転生王子は何をする?

血迷ったトモ

第4話 鑑定のお時間です!

どうも!トリスです。あれから数日が経ち、ついに5歳になりました!本には教会でステータスを鑑定するとか書いてあったので、城の外に出られるかと思っていましたが、慣習がどうとかで鑑定眼の持ち主がお城に来るそうです。チクショー!!

「ん?どうしたんだ、トリス?変な顔して。若しかして体の調子が悪いのか?」

おっといけない。今は父上が隣にいるんだった。
現在トリス達は城の大広間の、一番奥まった場所にある一段高い場所に置いてある椅子に座って、教会から派遣されてくる鑑定眼の持ち主を待っているのだ。鑑定をする時は少人数で行う方が良いとされているため、2人きりである。

「いえ、大丈夫です。ただ、自分のステータスがどのようなものなのか、少々不安を感じていただけです。」

トリスはちょっと不安そうな顔を意識しながらそう返す。するとオウギュストは、トリスが普段は見せない表情をしているのに驚きながらも何とかトリスを励まそうとする。

「そうか。でもお前なら大丈夫だろう。私が保証する。」

この世界において、髪や目の色は魔法や魔眼の特性に引きずられることが多々ある。そのため、以前トリスが風魔法を失敗させた時の事を、音を聞いていたメイド達からの報告と魔法の入門書を持っていたという状況から、最低でも風属性の他に2、3種類の適性があるとオウギュストは考えているのだ。そうでなければトリスの黒髪黒目が説明出来ない。何故なら王族の譜系を見る限り、黒髪黒目はおらず、またこの大陸においても発見されたことはないからだ。遺伝では説明出来ないということだ。
トリスはそうとも知らず、『何故この人はこんなにも自信たっぷりなんだろう?』と首を捻るがあまり深くは考えないことにした。何故なら廊下から大広間へと入る扉の前に数人の気配を感じたからだ。

数瞬後に、扉が開いて騎士4人に率いられた神父のような格好をした人物が2人、そしてシスターのような格好をした人が1人入って来た。彼らは大広間の中央辺りまで来ると、四方を囲むように歩いていた騎士達がそれぞれ左右に向かい合うように部屋の端に並ぶ。そして先頭に居たシスターが膝を付き、頭を下げる。後に居た神父2人もシスターに倣う。
その様子を見た騎士のうちの1人がオウギュストに目線を送り、オウギュストが頷いたのを見てから言う。

「面を上げよ。」

「「「はっ!」」」

シスター達は膝を付いたまま顔を上げる。すると今までトリスの位置からは良く見えなかったのだが、シスターは右目が金で左目が限りなく白に近い灰色であり、虹彩異色症(所謂オッドアイ)であることが分かった。因みに後ろの神父達は特に変わったところはなかった。

「此度は我が息子のため、態々教会から足を運んで来ていただき、感謝する。」

トリスが、『あ、何か王様っぽいところ初めて見た。』と呑気に考えていると、2人の神父のうち1人が畏まって言う。

「は。有り難きお言葉。寧ろ私共にトリスタン様のステータス鑑定をお任せいただき、光栄であります。」

「うむ、そうか。ならば良かった。」

オウギュストは満足そうに頷いている。その実、オウギュストはこのようなやり取りはあまり好きではなく、早く終わんないかな〜と考えている事をトリスは知っている。そのため、

「父上。私のステータスを鑑定してくれるのは、あちらの先頭に居られる方ですか?」

とその場の流れをぶった斬るような感じで喋り出す。

「む。これトリスタン。勝手に話に入ってくるものではないぞ。遣いの方々に謝りなさい。」

「す、すみません。どうしても気になったもので。」

トリスは申し訳なさそうに謝る。

「本当にすまないな。トリスタンもまだ5歳のため、教育があまりなされていないのだ。」

とオウギュストも謝ったため、遣い達は慌てる。

「い、いえ!トリスタン様は5歳にしては言葉遣いや姿勢などが、類を見ないほどしっかりとなさっています!え、え〜っと、その確かにこの先頭に居るクリスティーナがトリスタン様のステータス鑑定を担当させていただきます。クリスティーナ、自己紹介しろ!」

とクリスティーナに話を振ったが、いきなりの事で混乱していたようだ。顔を真っ赤にしながら言葉を紡ぐ。

「は、はい!クリスティーナと申します!えっと、年齢18歳独身、彼氏無し!趣味は子供を愛でることです!」

「「「「「「「「え?」」」」」」」」

その場に居たクリスティーナ以外の男達の思考が停止する。

「…あ!」

クリスティーナは両手で口を抑えて、真っ赤だった顔を一気に青白くさせ、涙目になりながら震えている。
その様子を2人の神父は見て正気を取り戻したが、クリスティーナと同じように顔を青白くさせ、そして冷汗をダラダラとかいている。

「…くっ!」

オウギュストから、彼らには聞こえないような小さな声聞こえてきた。肩を震わせ、どうやら笑いを必死に堪えているようだ。よく見ると、4人の騎士達も笑い堪えて肩を震わせている。というか鎧や武器が震えでカチャカチャと音を立てている。そのカチャカチャ音に反応し、シスター達は更に顔を青ざめさせている。
すぐにオウギュストからトリスに向けて、『何とかしてくれ!』みたいな感じの視線が向けられたので、一役買うことにした。

「…プ。」

「「「…プ?」」」

シスター達はトリスの言葉を反芻する。

「プッ!アッハッハッハッハッ!!お姉さん、え〜っとクリスティーナさんだっけ?面白いね!僕の鑑定宜しくね!それと僕の緊張を解こうとして、態々冗談を言ってくれてありがとう!」

トリスの言葉にクリスティーナはポカーンとしていたが、慌ててその言葉に乗っかる。

「は、ひゃい!こ、こちらそよろしくお願いしましゅ!」

噛み噛みだったが、今度はスルーする。その後無事鑑定が終わり、偽造した数値やスキルがきちんと表示されたのでトリスはホッとした。


「さて、ご苦労だった。今後共宜しく頼む。」

とオウギュストは言いながら、騎士のうちの1人に視線を送り、謝礼としてお金が大量に入った袋を神父に渡した。その後地面に頭がつくんじゃないのかと思うほど深く頭を下げたシスター達は、産まれたての子鹿のように足を震わせながら帰路へと付くのだった。教会に辿り着き、クリスティーナが大目玉をくらったのは言うまでもなかった。

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