魔剣による(※7度目の)英雄伝説

D_9

第0話「6度目の魔王討伐」

 ─西暦4600年─

 少年と少女たちの目の前に広がるのは荒れ果てた荒野。ここで行われていた戦いが神々の戦いである、と言われても不思議ではないほどの荒野となっていた。あるところは焼け焦げ、あるところは洪水でも起こったかのように。またあるところは暴風が襲ったかのように。他にも雷が落ちたような所や氷漬けにされた所、何か神々しいものに浄化されたようなところ、何かに存在を刈り取られたかのような所。まさにこの世の地獄、またはカオスな状況であった。そんな中、

「・・・ようやく終わりましたね。」
 
 少年が呟いた。その声は少女のような高い声で、少年の中性的なルックスとからみあい、少年は少女と思われてもおかしくはない見た目であった。

「・・・そうですね。ようやく・・・私も役目を果たすことが出来ました。」
 
 薄い緑色の髪の少女は嬉しそうな、それでいて悲しそうな表情を浮かべる。

 「・・・あなたはどうするのですか?・・・いえ、あなたはどうしたいのですか?」
 
 少年は少女に尋ねる。それを聞いて少女ははっとして顔を上げる。なぜなら、これまでの少女の人生は選択肢が1つもないないものであった。いや、すべての選択肢を決められていた、というのが正しいだろう。少女には非常識な力があった。それだけの理由で勇者にさせられて、魔王を倒せなどと命令されここまできたのである。しかし、役目を終えた今、少女を縛るものは何もない。だからこそ、少年は少女に尋ねたのである。さらに少年は

「以前あなたに話したアレですが・・・あなたが望むのならば、私はアレをやります。私は・・・あなたの剣ですから」
 
 優しく微笑んで彼は言った。それを聞いた少女は・・・泣いてしまう。この世界で唯一自分を助けてくれて、自分を見てくれて、自分を受け入れてくれて・・・自分が惚れた少年からそのようなことを言われたのだ。泣かないほうがおかしい。ところが少年からすると予想外の出来事だったようで

「!? あ、あの大丈夫ですか? すみません。なにか気に触ることを言ってしまったのでしょうか。申し訳ありません。ユキたちにもよく鈍感だと言われるのですが、何が悪いのかさっぱり分からなくて・・・」

などと見当違いのことを言っている。普段は慌てることなどないので珍しい光景だ。そんな相変わらず鈍感な彼に少し呆れつつ、少女は少年の胸に飛び込み、満面の笑みでこう言った。

「・・・私をあなたの魔剣にしてください!!」
 
 こうして、世界は6度目の危機から救われたのであった。

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