転生王子は何をする?

血迷ったトモ

第16話 街に出よう 2

アリアーヌに頼み込み、様々な準備を押し進めること数日。トリスは、ある程度目処がついたため街に出ることにした。

「では師匠。後は頼みましたよ?」

「あぁ、任せておけ。…それと、なるべく自重しろよ?」

ここ数日で強さに拍車がかかったようにも感じるジト目で、トリスに念押ししてくる。

「も、勿論ですよ師匠。」

苦笑いをしながらも『収納インベントリー』を使い、中からローブと指輪を取り出し、身につける。
その様子を見て、アリアーヌは深く溜息をつき、頭を抑える。

「大体何だ?その規格外な魔道具マジックアイテムは?」

魔道具マジックアイテムとは、付与術によって魔法の効果が付与された道具である。利点としては付与されている魔法に対して、意識を割かなくても魔力を込めてキーワードを口にするだけで発動させられる上に、込めた魔力量により持続させる時間も自由にできる。以前トリスがパーティー会場に侵入した際使っていた、魔力隠蔽の指輪もそうである。トリスならばどんな魔法でも使えるのだから、魔道具マジックアイテムを使う必要が無いのでは?と思うが、魔法の行使に慣れていないトリスでは、ひょんなことで魔法を解除してしまうことがあるかもしれないので道具に頼る事にした。

「そうですか?認識阻害と魔力完全隠蔽、序に気配完全隠蔽は流石にやり過ぎましたかね?」

「序でとんでもない機能をつけるな〜!!」

アリアーヌの叫びは最もである。反論の余地もないほど論破されたトリスは、納得いかなそうな顔で部屋から出るのだった。勿論『影分身ドッペルゲンガー』を置いてきてからだが。


トゥール王国王都は、ステイブル大陸において有数の国力を誇るため多くの人々が集まる。日常においても、農村部から出てきた少年少女が『今日は何のお祭り何ですか?』と道行く人に訪ねてしまいそうになるほど人が多い。また、騎士達も練度が高いため巡回も怠らず、この世界では高いといえる・・・水準の治安を維持してる。
無事王城の外に出ることが出来たトリスは、なるべく人通りの少ない道を選んでいた。途中高い身体能力を駆使し屋根伝いで移動していたところ、路地裏に引き込まれる若い女の子と、引き込んでいる数人のガラの悪い男を発見した。

「全く。治安が良いといっても、日本レベルを期待するのは間違いか。はぁ…。」

トリスは、仕方ないなとでもいうふうに呟く。しかし今はローブに隠されている顔は、嬉しさで歪んでいた。
所謂テンプレ展開であり、異世界物大好きな人間にはたまらないイベントだからだ。

「よぉ。なんか楽しそうだな。」

魔道具の効果を切り、男達にそう声をかけると同時に屋根から飛び降りる。

「な、なんだてめぇは!?」

男達がどよめく。しかし声をかけてきた者が、子供ほどの身長しかない事に気がつくと、逆にニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべて近寄ってくる。

「よ〜し、よ〜し。立派な子だね〜。正義感を感じて助けに入ろうとしているのかな?別にお兄ちゃん達は悪い事をしている訳じゃないよ〜。」

「そうだよ〜。僕達は合意しあってるから問題ないんだよ〜。な?」

引き込まれた若い女の子に、肩を組みながらそう問う。

「は、はい。…わ、私は大丈夫だから君はどこかに行って。もうこんな路地裏に来ちゃいけないよ?」

女の子は気丈にも、泣きそうになりながらも堪え、逆にトリスの身を案じる。

「…そう?分かった!じゃあね、お姉さん!」

女の子はトリスの言葉に、悲しそうな表情を浮かべながらも頷く。

「とでも言うと思ったかクズ共め。」

『え?』

いきなり言葉遣いが豹変したトリスに、一同は唖然とする。

「全く。さっきから聞いていれば好き勝手言いやがって。別に正義感を発揮したわけじゃない。ただてめぇ達みたいなクズは、1回くらいは嬲ってみたいと思っていたから飛び込んだだけだ。」

「な!?このガキ!こっちが下手に出てりゃあ!」

「調子に乗んなよ!」

「それとだ。何が『お兄ちゃん達』だ。気持ち悪いな。お前らどう見ても30は超えてるオッサンだろ?」

トリスは煽りまくる。しかし本人はただ事実を言っているだけで、馬鹿にしてやろうなどという気持ちは無い。
しかし男達の沸点が低いためか、キレた1人が雄叫びをあげながらトリスを蹴り飛ばそうと近づく。
女の子はその後の光景を想像し、思わず目をつぶってしまった。
しかし数秒後に目を開けた女の子が見たのは、うずくまって倒れる男を足で踏みつけるトリスであった。

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