半魔族の少女は料理と共に

秋雨そのは

47話 認めたくない真実と過去

割りとシリアスになってしまった……


 私達は、試験が終わり学園を案内されていた。
 試験の結果は全員受かったみたい。

 よく知る学園の風景だけど、割りと知らない場所もある。魔法準備室だったり、庭園や和室など普通の学園には無い所がある。
 和室って、この世界にあるとは思ってなかったんだけど。女神に聞いたら……。

――この国の学校は、東方の技術も取り入れてるため。剣だけで無く刀とかもあるらしいですよ――

 と帰ってきた。女神結構物知りなのね、東方のって事はコタツとかもあるかも。
 割りと、前世の日本って外国も混ざって色々あるから。勘違いしそうだけど。

 そんな事を思っていると、教師が部屋の前で立ち止まり。

「ここが学園長室だ」

 一瞬、そこの扉の奥から。冷たい風が入り背筋が凍る様な感覚を覚えた。汗ばむ手で、心臓の辺りを掴む。気づくと大量の汗をかいていた。
 ケルトさんは、私を見て心配そうにしていた。少し顔に出ちゃったかな……でも、あの感覚は何だったんだろう?
 記憶に思い出しても、こんな場所に来たことは無いはずだけど……。

「今、大勢で押しかけるのはご迷惑になるため出来ないが。挨拶したい者はいるか?」

 何時もなら、気になったら行きたいのだけど。どうしても行きたくなかった……そこに居る人を否定するような。
 何故か……入っては行けないと思ってしまった。

「マリアさん?」

「は、はい? 何でしょうか?」

 気づくとケルトさんが私の顔を見ていた。
 周りを見ると、私達以外が中に入って挨拶してみたいと思って教師に話しかけていた。

「行かなくていいんですか?」

「い、いい私は……」

 私は無理な笑顔でケルトさんに向き直った。
 少し、彼が居てくれて良かったと思った……。もし……1人だったらここから走り去ってしまうかもしれなかったから。

「そうですか……」

 それ以降は何も喋らず、私の隣に居た。周りは入る人が決まったのか……1人前にでた。メルトさんに決まったみたいね。
 そして、扉が開かれた時……私は、その人を目にして意識が途絶えた……。



 途絶えた意識を戻ると。周りは、死んだ時の様な空間に居た。女神が少し悲しい様な表情で私の前に立っていた。

――マリアさん、私は貴女の記憶を入れる前に、ある出来事についての記憶に鍵を掛けたんです――

「記憶に?」

――はい、貴女を転生させるはずだった彼女は。本来彼女は死んでいたんです。それをわざわざ生き返らせ貴女の記憶を入れた――

「死んでいた? また、女神も無茶の事するわね。でも、半魔族なのは分かるけど、あの時見えた人……。あれは彼女の……母親よね?」

――そうです。マリアさん……いえ、白雪 葵さん――

 何故ここで私の、前世の名前を言ったのだろうか?
 なんだか胸騒ぎがするけど。昔の私と関係があるとは思えないし。

――この記憶を見てしまえば、貴女は人を恨み。暴走してしまう可能性があるのです――

「そんな、まさか記憶1つで何も暴走なんてするわけないじゃ……」

 ない……と言いたい、だけど凄く嫌な予感がしたのだ。学園長室から出てくる異様な気配と全身が凍えるような悪寒が。
 私がその人物を見た瞬間意識が途絶えたのも。何もかも。

――貴女の、前世の記憶もそうです。幸せの無い生活なんて貴女にとって普通です。だけど……それに精神が耐えられるかは別問題なんですよ!――

 女神は私に泣きそうな顔で見てくる。
 子供の頃なんて、忘れた。もう思い出したくもない事実。私はどんな状況であっても……生きてきた。罪があろうと、それが無実だろうと。

――この記憶だけは封印したんです、私がうっかり話したとしても。それがどうしよも無く避けられない運命でも……――

「何故そこまで……?」

――私は、この仕事に長く努めてました。それはもう100年以上……でもこんな結末1度も見たことなんて無いんですよ!――

 女神は何度も転生とやらをしたことがあるのだと思う。もし、その末路がどんなでも。でも、この女神の言い方は未来を見てきたような喋り方だ。

「知っているの? この後の未来を?」

――知っている、とは言えませんね。この時ではないです、私が何もせず……貴女の記憶を取り戻した時――

「暴走したの?」

――はい、魔力とは精神に関わるもの。不安定になれば内側から侵食し。溢れ出る魔力は災いとなり、自分の体を焼きました――

「そのまま、死に至ったという訳ね」

――私は、時間の女神にお願いして時を戻しました。その時を迎えない為に――

「でも今は違うじゃない、大丈夫よ。きっと」

――貴女は何時もマイペースでいいですね。この空間にはもう1人呼べるんですよ――

「そうなの? 今呼ぶ必要無いんじゃない?」

――いいじゃないですか、特別サービスですよ。もっとも今の貴女は、マリアさんではなく白雪 葵さんですけどね。――

 言われて気づいたけど、体と姿は前の馴染みのある姿だ。
 身長もそんなに変わりないし、身体つきもさほど大差はない。

「そうね、1人呼んでみたい人は居るけど……認めてくれるかしら」

――それは私にも分かりません、呼びたい人は分かりますよ。だから提案したんですけどね――

「記憶なんて問題ないくらいの、勢いじゃないとダメね」

――ふふっ。それでは、呼びたいと思いますので。その人の事を思い浮かべて祈っててください――

「は~い」

 そう言って私は、ひたすら彼の事を思い浮かべ、来てくれるまで祈り続けた。


次は、倒れる前のケルトさん視点ですよ!

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