半魔族の少女は料理と共に

秋雨そのは

落とされた身分と賞金首の末路

タイトル若干合ってないかも……


 私達は走っていた。ただ、疑問に残った事があった。

 ここは天変地異も起こっていない地域、そんな所に壁があるだろうか? 崖があるほど下りがあったり、登るほどの坂も無いはずはだけど。

「オルドさん、この辺りに壁なんかありますか?」

「そういえば、そんな場所はない……あるとしたら、昔あった城の跡地が何処かにあるとか。誰かに聞いた」

 走りながら、私はオルドさんに問いかけるが。城跡地か~、その内授業で習うかな。
 スライムからしたらデカい城の壁は、相当デカい壁に見えるからありえるかもね。

「……」

「ナタリアさんどうしたの?」

「い、いえ何でもない」

 ナタリアさんが何か言いたそうしたけど、知ってる事があるみたいだけど。今は急ごう。

 着いた所は、立派な城があったと思われる。跡地があった……その時。

――誰か、誰か助けて!

――誰も来やしねぇよ、それを狙ってこの場に誘い込んだんだ。

 奥から人の声が聞こえた。確かに女性の声と男性の声だ。
 オルドさんとケルトさんは走る、その道を塞ぐ影があった。

「な、魔物か!」

「野良の魔物ですか?」

「いや……これは、魅了の魔法にかかってやがる」

 魅了の魔法? 確かにこの先に行かせないように、守っている様に見えるけど。
 デカい黒い犬の様な魔物が5匹程、こっちに向かって走ってくる。

「ここは俺らが食い止める、お前ら2人は先に行け!」

「はい!」

 オルドさんとケルトさんが前に立ち食い止める。私達は脇の道を行こうとするけど、魔物に先回りされる。
 するとナタリアさんが、呟いた。

「こっち、多分こっちなら魔物居ない」

「本当? なら行きましょう」

 私は、何故か心配げなナタリアさんを気にせず、急い走る。
 走った先は、魔物も居なかった。今だに逃げる時に聞こえる悲鳴めいた声が近づく。

「!?」

 女性がこっちに気づいた時、男性もこっちに気がついた。
 カルネル・アハ・ノーラさんだと思うけど、会ったことが無いからわからない。男性は大人で体格差が目に見えて分かる。

「ほぅ、こんな所に来る友人もまだ居たんだな」

「ナタリアさん!? なんでこんな所に!」

 もし、私の推測が正しければ……一か八かになるけど。この近くにあの人が、いるかもしれない。
 密かに私は繋げる。

『ゲオールさんこっちの国に来てるんですよね?』

『姉さん!? この声は何処からです?』

『説明してる暇は無いわ、妹さん? が居なくて困ったりしてない?』

『は、はいそうですが誰にも喋ってないはずですがね』

 私は、疑問に答えず場所をすかさず教え急ぐように伝える。それを聞くとゲオールさんは何かを察したのか、走ってくれるみたいだ。
 このチャットという魔法、私にも分からないんだけど。結構な距離が離れてても繋がるのよね。

「とりあえず、時間を稼がないと……」

「早く……早く助けないと……」

 私に反してナタリアさんは、焦っていた。ここにいる人ではなく、これからやってくる人を警戒するように。
 マリーゼ・ハルトとだと思われる男性は、指を鳴らすと魔物が後ろから出てくる。

「ひっ!」

「ヤバそうね」

 走り襲い掛かってくる、直前……ある人の影が素通りし。走っていた魔物は時が止まったように動かなくなり、倒れた。
 見たことのある人が来た。

「姉さん、近くに来てなかったらどうするつもりですかい」

「貴方が近くに居るのは分かってたから」

 ゲオールさんだった、私はスライムの言葉聞いてそうなんじゃないかと思っていた。けど、お嬢様の兄なのにと思って考えてなかった。
 ただ、カルネル・アハ・ノーラの人の見る瞳がゲオールさんに凄く似ていたから。
 近くにいると思ったのは、スライムに最初言ってた事を聞いた時『さっきの人を探してる男の人が呟いてた人だ~』と言っていた。

「お兄ちゃん!」

「何年ぶりだろうな、こんな時に言うセリフでもないがね」

 ゲオールさん相当強いよね。だって、瞬殺よ? 私には無理な芸当ですよ。
 カルネルさんも隠す気が無いのか、お兄ちゃん言ってるし。本当にあってたのね。ただ、さっきからナタリアさんが怯えてるのは何でだろう。

「どうしたの?」

「……この世界と出来事が、乙女ゲームに似すぎてて。勿論、マリアさんは居ないかったけど。そのゲオールさんが主人公を口封じの為に殺すバッドエンドがあるのよ……」

 なるほど、乙女ゲームの方から何故か転移した形だったのね。私が最初聞いたら「頭大丈夫?」て返しそう。
 まぁバッドエンドなら自分が死ぬかもしれないから。怯えるのはしょうがないわね。
 ゲオールさんは、男を睨みつけ。言い放つ。

「丁度良かったですぜ、うちの国の賞金首が妹を狙ったなんて。手加減する必要ないですぜ」

「ほざけっ!」

 それと同時に突っ込んでくる。先程の魔物で数が居なくなったのか、出てこない。
 それを事なき様に、横に受け流す。挑発めいた言葉を吐きながら。

「どうしたんです? 学校の教師なのにその程度ですか?」

「うるせぇ!」

 ナイフを片手に持ってるゲオールさんが、ナイフを投手する。怒りに任せた男は、避けきれず腹に突き刺さる。
 うわぁ~、一方的な殺しじゃなくて相手の精神を崩しながら、戦うやり方なのね。

「ぐっあぁ~~! クソ、クソが!」

「逃げるなら構わない、人を殺す時はあまり人に見せないようにしてるのでな」

 男は、腹に突き刺さった衝撃で転げ回り、痛み抑えながら躓きそうな足取りで走り、逃げる。
 それを、ゲオールさんは見守るようにゆっくり、ゆっくりと歩いて行く。

「あ、マリアさんこの事は他言無用に願いますぜ。そっちの子も。マリアさんは信頼出来ますが、そっちの子だけだったら、殺してますがね」

「ひっ!」

 殺気の篭った瞳を向けられたため、ナタリアさんは更に萎縮した。まさか、ゲオールさんに妹さんが居たなんて、びっくりね。
 私達はカルネルさんに近づき話を聞く。

「大丈夫?」

「え、えぇ……あのお兄ちゃんと知り合いなんですか?」

「そうよ、少し縁があって私の居た国、マルズダマ国でお世話になったのよ」

 驚いていた、何故か聞いてみると纏めると「親に捨てられる予定の私の代わりに捨てられたのが、お兄ちゃんです」ということだったらしい。
 詳しい事は、後で聞いてみようかしら。無理には聞かないけど、私は気になると……ね?

「それじゃ、2人を回収して戻りましょうか」

「そうです、忘れてました」

 ナタリアさん地味に酷くないですか? まぁ殺される恐怖で考えてる所じゃなかったもんね、私達3人はのんびり戦ってると思われる。2人の所に向かう。

 そこには、2人して唖然として立っていた。
 だって、ドラゴンが居たんだもん。2人は何も仕掛けてこない、ドラゴンに警戒しつつも特に何もしてなかった。

『ベリアルのご息女よ、我らの魔物が迷惑を掛けた。問題無いようだから我は帰るぞ』

 そう言って、大きな翼を羽ばたかせて目にも止まらぬ速度で飛び去っていった。
 その言葉を聞いて、オルドさんはさらにポカーンとしてた。ついでにナタリアさんも唖然としてました。
 混乱しつつオルドさんが、正気に戻ってきた。

「お前……の敵にならなくてよかったわ~」

「命が幾つあっても足りない気がする」

 ナタリアさんもそんな感想を口にしていた。私もそんな人がいたら、かかわらないから。
 カルネルさんは、言葉にできなった。だけど、なんとか戻ってきて。オルドさんと私達に頭を下げた。

「すみませんでした。心配掛けさせてもらって」

「まぁなんだ、みんな無事だから良いんじゃねぇか?」

「そうですね~、長居は無用ですから学園に戻りましょう」

 私達は、その場を後にした。


次は、帰り道と学園と解決への道?

コメント

  • 海桜

    更新楽しみにしてます

    0
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