魔剣による(※7度目の)英雄伝説

D_9

第1章『最強の魔剣』編 13話「入学式」


 チュン♪チュンチュン♪チュン♪
 
 ある部屋の窓から日差しがさしこんできている。さらに小鳥のさえずりが聞こえ、朝が迎えたことを知らせる。
 
「…………すぅ……」
 
 その部屋で寝ているのはリュートだ。あの後、彼らは学園長と分かれ、リュートとクロは異空間の家に戻った。今日から学園に行くという予定なので、そろそろ起きなければいけないのだが………
 
「……すぅ………すぅ…………」
 
 何とも心地の良い寝息を付いている。意外にも彼は朝が苦手なようで、このままでは確実に遅刻になってしまうだろう。しかし、ここには頼りになる彼専属の完璧侍女、クロがい……
 


「ハァ❤ハァ❤ハァ❤……可愛らしいです〜❤ご主人様〜〜❤」
 
 …………るのだが、残念ながら発情モードだった。しかもこの侍女、
 
「ハァ〜❤……ホントに何時間見てても見飽きません〜❤」
 
 三時間もこうしているのだ(ネコ耳と尻尾がユラユラしているのは言うまでもないだろう)。しかし、いつもは彼女も寝る時間を割くようなことはしていない(本当はしたいのだが、リュートに止められている)。ところがある事実が彼女の背中を押していた。それは………、
 
「誰もいない❤……ふふふ、こんなに遠慮をしないでご主人様を見れる機会なんて少ないですからね。……ふふふっ❤」
 
 ……と言うことである。いつもならば、他の誰かがリュートに報告してしまうためできないのだが、この場にはストッパーと呼べるものがいないのだ。さらに………、
 
「っっ!?!?!?❤❤❤」
 
 リュートが寝返りをうつ。それと同時に衣服が少しはだけてしまい、胸のあたりが見えてしまう。彼は女性にも見える整った顔をしているが、その体もとても細い。もちろん、筋肉はついているのだがそれを感じさせない色白のキレイな体である。
 
「っっっっ〜〜〜〜❤❤❤❤」
 
 クロの耳と尻尾がこれでもか、と言うくらいにピンッとなる。
 
「……も、もう我慢できません!!ご主人様〜〜〜❤❤❤」
 
 目をハートにして、某アニメのル○ンダイブをまさかの女性がやると言う前代未聞の事態が起こった(※服は脱いでいません。抱きつくような感じです。もう一度言います。脱いでいません)。しかし、リュートは自分への敵意?(今回のものが含まれるのかは微妙ではあるが……)には敏感なので、
 
「………さぁ、クロ。行きますよ」
 
 いつの間にか、ベットから出ていたリュートがベットに飛び込んだクロに向かって言う。
 
「……………はい」
 
 

 
「……ごちそうさまでした」
 
「お粗末でした」
 
 なんとも、穏やかな雰囲気である。先ほどの騒動が嘘のようである。
 
「クロ。準備はできていますか?」

「はい。すべて終わっています」

「では、行きましょうか」
 
「はい」
 
 二人は朝食を食べ、異空間から出る。着ているのは学園の制服である。白シャツにブレザーを着て青いネクタイをしている。これは一年は赤、二年は青、三年は緑と決まっているからだ。二人が制服を見せあった際に、
 
「ご主人様!素敵です❤お似合いです❤カッコイイです〜〜❤❤」
 
「ありがとうございます、クロ。私よりもクロのほうがよく似合ってると思いますよ。とても、可愛らしいです」

「そ、そんなことはありません…❤あ、ありがとうございます。………可愛いって言われちゃった❤」
 
 と言う一コマがあったのは言うまでもないだろう。
 


 
 そうして、二人が学園に空間魔法で移動すると、
 
「あっ!いたっ!」
 
 リーシャとレイがいた。
 
「おはようございます。リーシャ、レイさん」
 
「おはよう。リュート、クロさん」
 
「おはようございます。リュート様、クロ」
 
「おはようございます。リーシャ様、レイ」
 
 挨拶を交わす。クロとレイは、思った以上に仲良くなっていることが分かるだろう。
 
「今日の全校集会であなたたちのことを紹介するらしいわ」
 
「そうですか。では、学園長室に行けばいいでしょうか?」
 
「はい。それでよろしいかと」
 
「分かりました。それではお二人とも。またあとでお会いしましょう」
 
 軽く礼をしてクロと共に学園長室に向かう。
 
「まぁ、彼のことは心配するだけ無駄よね」
 
「ふふっ。そうですね」
 
 二人は細く女性のような彼の細い背中に頼もしさを感じていた。
 


 
「『……………静かにしてください。……それでは、中間報告集会を始めます』」
 
 学園の講堂に学園生900人近くが集まっていた。これは毎週の雷の日に行われているものであり、一週間の中間の報告などをしている。
 
「『………これで、中間報告を終わりにします。それでは、学園長。よろしくお願いします』」
 
 司会の教師がラナにマイク(拡声魔法付与)を渡す。
 
「コホン。『…今の話にもあったように最近怪我をしている生徒が多いから全員集中すること。……とりあえず、この話はこれくらいにして、今日は別の報告があります』」
 
 ザワザワ
 
 いつもとは明らかに違う学園長に周りがザワつく。彼女は真面目な故にいつも時間ギリギリまで話し、しばしば、時間オーバーをすることも……。その彼女がこんなにも早く話を終わらせた……何事だろうと学園長の次の言葉に耳を傾ける。
 
「『実はこの学園に留学生が来ます』」 
 
「「「「おぉーーー!!!!」」」」
 
 ラナからそう聞かされた生徒たちは騒ぎ始める。
 
「マジか!女子か?」
 
「ううん!きっと、男子だよ!」
 
「カッコイイ男の子だったらいいなぁ……。この学校の男子ってイマイチパッとしない人が多いし……」
 
「「ねぇーー!」」
 
「ちきしょう……。結局、顔かよ……」
 
「「…………」」
 
 特殊な学園ではあるが、その本質はやはり学生らしいところもあることに少し安心したリュートであった。それと同時に、
 
「(クロは大丈夫……というか、期待を軽く超えていますね。私にはあまり期待されても困るのですが…)」
 
 などという何とも彼らしい無用な心配事をしていた。彼からすれば、クロたちにとって、一体自分のどこが良いのだろうと思っているようだ(むしろ、どこに欠点があるのだろうか……)。
 
「『静かに!………それでは、紹介します。』……入ってきて」
 
 そう言われて、二人が壇上に姿を現す。女子生徒はリュートの美貌?に心惹かれている人が多く、男子生徒はリュートへの嫉妬の視線、そしてクロの美貌に心を奪われている人も多い。美男美女がいきなり目の前に現れたのだ。この反応になってもおかしくはないだろう(彼らの姿はスクリーンに雷魔法の応用により大きく映し出されている)。
 
「『では、自己紹介をお願いします。』……どうぞ」

 ラナがリュートに自己紹介を促す。
 
「はい。『……初めまして、この度この学園に留学しました。リュートと申します。2年のAクラスで、魔法剣士ですが無属性魔法しか使えません。皆さんとはこの二年間、仲良くしていきたいと思っていますので、よろしくお願いします』」
 
 そう言ってキレイに頭を下げる。その容姿通り?の高い声で自己紹介をする少年に対して、周りの反応は……
 
「やだっ!!カワイイーー!」
 
「あの子ってホントに男の子?男の娘じゃないの?」
 
「どっちでもいいよ〜!カワイイ服でも、カッコイイ服でも着せてあげたら絶対似合うよ〜〜!」
 
 という女子の反応と……
 
「クソッ!…やっぱり男は顔かよっ!!」
 
「……なぁ、アレってマジで男か?」
 
「男………だろう」
 
「いや……もう別に男でもいいんじゃないか…」
 
「おいっ!!新しい扉を開こうとすんなよっ!!」
 
「あら〜、ならわたしでもいいんじゃないかしら〜〜」
 
「おっおい、ちょっと待て!!このゴリラオカマ!!俺はアイツのことを言ってただけで……ってNOoooooooo!!!!」
 
 ………一人犠牲になった。なかなか危ない連中も多いようだ。無属性しか使えないと言うことをあまり気にしていない人も多い。一方で、
 
「チッ!…落ちこぼれか」
 
「顔が良いだけじゃねーか」
 
 などと彼を罵倒する貴族たちもチラホラ見える(このときクロのネコ耳がピクッと動いていたのは、リュートしか気づいていないだろう)。
 
 そして、次はクロの番である。
 
「『初めまして。私はクローセルと申します。適正は氷です。リュート様と同じ2年のAクラスです。よろしくお願いいたします』」
 
 きれいに頭を下げる。そのキレイな動作に見惚れるものも多く、女子は嫉妬するのもバカらしくなり彼女に羨望の眼差しを。男子は、
 
「ネコ耳、尻尾。さらに美少女……」
 
「完璧すぎるだろ………」
 
「いや、あんな彼女いたらマジ幸せだろうなぁ……」
 
「これは……二学年の四大美女に一人追加されたぞ!早速、応援団を作らなければ!!」
 
 などと好き勝手に言っていた。クロは内心、
 
「(き、気持ち悪いです。私をそんな色欲の混じった目で見ていいのはご主人様だけ……………ゲフンゲフン。とにかく気持ち悪いですね)」
 
 などと思っていた。貴族などは彼女の体などをジロジロ見ており、クロは背筋が凍る思いである。それに対してクロは、
 
「(……これはもう、今日は添い寝してもらうしかありませんね!)」
 
 などとポジティブに考えて、今日の夜のことを楽しみにしていた。そして彼女が次に放った言葉は、
 
「『それと、私はリュート様の魔剣ですのでよろしくお願いします』」
 
「「「「「…………………」」」」」
 
 会場を凍らせることとなった。
 
 
 

                 To be continue.

コメント

  • D_9

    申し訳ありません!!フォローが100になって浮かれていたようで、出す順番を間違えてしまいました。読者の皆様には、あれ?と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?本当に申し訳ありませんでした

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