスカッとしてきたから、今日は私の奢りでいいわ!」
「え、いえ。先程奴らから金をせしめたので、幾らかここにも還元したいんですけど?」
「う〜ん、分かった!じゃあ今度どこかご飯に行きましょう!その時に私の奢りでという事で。あ、私の名前はイルメラ。今年で17歳になるわ。」
周囲の冒険者からの目線が強くなる。どうやらイルメラはそれなりに人気があるようだ。赤い髪と目。顔付きは子供っぽさは少し残るが十分に美人といえるだろう。そしてかなりメリハリのある体型。ゲースとゴーリラが目を付けるのも頷ける。
そんなイルメラに食事に誘われたトリスは、流されそうになりつつも何とか断ろうと必死に弁明してみる。
「あ、はい。これはどうもご丁寧に。俺はトリス。18歳です。ってそうじゃなくて。悪いですよ。男の俺が奢って貰うだなんて。」
「でもそうでもしないと、私の気がおさまらないから!」
こうして長い戦いが始まる。だが結局のところ女性に口で勝てる訳もなく、トリスは次回ここで何かを頼んだ時に1品サービスで付けてもらうという落としどろに漕ぎ着けるのが精一杯であるのだった。
そんな2人のやり取りを見て、トリスに対する周囲の恐怖心が薄れるという思わぬ副作用が生まれ、トリスにとってはいい事づくめな戦いとなったのだった。
数分後、再び同じ店員がトレーを持ってやって来て言った。
「川魚?」
トリスは思わず店員にそう聞き返す。
何故ならば、川魚といえば独特の臭みを持っていて、トリスにはあまりいいイメージが無かった。
そしてその反応は店員にとっては恐怖でしかないようで、震えながら聞いてくる。
「ひっ!魚は苦手でしたでしょうか!?」
「い、いや大丈夫ですよ。運んでくれてありがとう。…お会計はどうすれば良いのかな?」
「お、お会計でしたら、お食事が終わりましたらお声をかけてください。」
「はい、分かりました。」
そう言って、トリスはサンドイッチに目を向ける。どうやら川魚の甘露煮の水気をきり、シンプルにパンでサンドしたものらしい。
トリスは意を決して一口かぶりつく。すると何の臭みも無く、寧ろ美味しいとしか言えない程の味だった。自然と二口、三口と口に運んでしまう。
そんな様子を、何故だか店員が横でじっと見つめている。
「…とても美味しいです。毎日にでも食べたいほどです。丁寧に下処理をなさっているんですね。聞いていた臭みをまったく感じません。」
店員の視線に耐えきれなくなったトリスは、素直に美味しいと伝える。すると店員は顔を綻ばせ、大喜びでお礼を言ってくる。
「は、はい!ありがとうございます!…怒らなくて良かった〜(ボソッ)。」
流石に恐怖されるのが目的でゲースとゴーリラを人前でのしたのでは無いので、トリスはこの機会にとイメージの払拭を図ろうとする。
「いやいや。俺はそこまで短気じゃないですよ。所謂目には目を歯には歯をってやつですよ。」
「き、聞こえてました?」
店員は顔を青ざめさせながら聞き返してくる。
「ええ、聞こえてましたよ。そんなに怖がられると、幾ら俺でも心がポッキリ折れちゃいますよ。あははは。」
「え、あ、はい、すみません。」
トリスはここぞとばかりに追い討ちをかけていく。
「ほら、そんなに畏まらなくてもいいですし。」
「う、うん。分かったわ。…確かに今こうして話してみれば、貴方は普通に優しく礼儀正しい人だって感じるよ。」
「分かってもらえて良かったです。」
「良く考えれば、別に貴方は喧嘩を売ってないし、寧ろあの迷惑な人達をやっつけてくれたんだから、感謝しないとね!」
「へ〜、そんなに迷惑行為をしてたんですか?」
「うん、そうなのよ。あちこちの女性をナンパしては、『Cランクの俺様と1晩付き合う権利をやる!着いて来い!』とかなんとか意味分からない事を言って無理矢理連れてこうとしたり、無銭飲食もたまにやってたわよ。私も何回か声を掛けられたし。あぁ!何か今思い返すと、貴方が2人をやっつけてくれた時、股間を思い切り踏んづけてやれば良かったと思うわ!」
店員はどんどんエキサイトしていき、終いには叫びたした。どうやらよっぽど嫌われていたらしい。酒場の店員の女性達が『うんうん』と頷いている。
「何だか気分がスカッとしてきたから、今日は私の奢りでいいわ!」
「え、いえ。先程奴らから金をせしめたので、幾らかここにも還元したいんですけど?」
「う〜ん、分かった!じゃあ今度どこかご飯に行きましょう!その時に私の奢りでという事で。あ、私の名前はイルメラ。今年で17歳になるわ。」
周囲の冒険者からの目線が強くなる。どうやらイルメラはそれなりに人気があるようだ。赤い髪と目。顔付きは子供っぽさは少し残るが十分に美人といえるだろう。そしてかなりメリハリのある体型。ゲースとゴーリラが目を付けるのも頷ける。
そんなイルメラに食事に誘われたトリスは、流されそうになりつつも何とか断ろうと必死に弁明してみる。
「あ、はい。これはどうもご丁寧に。俺はトリス。18歳です。ってそうじゃなくて。悪いですよ。男の俺が奢って貰うだなんて。」
「でもそうでもしないと、私の気がおさまらないから!」
こうして長い戦いが始まる。だが結局のところ女性に口で勝てる訳もなく、トリスは次回ここで何かを頼んだ時に1品サービスで付けてもらうという落としどろに漕ぎ着けるのが精一杯であるのだった。
そんな2人のやり取りを見て、トリスに対する周囲の恐怖心が薄れるという思わぬ副作用が生まれ、トリスにとってはいい事づくめな戦いとなったのだった。
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