半魔族の少女は料理と共に

秋雨そのは

18話 絶望の兆しと囚われの2人

まだまだ続きます!


 私達は、宿に戻ろうと街を歩いていた。

「今日は何を作ろうかしらね」

「今日は料理人の方来るんじゃないですか?」

「そっか、昨日は休みだったみたいだしね」

 エンカは、ポニーテールを揺らしながらこちらを見ていた。
 それにしても、今日はつかれた~。
 この世界に来てから、始めて仕事をしたかもしれない。

「そういえば、マリアさんは何かされてたんですか?」

「ん? してないわよ、ずっと引きこもり生活してたから」

「それにしては、店番普通にされてましたよ?」

 うぐっ! 確かにコミュ障に、店番なんて普通出来ないよね。
 でも言うわけには行かないし。

「私はこんな性格だし、普通ですよ」

 苦笑いしながら、返す。

「私はずっと王宮に篭っていましたので、何も出来ないんです……」

 エンカは幼い頃から王女に任命され、人生の大半を王宮で過ごしていたらしい。
 裕福の暮らしは逆に、人の成長を妨げるからね。

「エンカさんは王女なんですよね? 父親が命を狙われてるって聞いていい?」

「はい、良いですけど……あまり面白いではないですよ」

 事の発端は、王宮に届いた手紙らしい。

 普通に考えて、王宮に手紙を届けるのは自殺行為だが。
 相手が、悪く中でも悪徳な盗賊集団だそうだ。

 そう言いながら、私は宿屋の目の前に来た。

「それは俺達の事かい?」

 いきなり前を立った男は、細身ながらも油断ならない気配を持っていた。
 後ろに何人もの男が控えてることも。

「私達に何か用ですか?」

 私は言う、この後何が起ころうとも。
 男は薄笑い、こちらを見定める。

「そっちのポニーテールの嬢ちゃんは、お偉いさんから邪魔みたいでな、ちょっと消えてもらうぜ」

 お偉いさんとやらが、黒幕ってことかな。
 盗賊をやとって自分にとって、不都合な王女を排除しようって事だろう。

 そして、その王女は変えがいて自分の思い通りに動かすことが出来る。

 そんな事を可能とする人物は……。

「ちょっと聞かせてもらってもいいですか?」

「どうせ一緒に消えるんだから、答えてやろう」

「貴方の依頼人、もしかしてマルズダマ国王じゃないの?」

「え?」

 エンカは驚いた様子でこちらを見た。
 一方男の方は、感心した様子で答える。

「ほぅ……ご明察だ。国王は俺たちに依頼しそこの嬢ちゃんを殺してくれと頼まれた」

「それで、もう1つ私を狙うのは昔の出来事をなかった事にするためかしら」

「昔の出来事ってのは、知らないがお前さんに似た特徴の奴を殺せとの命令も出てる」

 エンカは頭にハテナマークを浮かべていた。
 あまりにも、酷いものだ。
 過去の因縁がここまで来ると、ウンザリする。

「さて、答え合わせはここまでた。お前達には一緒に来てもらう」

「分かったわ、どうせ私達じゃ殺されるだけだもの」

「ちょっと待って下さい!  何故お父様がこんな事を!」

 疑問も分かるが、今は静かにした方がいい。

 私は小声で女神を呼ぶ。

「女神返事しなさい」

ーーはいはい〜、って凄い状況じゃないですか!ーー

 呑気な状況じゃないんだけど。
 突っ込みたい気持ちを抑え、今の状況と黒幕について説明する。

――ふむふむ、面倒臭いですね。国王が敵となると何が起こってもおかしくないですよ――

「ケルトさんでも勝つのは難しいかも」

 人数差がね。

「場所は、後で教えるからそっちは、なんとかなだめて?」

――助け出す方法じゃなく、なだめるんですね――

 大丈夫よ、多分。

 そして、私達は盗賊供と共に宿屋前を後にした。


次は、別な場所でも?

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