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半魔族の少女は料理と共に

秋雨そのは

55話 意外なあの人が

いきなり始まって、いきなり終わる……
誤字脱字修正しました


 私は、母……ワンダの攻撃を避けていた。

 攻撃に関する事は、素人で……ドンパチなどしたことがないから。体が悲鳴を上げずに済んでいるのは、ストレングスという魔法のお陰。
 それが何時まで続くかも分からない。
 先程まで開いたドアはキツく閉まり、普通の教室くらいしかないこの空間では逃げるのでさえやっと。

 その時、窓の方から……ヒビが入った。

パリンッ!

 という音を立て、空間に穴が開いた。その時入ってきた人物は……。
 小さい猫と、喫茶店のお爺ちゃんだった。

「やれやれ、この猫も荒っぽいの~。2階まで飛び上がらせるとは、普通じゃ無理じゃぞ?」

『主大丈夫ですか! 気が消えたので、何かあったのかと思い来ました!』

 猫のセナリアは、私の方に走ってくると肩に乗った。
 国王の言っていた助っ人ってこの人の事なの? 私には普通のお爺ちゃんにしか見えないんだけど。

「さてと、お主も久しぶりじゃの。ワンダ」

「貴方、まだ死んでないとは長い生きし過ぎでは?」

「ほっほっほ、若返ったお主と違い立派に生きてるからの!」

 この2人は知り合いらしい。ミナトさんとも知り合いだったらしいけど、このお爺ちゃん凄い人なのかも?
 普通にやりとりしている様に見えるけど、殺気を2人共放っていた。

「お爺ちゃん何者なんですか?」

「儂はしがない喫茶店のオーナーじゃよ。それ以上でもそれ以下でもないわい」

 私は聞いてみるが、過去に関することは喋ってくれない。ワンダは歯を噛み締め、このお爺ちゃんを睨んでいる。
 この学園は普通の人が入ることは許されてないんだけど、許されているってことは……少なくともただの喫茶店のお爺ちゃんじゃ無いよね?
 首を傾げていると、猫は役目を果たした言わんばかりに目を閉じて、眠っていた。……可愛い。

「魔族の血を使っておいて、自分は若返り。娘は捨て……1人ノコノコと生きとるとは魔物に殺されてもおかしくはないはずじゃがな」

「私は魔物に会わなかったわ、それに遭っても簡単に殺せるでしょ!」

「やれやれじゃの、己を過信してるとはこの事じゃ。守られているとは知らずに……」

 何の話をしてるんだろう? 私の事だと思うんだけど、何故そんな事知ってるんだろう? そういえば、何でお爺ちゃんが援軍として呼ばれたんだろう? ナタルさんとハナさんだと思ってたんだけど。
 少し懐かしい気がするような……、会ったことは無いはずだけど……。

「守られてるですって! 誰に何のために!」

「儂は言ったはずじゃぞ? 儂はお主が母親である限り、手は出させんと」

「確かに言ってた気がするわね、でもそれとこれとは関係無い!」

 セナリアは私の肩で欠伸してるし、お爺ちゃんは何者か分からないし。ワンダは何か恐ろしい物を見るように、喚き散らしてる。
 会話の内容も分からない、それじゃあこのお爺ちゃんがワンダを殺させないように魔物に、口添えしたみたいな言い方。

「答え合わせはこれで、終わりじゃの。さて、逃げ出すなら儂は構わんぞ?」

「うるさい! 貴様みたいな化物と一緒にするなぁ!」

 ワンダの口調は崩れ、怒りとともに罵る。それに対しお爺ちゃんは呆れた様な、溜息と共にこちらを見た。
 お爺ちゃんは私に、笑顔で懐かしい様な目で見ていた。

「やはり、ベリアルの子じゃの。無邪気さと好奇心の強さ、奴の綺麗な紅い目がそっくりじゃ」

「え? 父を知っているんですか?」

「知っとるよ、古くからの知り合いでの。ワンダと結婚する前からじゃ」

 結婚をする前って事は、結構前の事だ。それでも彼は魔族、人との関わりはほとんどある筈がない。
 古くってどのくらいだろう?

『主、安心してもいいですよ。私達魔物は主の味方です』

「魔物が……?」

『はい、ベリアル様が死んでしまって。主が一度目の人生を終えた時、女神様が生き返らせたことを感謝し。魔王様と一緒に見守ろうと誓ったんです』

 それって……、ここに居るのはもしかして……魔王!
 ということは、ワンダは魔物に襲われなかったのは。魔王の命令で殺させなかったから。私が魔物に会わないのも。
 私は驚いた、只者では無いとは思ってたけど。魔王だったなんて。

「ほっほっほ、ベリアルが何の抵抗もせずに死んだ時は、びっくりしたわい」

「あんなモルモットを生み出す人なんて忘れたわ」

 あ、お爺ちゃん……もとい魔王が、殺気をさっきより大きくなった。寒気がする所みると本当に怒っている。
 寒気でブルブルしてると、セナリアが大きな狼の姿になり私の体を囲んでくれた。

「あ、ありがとう」

『魔王様は手加減が苦手ですからね。基本は見守る事にしてるんですけど、今回の事は私にも止められません』

 それだけの事をワンダはしちゃったんだと思った。私も流石にモルモットとか言われた時には苛ついたけど。私じゃ手も足も出ないから。
 ワンダは魔法を唱えるが……、火の球がお爺ちゃんの目の前で消える。見えない壁に阻まれるように。

「どうしたんじゃ? それだけかの?」

「うるさい! うるさい!」

「そうじゃった、そうじゃった。お主はもうこの娘の母親じゃなかったの。魔物にはそう伝えておくからの」

 何発もの火の球を投げるが、お爺ちゃんは怯まず。むしろなんてことのないように話を続けている。
 凄い……、私は圧感で何も言えなかった。
 お爺ちゃんは、何も無い所に手を突っ込み……杖を取り出す。

「茶番にも飽きてきたからの、両手が邪魔じゃ……ほい」

 お爺ちゃんは、杖を床に柄を叩きつけると。火の球を出していた両手を拘束した。
 ワンダは外そうと踠くが全然外れない。お爺ちゃんは悪い笑顔を浮かべている。怖い……怖いよ。この笑顔が一番怖い。

「さてと、じゃあの。逃げないなら逃してやろうかの。お主の家にの……」

 もう1度叩くとワンダが……消えた。
 ワンダの家って何処だろう? お爺ちゃんは、特に気にした様子はない。

「それじゃあ、儂は帰るかの。セナリア、儂と帰るぞ」

『はい、それでは主。学園生活頑張ってください』

 そうして、何事も無かったように、お爺ちゃんと猫に戻ったセナリアは転移の様な物で返っていった。


次は、その後の事です

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