俺が出会ったメデューサはなんか他の奴とは違うようです

朝霧 えてる

第19話 〜メデューサVS人間5〜

「聞いてー!!!!!!!!!!」

風魔法にのせ、声を戦場全体に届けたサンシア。一気に皆が手を止めサンシアの方を見る。

「停戦を要求しまぁぁぁぁぁぁす!!!!!!」

皆が目を丸める。血を流しながら戦う人間、街を守ろうと必死なメデューサ。多くの者がその言葉にホッとした。だが、中にはもちろん話を聞かない者もいた。

「聞いてよっ…。」

サンシアが涙目で言う。そしてどうしても聞かない者がいるためサンシアは最終手段へと出た。

「ごめんねっ。」

ぼそっと呟き、覚醒した。そして、風魔法で空にぱっと飛び、人間を皆、顔の下まで石にした。

「な、なんだ?!」

「こんな大勢を一気にっ!!!」

メデューサも人間も驚いた。だがメデューサはチャンスだと、動き出した。

「ダメっ!」

サンシアが止めるもメデューサたちは聞かない。その時だった。

「おい、喋ってんだろうが…。聞けよ…。」

メデューサが顔の下まで凍った。パッと声のするほうを見ると、奏真が苦しみながらも立ち上がり、メデューサを皆氷にしたのだった。

「あいつも何者だ?!」

サンシアも凍ってしまったため、奏真はサンシアに近づき、氷化を解いた。

「わ、りぃ、サンシア。」

そういい奏真はその場に倒れ込んだ。

「あぁっ。奏真さんっ。無茶するからっ。」

「ははっ。なんで俺生きてんだ…。」

「そ、それは後でっ!」

そういいサンシアは固まった戦場にまた声を上げた。

「メデューサ側のリーダー!人間側のリーダー!どこにいる!誰だ!」

奏真は意識が朦朧としながらサンシアの話を聞いていた。いままでに聞いたことのない口調だった。

「突然成長かよ…。」

奏真はぼそっと呟いた。

「メデューサ側のリーダー、シェルア様はここです。今は重症で大きな声は出せません!」

シェルアをおぶっていたメデューサが手を挙げた。サンシアは頷き人間側のリーダーであると思われるパールを見たがパールは困り顔で手は挙げず一人の男を見た。

「今回のリーダーは俺だ。」

意識を取り戻したシュランが手を挙げた。サンシアは誰だかわからなかった。

「ゴーメルさんがメデューサにより殺されたことと、街一つを奪われたため、メデューサの本拠地を落とそうという事だった。」

その言葉にサンシアはどこからどう話せばいいか分からなかった。

『お父さんを殺したのはお姉ちゃん、メデューサの中には人間を殺したくない人だっている…。シェルアちゃんがあんな状態…、アシェフくんも今いない。イノちゃんも…奏真さんも…。今事実を伝えれるのは私だけだっ。』

サンシアは覚悟を決め息を飲んだ。

「お姉ちゃんっごめんねっ。」

最初にぼそっと呟き、深呼吸をした。

「おとうさ…ゴーメルさんを殺したのは私のお姉ちゃん、人間です!ゴーメルさんはメデューサでした!人間をメデューサに変える研究をしており、私はその実験台にされました!姉はそれに怒りゴーメルさんを殺し、姉も死にました!それに、メデューサの中には人間を殺す気のない者もいます!人間との共存を望んでいるものもいます!!信じてくれなくてもいいです!でも、私はバンスレー家次期王として、ここに提案をします!人間と!メデューサの!共存できる街を作りましょう!!!!!!」

言い終わるとサンシアの息は切れていた。サンシアは人間の石化を解いた。力がなくなり石化を解けなくなっては困るからだ。石化を解くと人々は動き出した。だが誰もメデューサに手を出さなかった。奏真は朦朧としながら氷化を解いた。メデューサもまた同じく手を出さなかった。

「無理に決まってんだろ。」

「こんな戦いの後に今更何よっ。」

反対の声が多かった。そして、周りにいた人間がこそこそと何かを話したあと、数人がサンシアを囲んだ。奏真は横に投げ飛ばされた。イノのくれた命でなんとか生きているが、まだ死の危険はある。

「そ、奏真さんっ!」

「実現させたいなら、まず行動で示せ。」

ひとりがそういい、サンシアに殴りかかり始めた。そして能力で攻撃も始めた。

「?!」

「実現させたいなら抵抗なんてできないよなぁ?」

「っつ…!」

サンシアはされるがままに殴られ蹴られ能力で攻撃をされた。

『ここで抵抗してはっ!!!』

サンシアは血が出ても髪を引っ張られても倒れても何も言わなかった。ただ静かに涙を流した。

「痛いっ…。」

呟くも誰も聞かない。奏真はもう意識を失っているようだった。シェルアもまだ仲間の背中でぐったりしていた。サンシアの意識も朦朧としてきたその時だった。

「やめろ。」

1人が止めた。恐る恐る声の方を見ると人間だった。それも人間側のリーダー、シュランだった。

「あなた…は…。」

サンシアが笑いかけるとシュランも笑い返した。だが次の瞬間シュランはサンシアの胸ぐらを掴んだ。

『あぁ、殴られてしまう…。』

サンシアがそう思い目をぎゅっと瞑るとシュランが

「お前の体を張った行動を信じていいのか。ゴーメルさんを殺したのはお前の姉でいいんだなっ。」

悔しそうな顔をし聞いた。

「私は嘘を言ってはいないです…。」

「そのバンスレー家に誓うか。」

「誓います…。」

サンシアはそういい意識を失った。

「はぁーっ…、人間側からも停戦を要求する!メデューサ側!どうだ!」

「シュラン様?!」

「どういうおつもりで?!?!」

シュランの近くにいた人間が目を丸めて驚く。

「シェルア様、どうしますか。」

意識が朦朧とするシェルアに1人のメデューサが聞いた。

「…。下ろして…。」

シェルアがそういい、仲間はシェルアを優しく下ろした。シェルアはふらつく足で立ち、最後の気力を使い声を上げた。

「メデューサと人間の、戦争は、これにて終わりだ…!この発言の後から攻撃した者は私が処罰する…!意識がないもの、重症なものに一刻も早く治療を!人間もメデューサも関係なくだ!息を引き取ったものは手を合わせてから運べ!石化して綺麗なままの人間の石化はメデューサが責任を持って解いてやれ!もう壊れた石にも手を合わせてから運べ!」

皆がその言葉にほっとし地面にぺたぺたとへばりついていった。倒れる者もいた。シェルアも倒れた。

「シェルア様っ!!」

重症患者が近くにいる者は慌てて緊急治療スペースに運んだ。医者たちもドタバタとしていた。今回の戦いに参加したメデューサ側の多くはあまり戦いが好きではないメデューサが多かったため、すぐに気を緩めた。いっぽう人間側は気を緩めず立ち続けていた。シュランは地面に倒れ込んだ。そしてふっと笑い、一言

「さぁ、これからどうなるか、楽しみだな。」

そう呟いた。シェルアもサンシアも奏真も意識がなく、倒れており、近くのものが治療スペースへと運んだ。それからはドタバタとし、戦うものは少なかった。シェルアの命令を無視し、攻撃をしたものは罰され、石にされたり縛られたりした。戦いが終わったというのに明るい表情のものはいなかった。疲れたということもあったが、今回の戦いの無意味さ、死んだメデューサの人数が過去最高だということ、様々な理由があった。それから数日、大きなメデューサの病院に人間もメデューサも関係なく入院した。メデューサの街に多くの人間が行き来したが、メデューサも人間も攻撃などはしなかった。攻撃した者はすぐ街を歩いていた警備員達に罰された。シェルア、サンシア、奏真は早急な治療のお陰で一命を取り留めた。1番に目を覚ましたのは奏真だった。シェルアにはアシェフが来て、ついているときき、サンシアの元に向かった。腕も足もボロボロだったため、看護師さんの押される車椅子に乗ってだった。

「サンシア様の病室はここになります。」

「あざっす。ここからは1人で大丈夫です。」

そういい奏真は深呼吸し、サンシアの病室のドアを開けた。奏真が入るとサンシアは目を覚ましていた。

「サンシア!!」

奏真が車椅子から落ち、サンシアにゆっくりと近づいた。

「奏真さんっ!」

ベッドの上でサンシアが喜び微笑んだ。

「ちゃんと守ってやれなくて悪かったな。」

なんとか使えた左手でサンシアを抱き寄せ頭を撫でた。サンシアは思わず泣き出した。

「私こそ、ごめんなさいっ。ごめんなさいっ。」

「看護師さんに色々聞いた。赤いマントを靡かせる少女が停戦を要求し、無事戦争は終わったと。お前だろ。ありがとうな。さすがだ、サンシア。」

「奏真さんがあの時氷魔法を使ってくださらなかったら上手くは行きませんでした…。」

「ははっ、あんま覚えてねーや。」

「私が覚えてるからいいんですよ…。」

「ははっ…。サンシア…。俺は…お前のことが…。」

「好きです、奏真さん。」

奏真が言いかけたが先にサンシアが言った。奏真は目を丸めた。

「俺も。」

「でも、でも。」

「無理なんて言わせないぞ。」

「ふふっ。意地悪ですね。無理なのは分かってるんでしょう。」

「これからだ。メデューサと人間だって恋ができる時代がちゃんと来る。お前がそうしてくれるんだろ。」

「あんな全体の前で言ったからそうしないとねっ…。」

「俺も協力するから俺と頑張ろう。」

「はいっ。」

サンシアと奏真はそれから静かになり、じっと抱き合った。そのころシェルアも目を覚まし、シェルアがアシェフに抱きついていた。

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