転生王子は何をする?

血迷ったトモ

第9話 勉強をしよう

トリスが目を回してぶっ倒れてから数日後、いよいよアリアーヌによる授業が始まることとなった。その間、アリアーヌは色々と酷い目にあったそうだが、それは置いておくこととする。
授業は座学を中心になるため、トリスの部屋で行われる。

「ところで師匠。」

トリスは困り顔で、必死にペンを動かしている・・・・・・・・・アリアーヌに尋ねる。

「…何だ?」

「この状況は一体どういうことなんでしょう?」

「…見ての通りだが?それよりも私は忙しいので、質問はなるべく率直に分かりやすく頼む。」

「そうですか。わかりました。率直に言いますが、これは授業とは言わない気がします!!」

トリスは本の海・・・に埋もれながら叫ぶ。トリスは、アリアーヌによるマンツーマン形式の授業が行われると考えていた。しかし当のアリアーヌは、トリスの部屋に大量の本をどこからともなく取り出して積み重ねると、机に向かって団長の仕事であると思われる書類に必死の形相で書きなぐっているのだった。

「…はぁ。確かに仕事があるのは分かります。しかし、それならば断ればよかったのでは?」

トリスは苦笑いを浮かべながら言う。しかしアリアーヌは拗ねた表情になって叫ぶ。

「私だって最初は断る気でいたさ!教えるのだって初めてでよく分からないしな!だがいざお前に会ってみれば何だ!?やれ創造神の加護、やれ全属性が使える、やれ異世界での前世の記憶があるだ!?断れるわけが無いだろう!?」

トリスは、アリアーヌの悲痛な叫びを耳を塞いで防ぎつつも、呆れた目線を向けて言う。

「…要するに、好奇心に負けて引き受けたと?」

「その通りだ!反省はしたが、後悔はしていない!」

アリアーヌは実に良い笑顔で肯定する。それを見て、トリスは呆れた顔で溜息をつくしかないのであった。


「さて、仕事も一段落着いたところだし、今ならどんな質問にも答えるぞ〜。」

アリアーヌは伸びをしながらトリスに話し掛ける。そんな自由すぎる態度にちょっとイラッときたトリスは、女性にはある意味禁句な質問をする。

「では、師匠は今何歳なんですか?それと御結婚はしてらっ!」

トリスのセリフは別に打ち間違えでは無い。アリアーヌに年齢を聞いている時点で周囲の空気がひんやりしてきたと思ったら、すぐにトリスの周りにその数20ほどの氷の矢が現れたのだ。それも全てトリスの頭に鏃が向いている状態だ。

「…女性に歳を尋ねるのは如何なものかと思うぞ?それと後半部分なのだがな、良く聞こえなかったのでもう1度言ってくれないか?」

アリアーヌは底冷えのする笑みを浮かべている。

「も、申し訳ありませんでした!それと後半部分については何を言おうとしていたのか覚えておりません!」

トリスは今生において最速の土下座をかましながら謝る。いくらトリスに魔法の絶対耐性があろうとも、それすら忘れるほど恐ろしい雰囲気がアリアーヌから放たれているのだ。

「…そうか。次からは気を付けるのだな。」

「Yes,sir!!肝に銘じておきます!!」

アリアーヌからのお許しが出た瞬間、トリスは土下座から直立不動の体制になり、敬礼をしながら叫んだ。
現在アリアーヌは御歳ひゃく…筆者もまだ死にたくないのでここでは言わないことにしよう。アリアーヌの年齢は、数百年を優に生きるエルフにしてはまだまだ若いが、周りを人間族に囲まれて生きてきたため、年齢を気にしているだ。特に結婚や恋愛に関しての話もタブーである。因みに恋人が出来なかったり、結婚出来ない理由として、魔法戦闘が強過ぎるというのと寿命の違いから本人がブレーキをかけてしまったりと様々な要因が絡んでいるためだ。
こうして、トリスは1つ賢くなったのだ。

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