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本物は誰だ

桜井かすみ

見えてしまうんだ

会議室一号に入ると、私を含めた十人が集結していた。

白、彼女が本体だろう。名札が一号だ。色が白くて、見るからに純粋そうな瞳。その瞳は一体、どんな不幸を突きつけられたのだ。私はじっくり彼女をみた。

「なんで、こんなことになってんの。いい加減にしてよ。本当にこんな争いおっぱじめる気?!」

気を荒くした女が、机をバンっ!と叩く。会議室に広がる乱暴な音に、また別の女がビクビクと震える。

声を荒げるのは赤の二号。短気でなんとも言えないキツイ眼差し。
白を睨んでいる。

ビクビクと震えるのは、橙。八号だ。
優しい雰囲気をまとい、表情はオロオロと困っている。周りのみんなより少し太っている。

「ちょっと、うるさいわよ。静かにしなさい」

冷静に二号に注意するのは、青の三号だ。彼女は赤を思い切り睨んだ。

ピリピリしてるのは、みな、同じ……ということか。
私だけがまだ何も感情を出せないまま、その場にいた。

一号は、何が何だか分からないというような困惑した顔をして、奥に座っているけれども、私の方も何が何だか分からないということを伝えたいのは山々だった。

「本体が意識しちゃったんだから仕方ないじゃない。私たちがどうこう言ったって、偽物は偽物なんだから」

と、ピシャリと放つのは七号の紫。高貴な色である、その紫は雰囲気を十分に出している。

「みんな待って。私は黒。黒ってどういう存在か、あなたたちは知ってるの?生まれてすぐこれよ?何をごちゃごちゃ言っているのか、さっぱり分からないわ。喜びも悲しみも怒りも何も知らずにこの闘いに参加させられるの。だから、本体、あなたは一体何をしたの?」

混沌としたこの空間に、私が放った内容は、それぞれをハッとさせたらしい。
そう。ただ一人、生きたいも死にたいも、喜びも悲しみも怒りも何もないまま、本体争いをさせられる。
本来なら、私は除外でいいんだ。
人生を知らないのだから。

なのに何故だろう。
白、あなたの痛みが私には見えてしまう……。


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