俺が出会ったメデューサはなんか他の奴とは違うようです

朝霧 えてる

第16話 〜メデューサVS人間2〜

半分氷に覆われたメデューサの氷に覆われていない方が人間の光のビームでやられた。見たことのない人間だった。

「っつ…!!!」

「だ、大丈夫っ?!」

「い、痛いっ!」

「ど、どうしよっ。」

「先に逃げてっ!!」

「そんなっ!!」

「あなたまでやられる必要はないっ!!」

「っつ…。ちょっとここにいてっ。」

サンシアは半分氷のメデューサを優しく立てて置いた。

「おやおや、逃げないのっ。」

「置いて逃げるなんて、無理っ!」

「その勇気、受け取った!」

そういいまたビームを放ってきた。流れ弾としてメデューサに当たらないようにサンシアは気を使った。風の魔法で相手に色々攻撃を仕掛けるも光は貫通してきてしまう。とても厄介だった。手こずり困っていた時だった。ぴゅんっとなにかが飛んできた。人間もサンシアも驚いた。人間の手が凍っていたのだ。

「わりぃ。ミスった。」

聞き覚えのある声だ。書斎の棚の影から見たことのある姿が現れた。奏真だ。

「そっ…。」

奏真さんっ!と呼ぼうとしたが、人間に関係がバレては困るため息を飲んだ。

「何してるっ!」

「ミスったんだって。こいつは俺が仕留めとく。お前は向こうを頼む。」

「…。」

「腕が塞がった今こいつにはお前は勝てないだろう。」

「わかった…。」

人間はしぶしぶ走り去っていった。

「奏真さんっ…。」

サンシアは奏真の胸にすがり付いた。

「倉庫、見たよ。サンシアが運んだのか?」

「やっぱり私に人間殺しは出来ませんっ…。」

「そうかっ…。俺もやっぱり罪悪感がな…。だから中途半端に凍らせといた。」

「奏真さんが敵だってのも辛いです。」

「俺はメデューサじゃないからな…。」

「私を守ってくれてありがとうございます…。」

「俺の真の使命はサンシアを守ることだからな。イノとも約束した。」

「イノさんが…好きなんですか…。」

「どういう事だ?」

「イノさんと話している時の奏真さんは楽しそうです。少し寂しく思います。」

「おいおいこんな時にそんな話か。イノは俺の監視係の天使とやらだからな。あいつの前で何かしでかしたら殺されそうだし。」

「そうですか…。」

「ヤキモチかい。イノはカシアの色のネックレスを大事に持ってたぞ。」

「へっ…?」

「俺にはサンシアの色のネックレスをくれた。これであいつを呼ぶことができる。そうだ、サンシア、お前がこれをもっとけ。困った時はきっとイノが何とかしてくれるよ。」

そういい首元からイノがくれたサンシア色のネックレスを取った。

「でもこれは奏真さんが貰ったもの…。」

「お前が持っててくれ。」

「…ありがとうございます。」

サンシアがネックレスを首にかけお礼を言いヘラりと笑うと、奏真もにひっとわらった。そして油断していた時だった。

「メデューサに手を出すなっ。」

パリーッンッ!!!背中の透明かつ薄い氷が割れた。奏真が警戒し慌てて声の方を見た。するとメガネのメデューサがいた。どこかで見たことがあるような気がした。

「ほう…?バリアを張っていたのとは恐れ入った…。おい、そこの…名前がわからんが女。大丈夫か?」

「さ、サンシアです。私は何もされてませんっ!!」

「自己紹介どうも。よし、じゃあ向こう行ってろ。」

「あなたの名前はっ。」

「何のつもりでいま俺に名前を聞く…。俺はカシェフだが。」

『カシェフ…?』

サンシアと奏真はなにかひっかかった。

『あ、アシェフと名前が似ているんだっ!』

2人はそう思った。よく見ると顔も似ていた。アシェフを小さくしたようなやつだった。

「えっとあの、に、人間さんっ。ちょっと待っててくださいね…。」

「え?あ、はい。」

サンシアは奏真を人間、と呼び待たせた。奏真は大人しくその場で待った。奏真もカシェフの事が気になったのだ。

「アシェフさんのご兄弟ですかっ?」

「あ?アシェフ…。あぁ、そんな奴がいたなぁ。」

「や、やっぱり…。」

「だが、あいつと兄弟なんて二度と言うな。」

「へ…?」

「あいつは俺からすべてを奪ったやつだ。あいつは俺と兄弟だが、あいつが小さい頃からなんでも立派にこなすせいでっ…。父さんと母さんは俺を大事にしてくれた。なのにっ、なのに他のやつは皆俺をいらない子としてっ…。だから、名前にアとか伸ばす棒が入ってないっ。お前も王家のやつなら分かるだろっ。」

「…私はっ…。私も…。お姉ちゃんがいたから気持ちは分かります…。でも、私はお姉ちゃんが大好きでしたっ。恨んだりしませんでしたっ。」

「そうか…。お前も心が綺麗なやつなんだな。」

「そんなことはありませんっ。私はお姉ちゃんの陰に隠れていつも過ごしてましたっ。お姉ちゃんがいるから別に街の王になる必要も無いし堅苦しいことしなくていいしって、気楽にしてましたっ。それが仇となって今私はお姉ちゃんがいない生活に苦しんでます…。」

「そうか…。」

「こんな書斎でなにしている。」

カシェフとサンシアが気まずい空気になっているとまたもう一人、メデューサがやってきた。

「何故ここにばかりメデューサが集まるのですかっ…。」

「強烈に人間の匂いがするからな。」

「人間の匂い?」

「メデューサは人間とメデューサの区別を付けるために嗅覚がよく働くんだ。そのお陰でメデューサの匂いがするんだ。」

『まさかっ、奏真さんが強烈な人間の匂いを…?!いやでも奏真さんはいつもいい匂いしかしていなかった…。他にも人間が…?』

「くんくん、お前の匂いだな。」

メデューサが陰でじっと話を聞いていた奏真を指さした。

「え、俺臭い?」

くんくんと奏真は自分の匂いを嗅ぎ始めたが何も匂いはしなかった。

「臭い訳では無い。人間の当たり前の匂いがするだけだ。それがお前はすごい強烈なんだ。」

「なぜだ…くそっ。」

「まぁいいや。人間の匂いがする限り俺は殺す。ここはひとりでいい。邪魔だからお前らは向こうにいけ。」

「うっす。」

メデューサの指示でカシェフは半分氷のメデューサを連れ居なくなった。サンシアは影でこそっと見ていた。

「強烈な人間の匂いで体が疼くよ。」

「ふっ。そうかいっ。」

奏真が笑って目を一瞬そらしたその時だった。ぴゅんっ。一瞬だった。奏真より数メートル離れていたメデューサが一瞬で奏真の横にいた。

「甘ぇよ。」

男のメデューサで髪は短かったはずなのに、顔の横の髪だけ長くなりうねり出した。そして奏真のお腹の氷をぱりーんと破った。髪の毛自体を石にし固くしていたため、髪で氷が割れたのだった。だが、氷の割れた破片で髪が砕けた。

「ふっ。」

奏真が笑いメデューサに氷の破片をたくさん飛ばした。メデューサの体が傷つき服がところどころ破けていく。だが、次の瞬間の事だった。やられて身動きも取れないような状態だったが奏真に攻撃を仕掛けてきた。髪は砕けたはずだったのに蘇生していた。

「そ、蘇生…?!」

「俺は他のやつより何倍も多く人間を殺してきた。ほかのメデューサより色々なことが出来て当然なんだぁ。」

ペロリと唇を舐めゲス顔で奏真を睨んだ。そして奏真の左腕をスパンと髪の毛で切り落とした。奏真はがくんとしゃがみこんだ。

『っつ…奏真さんっ!!!!!』

声を出しそうになったサンシアは口を手で抑え目を丸めて様子を見ていた。

「腕が片方落ちたね。もう片方も切り落としたら君は何もできなくなるよぉ?さぁ、もう片方の腕を切り落とすかもう殺すかどっちがいーい?」

メデューサが笑った。

「なーんつって。君みたいな雑魚に構ってる暇はないからさっさと石にしちゃうねー!」

メデューサが残った右腕を足で軽く踏み、奏真を石にしようと手を伸ばした時だった。

「お前の目も何も見えないただの石か?」

メデューサの腕を奏真が掴んだ。

「なにっ?!お前も蘇生が?!」

なくなったはずの左腕だった。

「お前が切り落としたのはただの俺の作った氷の腕だ。」

驚いてメデューサが切り落とし落ちたはずの腕の方を見た。するとそこには溶けかけた氷の腕があった。

「切り落とされる前に変えたんだ。俺だって他の人間とはちょっくら違うんだ。ユーモアなことが出来て当然なんだわ。」

そして奏真は掴んだメデューサの腕を凍らせた。

「ヴア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙。」

痛かったようでメデューサが大声をあげた。そして倒れ込んだため、こんどは奏真がメデューサの腕を軽く踏みメデューサを凍らせようと手を伸ばした。奏真の目は鋭く、サンシアは殺気を感じた。

「死ね。」

奏真が氷を放った時だった。サンシアが飛び出してきた。そして奏真を突き飛ばした。

「サン、シアッ?!」

奏真は驚きながらよろめいた。

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