魔剣による(※7度目の)英雄伝説

D_9

第1章『最強の魔剣』編 6話「何これ?」

 
「えっと………」
 
「ど、どういうことでしょうか?」
 
 リーシャとレイは黒竜に問いかける。普通、今の流れなら……




 

『フハハハ!!その程度とはなっ!!拍子抜けだ!!!これでもくらって死んでしまえっ!!!!』
 
 




 ……みたいな感じで、二人はやられると思っていたのだが、現実はと言うと………
 
『ん?じゃから、合格じゃっ!!』
 
 などと、機嫌良さそうに話す黒竜。
 
『そっちの嬢ちゃんもすまなかったのぉ、いきなり束縛してしもうて…』
 
 と言って、突然黒竜が頭を下げる。あの巨体が一人の少女に頭を下げる姿は、なんともシュールな光景であった。
 
「えっ!あ、いや!だ、大丈夫ですから…」
 
 レイも半ばパニックになりながら、なんとか返事をする。
 
『そう言ってもらえると、助かるのぉ』
 
 そう言うと、黒竜の体が光り始める。
 
「きゃっ!」
 
「な、なに?」
 
 そして、光が収まると目の前にあったはずの黒竜の巨体が消えていた。代わりに………
 
「それじゃあ、行こうかの?」
 
 着物の女の子が立っていた。
 
「「へ?」」
 
「ん?どうしたのじゃ?………あぁ、この姿か?こっちが本来の姿じゃよ。あれは魔法で竜の姿をしただけじゃ」
 
 この少女は黒髪をツインテールのように結んでおり、着物と言っても普通の着物ではない。黒と紫を基調としたもので、丈はミニスカート程度しかなく、彼女の容姿と相まって可愛らしい感じである。
 
「そ、そうなんですか?」
 
「そうじゃよ。まぁ、最初がアレじゃからなぁ……すぐに慣れてくれとは言わん。徐々に慣れていってくれ」
 
「わ、わかりました」
 
「うむ!では行こうか!」
 
 というと、さっさと歩き始めてしまう。
 
「あ、あの!どこへ行くのですか?」
 
 そう聞くと、黒髪の少女は不思議そうな顔をして
 
「ん?お主ら、主様に会いに来たのではないのか?」
 
「「主様?」」
 
「「「?」」」
  
 三人とも頭にクエスチョンマークを浮かべる。すると少女は、
 
「……すまんが……少し話を聞かせてもらってもいいかの?」
 
「は、はい」
 
 



 
「……なるほどのぉ…」
 
 話を聞き終えた黒髪の少女、イザナミはお互いに自己紹介を終えたあと、今の国や歴史などの情報を求めた。
 
「そこまでとは思わなかったのぉ…」
 
「は、はぁ」
 
「………」
 
 イザナミは今の話で全てわかったようだが、二人にはさっぱりである。すると、イザナミが何かを思いついたようにニヤリと笑うと、
 
「とりあえず、行こうかの」
 
「え!?あの、説明は……」
 
 そう聞かれてイザナミはニヤリとして、こう言った。
 
「お楽しみじゃ!」
 
 などと言った。
 
 



 
 そして、三人は奥の扉の前に立つ。なんとも不思議な雰囲気のする扉だとリーシャとレイは思う。すると、
 
「おーい!クロはおるか!客人じゃ!開けてくれ!」
 
 そう言うと、扉が少しずつ開かれる。そして、中から出てきたのは……
 
「珍しいですね?お客様なんて……」
 
 そういって出てきたのは、メイド服を着たキレイな銀髪の女性であった。何より特徴的なのは頭の可愛らしい耳と尻尾が生えていることである。髪の長さはミディアムぐらいで胸は普通。メイド服に関しては、レイも着ているがレイのは丈が短く戦闘用になっている。クロのメイド服はロングスカートであった。
 
「初めまして。私はクローセルと申します。クロとお呼びください」
 
 そう言って、頭を下げる。その姿は王女であるリーシャ、侍女であるレイからしても素晴らしいものであった。
 
「ご丁寧にありがとうございます。私は【ロイズテイル】の第二王女、リーシャ・アルテウスと申します」
 
「リーシャ様の侍女をしております。レイと申します」
 
 二人はそう言って頭を下げる。
 
「王女様がこんなところまで……お疲れでしょう?さぁ、どうぞ中へ」
 
「はい。では、お言葉に甘えて」
 
 そう言って四人は中へ入る。すると………
 
「えっ!!」
 
「これは……」
 
 リーシャとレイが思わず声を上げる。何故なら、そこは……城の内部のような作りになっていたからである。
 
「「…………」」
 
「ん?どうしたのじゃ?」
 
「……あぁ。なるほど。これに驚いているんですね」

「む?あぁ、そうか。そういえば、忘れとったのぉ……」
 
「あ、あの。これって一体……」
 
 明らかに先程の洞窟にはこんなスペースは無かった。だとすれば一体これはどういう事なのだろうか……
 
「これは空間魔法により、異次元に繋いであるのです」 
 
「「空間魔法!?!?」」
 
 二人が驚くのも無理はない。空間魔法とは闇魔法と同じく、伝説的な魔法であり、現在の使い手は一人もいないとされている魔法である。
 
「はい。ここはご主人様がお作りになった異次元の一つです」
 
「「…………」」
 
「ま、わしらにはここまでの大規模では使えぬのじゃがな」
 
「はい。そもそも私は魔法が使えませんし……やはりご主人様は素晴らしい方ですね。……これは、これまでの認識を改めなくてはいけません!」
 
 耳をピコピコさせ、尻尾をピンとさせ、興奮したようにクロが言う。
 
「……お主、それ毎日言っておらんか?」
 
「当たり前です!私ごときがご主人様の素晴らしさを全て理解できる訳がありません。だからこうして毎日、少しずつご主人様の素晴らしさを理解して、再認識、再確認しているのです」
 
「………そうか」
 
 呆れたようにイザナミが言う。
 
「「…………」」
 
 リーシャとレイは先程までのクロとのギャップに衝撃を受けていた。最初のクロの印象は、レイよりも冷静沈着でとにかく落ち着いている、と言う認識がリーシャにはあった。レイも自分よりも出来る、と感じていた。ところが、『ご主人様』の話が出てからは人が変わったように饒舌になり、ニヤニヤしながら頬を赤らめていた。その表情はまるで、英雄に憧れる少女のようでもあり、また恋する少女のようであった。
 
「ハァ…ご主人様❤素敵です❤」
 
 クロは手を頬に当て(何を思い出しているのかは分からないが)、耳をフニャフニャさせ、イヤンイヤンと首を振っていた。首と同じように尻尾もユラユラ揺れている。
 
「おーい……戻ってこい!」
 
 と、イザナミが(明らかに慣れている手つきで)ジャンプしてクロの頭を叩く。
 
「…………はっ!も、申し訳ありません!知らないうちにいろいろ妄想してしまっていました…」
 
「はぁ。それ毎回主様に突っ込まれていないか?」
 
「お、おっしゃるとおりです……」
 
 耳と尻尾が先程とは違った意味でふにゃあとしてしまう。
 
「……ま、ともかく行くぞ。
(…主様なら笑ってかわいいとか言うんじゃろうなぁ…)」
 
「「………」」
 
 ……なんとも濃いメンツであった……

 



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