魔剣による(※7度目の)英雄伝説
第1章『最強の魔剣』編 8話「ご主人様」
六人が庭に出てみると、リーシャとレイからしたら非日常の、それ以外からしたら毎日の光景が広がっていた。
「私の方が多いに決まってるでしょうが!!」
「それはコッチのセリフです!最後の魔物を倒したのは私ですよ!!」
「な~に言ってんのよ!最後のアレはどう見ても私の【炎の槍】の方が先に届いていたでしょうが!!あんた、頭おかしいんじゃないの?!」
「そちらこそ、目が腐っているんじゃないですか?アレはどう考えても、【水の矢】の方が先です!!」
「私に決まってるでしょ!このバカ!!」
「私です!このちびっこ!!」
「なっ!?……私って言ってんでしょうが!!!」
「だから、私だと言っています!!!」
赤いショートの髪の少女と青い髪をハーフアップにした女性が魔法を行使しながら、醜く言い争っていた。
「はぁ……この二人は、ずっとこうしてなきゃすまないのか?」
「あらあら〜。やっぱり、この二人も仲良しですね〜〜」
「………おぬしの目の方が腐ってると思うんじゃが……」
「「…………」」
インドラは呆れてため息をついており、テラスはいつも通りニコニコと。イザナミはどうしても認めさせたいのか、先程と同じようなことを言っており、リーシャとレイは本日何度目か分からない絶句をしていた。すると、
「……やめなさい……」
「「っ!?!?」」
突然クロの冷たく冷え切った声が聞こえる。思わず、リーシャとレイもそちらに顔を向けてしまう。そして、赤色の髪の少女と青色の髪の女性が動きを止め、壊れた機械のようにギリギリと首を動かしながら、顔を声のした方に向ける。そこには………
「何をなさっているですか?お二人は」
「「(ガタガタガタガタ)」」
冷たい笑みを浮かべた鬼がいた。魔法を使っているわけではないはずなのに、笑みを向けられている二人は体を震わせることしか出来なかった。
「何をなさっているんですか?」
「あ、いや……」
「え、えっと……」
クロがこんなに怒っている理由は、
「……私が育てている花園の中でなにをしているんですかね?」
そう。二人が喧嘩をする事については彼女は怒っていない。彼女が怒っているのは、二人が彼女の花園で暴れていることだ。そして、運の悪いことにここは彼女が『ご主人様』のために用意していた場所なのである。
「そこは私が他の花園よりも特に大事に……。えぇ、それはもう大事に大事に育てていた花園なのですが……。お二人はご存知ではありませんでしたか?」
「あ、いや…………」
「え、えっと…………」
「どうでしたか?」
先ほどよりも怒気を放ちながらクロが問いかける。
「「し、知っていました!!」」
「そうですよね?ご存知でしたよね?………にも関わらず、何故ここで暴れているんですか?」
さらに彼女の魔力が高まっていく。これには流石に、
「「ひぃっ!?!?」」
と悲鳴を上げる、容疑者二名。
「ちょっと、クロ!?」
とインドラが慌てたように叫ぶ。
「あらあら〜。流石にマズイですね〜」
といつもの表情のように見えるが、その額には冷や汗が見えるテラスがそう言う。
「クロ!待て、落ち着くんじゃ!!」
イザナミも思わず叫ぶ。
「「………」」
リーシャとレイはその圧倒的な魔力量に何も言えず………
「………覚悟してください」
とクロが言うと、上空に【氷の矢】が現れる。その数は数千、数万。いや、おそらくもっと多いだろう。もはや、それは幻想的にも見える。とは言え、この状況ではこの世の終わり、もしくは冥土の一歩手前に近いだろうが……。
「「「「「「「………!!!」」」」」」」
クロはそのまま、【氷の矢】を発射しようとしたが………
次の瞬間、突然【氷の矢】が一瞬にして全て砕け散る。
「!?」
クロが驚いたような表情をする。すると、クロとリーシャ、レイ以外がホッとした表情を浮かべる。すると、
「……クロ。少し落ち着いてください」
その声が聞こえてきた方に振り帰ると、一人の少年と一人の少女が立っていた。少女の方はボブカットで薄い緑の髪をしており、身長は赤髪の少女と同じくらい。しかし、立派なお胸様を持っている。いわゆるロリ巨乳、と言うやつだろうか。
それ以上に存在感のある隣の少年は黒髪に黒い瞳、痩せ型で身長は170より少しあるぐらいだろうか。そして、リーシャとレイが思ったのは何よりもその綺麗すぎる顔立ちだ。まさに絶世の美少年である。この世界にはエルフ族が存在し、全員が美男美女の種族とされているが、この少年は正直エルフ族よりもはるかに整った顔をしている。王族のパーティーなどによく出席している二人ではあるが、これほどの男性は見たことが無かった。
そして、我に返ったクロがその少年の方を向いて、こう言った。
「ご、ご主人様!?」
と………。
「………なるほど、そのような事があったのですね」
一通り事情を聞いたご主人様と呼ばれた少年はそう言った。
「あ、あの、ご主人様。いつ頃からお目覚めになっていたのですか?」
なんとも歯切れが悪い。クロは先ほどからこの調子である。
「ついさっきです。眠っていたら、突然アネモイが寝室に泣きながら入ってきて、助けてくださいと言われたので何事かと急いで出てきたのです」
その話を聞いてクロは顔を青くして、
「も、申し訳ありません!ご主人様!!睡眠の邪魔をしてしまいました!!!」
と、勢い良く頭を下げる。先ほどの様子からは想像もできないその姿に、リーシャとレイは驚きを隠せずにいた。
「いえ、気にすることはありませんよ、クロ。私もすぐに起きたでしょうから」
「で、ですが……」
尚も食い下がるクロ。
「私が言っても信じられませんか?」
「い、いえ!……ですが、ご主人様はお優しいので私に気を遣って言ってくださっているのかと……。迷惑をお掛けしてしまっているのは分かっていますので……」
クロは、ショボーンと言う文字が背中に見えるほど落ち込んでいる。ネコ耳や尻尾もふにゃあとしてしまい、元気が無いように見える。クロにとって、この少年こそが全てであり最も信用、信頼している存在である。そして、彼のお陰で自分がここにいられる。だからこそ、自分にできることは全てやってあげたいとクロは常日頃から思っているのだ。だから、逆に彼の迷惑になるようなことは何であっても許されないことだとも自分に言い聞かせている。にも関わらず、今回はわざわざご主人様にお手を煩わせてしまった。クロは、それをとても気にしてしまうのだ。
「……迷惑などと思ったことは一度もありませんよ」
「え?」
少年がポツリと言った。
「毎日私を起こして、朝から全員分の朝食を作って、掃除をして、この庭の管理をして……。感謝こそすれど、迷惑などと思うことはありえませんよ」
「あっ」
そう言って、少年はクロの頭を優しく撫でる。
「いつも、ありがとうございます。クロ」
「っ!」
そう言って、優しい笑みを浮かべる。それだけで、クロの顔は真っ赤に染まる。
「……それからヘスティア、サラス」
「「は、はい!!」」
赤髪の少女と青髪の女性は背中をビクッとさせながら、前に出る。
「また、あなたたちは競争していたのですか?」
「「は、はい」」
「やるな、とは言いませんが………。節度はわきまえて下さい。いいですね」
「はい……。ごめんなさい…」
「申し訳ありません…」
「謝る相手は私ではありませんよ?ちゃんとクロに謝ってください」
「ご、ごめん…。クロ」
「ごめんなさい…。クロさん」
「……いえ、私もやり過ぎました。お二人とも、申し訳ありませんでした」
そうして三人は仲直りをした。この光景を見たリーシャとレイはポカンとしていた。あの収集のつかないであろう状況が一瞬にして、解決してしまったのだから。
「さて………。それでは、最後の仕上げをしましょうか」
そう言うと少年は、クロの花園(だった場所)に視線を向け手を前に出し、ある魔法を唱えた。
「……【再生】」
すると、彼の体から魔力が溢れ出し花園に集まる。そして、
「えっ!?!?」
「っ!?!?」
リーシャとレイが声を上げて驚くのも無理はないだろう。なぜなら、先ほど飛び散ってしまった花たちが時間を戻すように元通りになっていくのだから。その光景はこの世界の物ではないような幻想的な光景だった。そして、
「……こんなところですかね」
そこには、色とりどりの花が植えられていた。花園は何事も無かったかのようにそこにあった。
「ご主人様……!」
クロは思わず声を上げ、少年の方を向く。
「あなたがせっかく私のために作ってくれた花園ですから」
と微笑みながら言った。その優しく綺麗な笑顔に女性陣は……
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
顔を赤くして見惚れてしまう。レイやあのテラスですら、ぼーっとしている。そんな彼女たちを見て、
「みなさん、どうされたのですか?」
と少年は心底不思議そうな表情を浮かべていた。
To be continue.
「私の方が多いに決まってるでしょうが!!」
「それはコッチのセリフです!最後の魔物を倒したのは私ですよ!!」
「な~に言ってんのよ!最後のアレはどう見ても私の【炎の槍】の方が先に届いていたでしょうが!!あんた、頭おかしいんじゃないの?!」
「そちらこそ、目が腐っているんじゃないですか?アレはどう考えても、【水の矢】の方が先です!!」
「私に決まってるでしょ!このバカ!!」
「私です!このちびっこ!!」
「なっ!?……私って言ってんでしょうが!!!」
「だから、私だと言っています!!!」
赤いショートの髪の少女と青い髪をハーフアップにした女性が魔法を行使しながら、醜く言い争っていた。
「はぁ……この二人は、ずっとこうしてなきゃすまないのか?」
「あらあら〜。やっぱり、この二人も仲良しですね〜〜」
「………おぬしの目の方が腐ってると思うんじゃが……」
「「…………」」
インドラは呆れてため息をついており、テラスはいつも通りニコニコと。イザナミはどうしても認めさせたいのか、先程と同じようなことを言っており、リーシャとレイは本日何度目か分からない絶句をしていた。すると、
「……やめなさい……」
「「っ!?!?」」
突然クロの冷たく冷え切った声が聞こえる。思わず、リーシャとレイもそちらに顔を向けてしまう。そして、赤色の髪の少女と青色の髪の女性が動きを止め、壊れた機械のようにギリギリと首を動かしながら、顔を声のした方に向ける。そこには………
「何をなさっているですか?お二人は」
「「(ガタガタガタガタ)」」
冷たい笑みを浮かべた鬼がいた。魔法を使っているわけではないはずなのに、笑みを向けられている二人は体を震わせることしか出来なかった。
「何をなさっているんですか?」
「あ、いや……」
「え、えっと……」
クロがこんなに怒っている理由は、
「……私が育てている花園の中でなにをしているんですかね?」
そう。二人が喧嘩をする事については彼女は怒っていない。彼女が怒っているのは、二人が彼女の花園で暴れていることだ。そして、運の悪いことにここは彼女が『ご主人様』のために用意していた場所なのである。
「そこは私が他の花園よりも特に大事に……。えぇ、それはもう大事に大事に育てていた花園なのですが……。お二人はご存知ではありませんでしたか?」
「あ、いや…………」
「え、えっと…………」
「どうでしたか?」
先ほどよりも怒気を放ちながらクロが問いかける。
「「し、知っていました!!」」
「そうですよね?ご存知でしたよね?………にも関わらず、何故ここで暴れているんですか?」
さらに彼女の魔力が高まっていく。これには流石に、
「「ひぃっ!?!?」」
と悲鳴を上げる、容疑者二名。
「ちょっと、クロ!?」
とインドラが慌てたように叫ぶ。
「あらあら〜。流石にマズイですね〜」
といつもの表情のように見えるが、その額には冷や汗が見えるテラスがそう言う。
「クロ!待て、落ち着くんじゃ!!」
イザナミも思わず叫ぶ。
「「………」」
リーシャとレイはその圧倒的な魔力量に何も言えず………
「………覚悟してください」
とクロが言うと、上空に【氷の矢】が現れる。その数は数千、数万。いや、おそらくもっと多いだろう。もはや、それは幻想的にも見える。とは言え、この状況ではこの世の終わり、もしくは冥土の一歩手前に近いだろうが……。
「「「「「「「………!!!」」」」」」」
クロはそのまま、【氷の矢】を発射しようとしたが………
次の瞬間、突然【氷の矢】が一瞬にして全て砕け散る。
「!?」
クロが驚いたような表情をする。すると、クロとリーシャ、レイ以外がホッとした表情を浮かべる。すると、
「……クロ。少し落ち着いてください」
その声が聞こえてきた方に振り帰ると、一人の少年と一人の少女が立っていた。少女の方はボブカットで薄い緑の髪をしており、身長は赤髪の少女と同じくらい。しかし、立派なお胸様を持っている。いわゆるロリ巨乳、と言うやつだろうか。
それ以上に存在感のある隣の少年は黒髪に黒い瞳、痩せ型で身長は170より少しあるぐらいだろうか。そして、リーシャとレイが思ったのは何よりもその綺麗すぎる顔立ちだ。まさに絶世の美少年である。この世界にはエルフ族が存在し、全員が美男美女の種族とされているが、この少年は正直エルフ族よりもはるかに整った顔をしている。王族のパーティーなどによく出席している二人ではあるが、これほどの男性は見たことが無かった。
そして、我に返ったクロがその少年の方を向いて、こう言った。
「ご、ご主人様!?」
と………。
「………なるほど、そのような事があったのですね」
一通り事情を聞いたご主人様と呼ばれた少年はそう言った。
「あ、あの、ご主人様。いつ頃からお目覚めになっていたのですか?」
なんとも歯切れが悪い。クロは先ほどからこの調子である。
「ついさっきです。眠っていたら、突然アネモイが寝室に泣きながら入ってきて、助けてくださいと言われたので何事かと急いで出てきたのです」
その話を聞いてクロは顔を青くして、
「も、申し訳ありません!ご主人様!!睡眠の邪魔をしてしまいました!!!」
と、勢い良く頭を下げる。先ほどの様子からは想像もできないその姿に、リーシャとレイは驚きを隠せずにいた。
「いえ、気にすることはありませんよ、クロ。私もすぐに起きたでしょうから」
「で、ですが……」
尚も食い下がるクロ。
「私が言っても信じられませんか?」
「い、いえ!……ですが、ご主人様はお優しいので私に気を遣って言ってくださっているのかと……。迷惑をお掛けしてしまっているのは分かっていますので……」
クロは、ショボーンと言う文字が背中に見えるほど落ち込んでいる。ネコ耳や尻尾もふにゃあとしてしまい、元気が無いように見える。クロにとって、この少年こそが全てであり最も信用、信頼している存在である。そして、彼のお陰で自分がここにいられる。だからこそ、自分にできることは全てやってあげたいとクロは常日頃から思っているのだ。だから、逆に彼の迷惑になるようなことは何であっても許されないことだとも自分に言い聞かせている。にも関わらず、今回はわざわざご主人様にお手を煩わせてしまった。クロは、それをとても気にしてしまうのだ。
「……迷惑などと思ったことは一度もありませんよ」
「え?」
少年がポツリと言った。
「毎日私を起こして、朝から全員分の朝食を作って、掃除をして、この庭の管理をして……。感謝こそすれど、迷惑などと思うことはありえませんよ」
「あっ」
そう言って、少年はクロの頭を優しく撫でる。
「いつも、ありがとうございます。クロ」
「っ!」
そう言って、優しい笑みを浮かべる。それだけで、クロの顔は真っ赤に染まる。
「……それからヘスティア、サラス」
「「は、はい!!」」
赤髪の少女と青髪の女性は背中をビクッとさせながら、前に出る。
「また、あなたたちは競争していたのですか?」
「「は、はい」」
「やるな、とは言いませんが………。節度はわきまえて下さい。いいですね」
「はい……。ごめんなさい…」
「申し訳ありません…」
「謝る相手は私ではありませんよ?ちゃんとクロに謝ってください」
「ご、ごめん…。クロ」
「ごめんなさい…。クロさん」
「……いえ、私もやり過ぎました。お二人とも、申し訳ありませんでした」
そうして三人は仲直りをした。この光景を見たリーシャとレイはポカンとしていた。あの収集のつかないであろう状況が一瞬にして、解決してしまったのだから。
「さて………。それでは、最後の仕上げをしましょうか」
そう言うと少年は、クロの花園(だった場所)に視線を向け手を前に出し、ある魔法を唱えた。
「……【再生】」
すると、彼の体から魔力が溢れ出し花園に集まる。そして、
「えっ!?!?」
「っ!?!?」
リーシャとレイが声を上げて驚くのも無理はないだろう。なぜなら、先ほど飛び散ってしまった花たちが時間を戻すように元通りになっていくのだから。その光景はこの世界の物ではないような幻想的な光景だった。そして、
「……こんなところですかね」
そこには、色とりどりの花が植えられていた。花園は何事も無かったかのようにそこにあった。
「ご主人様……!」
クロは思わず声を上げ、少年の方を向く。
「あなたがせっかく私のために作ってくれた花園ですから」
と微笑みながら言った。その優しく綺麗な笑顔に女性陣は……
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
顔を赤くして見惚れてしまう。レイやあのテラスですら、ぼーっとしている。そんな彼女たちを見て、
「みなさん、どうされたのですか?」
と少年は心底不思議そうな表情を浮かべていた。
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