俺が出会ったメデューサはなんか他の奴とは違うようです

朝霧 えてる

第11話 〜過去に捕らわれるな〜

サンシアがシェルアとアシェフが大変なことになっていると言うことを聞いたケリスはとりあえずサンシアについて行った。奏真は1人医務室に取り残された。

「アシェフとシェルアが城の庭でなぜ喧嘩なんかをしてるんだ!」

「分かりません、突然喧嘩し出して!私は話が聞こえなかったのでびっくりしました!」

「くそっ。」

ケリスとサンシアが庭につくと庭はボロボロだった。

「だぁー!!!怒られるぞお前ら!!」

ケリスが叫ぶも二人は気づきもしない。覚醒しているようで冷静さを失っていた。

「あんたのせいでどれだけの人が傷ついた!」

「仕方の無いことだ!」

「関係ない人も巻き込んだくせに何様?!」

「シェルア、いい加減わかれ、俺らは人間じゃないんだ!メデューサなんだ!人を石にし生きていくんだ!」

「じゃあなんでお前は奏真を刺した!」

「奏真を刺したのは俺じゃねえ!」

「知ってることがあるなら全て吐きなさい。吐いて死ね!」

「俺は何も知らない。」

「しらばっくれんじゃないわよ。この嘘つきめが!」

「落ち着けないなら落ち着かせてやるよ!」

また2人が荒れ始め蹴り合い殴り合いをしだした。小さな石や砂利など、草がサンシアとケリスにも当たる。

「私の能力で止めたいですが私の能力は風を起こすだけなのでっ…。」

「困った、どう止める!」

サンシアとケリスが困っていたその時だった。

「そこどけ。」

後ろから声がした。ケリスとサンシアが振り向くとそこには奏真がいた。

「そんな体でよく!」

「け、ケリスさんとりあえずよけましょう。」

サンシアがケリスを引っ張って奏真の前を開けた。すると奏真が手を前に出した。攻撃態勢だった。

「2人を殺したらダメだ!」

ケリスが叫ぶと奏真は小さく頷いた。次の瞬間、一瞬で物理的に場が凍りついた。アシェフとカシアは首より下が氷の中に収まり動けなくなっていて、砂利や砂は地面で凍りついていた。アシェフとシェルアははっと我に返った。

「奏真くんっ。」

「奏真。」

2人が奏真の名前を呼ぶ。

「とりあえず、何があったのか知らんが落ち着け。」

「いやお前も落ち着け!」

ケリスが思わず突っ込む。すると奏真がふらつく。

「そ、そ、そ、奏真さんっ!!」

サンシアが慌てて駆け寄る。

「無茶するから!」

「止めるにはあれがいちばんだかんな〜。」

奏真がへらりと笑う。

「もう仕方がない。お前ら、そのまんま冷静に、冷静に話せ。」

ケリスが二人の間に立ち、言った。そしてシェルアが深呼吸をして話し始めた。

「サンシアちゃんに聞いたわ。サンシアの両親を殺したのはあなただとね。だから私はあなたに怒っている。関係の無い人間を巻き込んだのにあなたは平然としている。」

「それは俺がメデューサだから仕方が無いだろう。」

アシェフも冷静にメガネを直し口を開いた。

「それに、サンシアの親だと知っていたら殺さなかった。」

「誰であろうと殺してはだめ!誰であろうと家族がいるかもしれないし、生きているし!」

「俺らはメデューサだ。メデューサであろうと我々は人という一人称で呼ぶ。俺はその時点で不愉快だ。嫌だ。」

「昔は我々も人間と共存ができていた。人を石にするのは人の能力と同じでしかないのにどうして私たちだけそう共存ができないの?種差別じゃない。」

「人間だって罪のない豚、牛、鶏、魚などのさまざまな生き物を食らう。それと同じだ。」

「それは違う。」

「同じだ。」

「アシェフはもうルネちゃんとの約束を破るの?それでいいの?」

「お前こそ死んだ女との約束をいつまでもくどくどと守る必要はないだろう。」

「死んだのは、私とあなたのせいでしょ!」

「そんなこと言っていたらキリがない。」

「でもネルちゃんが死んだのは私とあなたのせいだわ。」

「勝手に俺のせいにするな!」

「事実でしょ。私は私のせいで死んでしまった人との約束くらい守りたいと思ってる。」

「口調も昔に戻っててもう最近のチャラいお前はいないな。」

「うるさいっ!サンシアちゃんと、奏真くんと出会ってまた私は変わった!」

「人間に影響され変わってもなんの意味もない。」

「だから奏真を刺したの?だから私を刺そうとしたの?」

「それに関して俺は何の関係もない。」

「じゃあなぜあの時いなくなったの。」

「刺した犯人は王家のやつだと思う。元々俺を殺そうとしていたから俺はあいつをおびき寄せるためにあの場を離れた。あの場でお前達に言うと即座に刺しに来るとおもったから何も言わずにいなくなった。最初はあいつも俺の方に来た。だけれど途中で何かを変えたようでお前らの方へと行ってしまった。で、俺は刺されず拉致られ今逃げてきた。」

「悔しいけど嘘は言ってなさそうね。」

「俺はこんなとこで嘘はつかない。」

「あんたのおかげで奏真くんは怪我をしてサンシアちゃんは辛い思いをした。ひとりで抱え込もうとしないで。相談してよなんでも。あんたは私に何も教えてくれない。」

「わるい。俺がこれから素を出すかわり、お前も喋り方変えたりするな。約束だ。」

「ええ。」

「それと、奏真くん、そろそろ氷から解放してくれ。」

アシェフが奏真の方を見るも奏真はサンシアの膝枕で寝ていた。

「奏真さんなら寝ちゃいました。」

サンシアが微笑みながら答えた。

「え、これどうしたらいいの、溶けるまで待たないとだめなの。」

アシェフとシェルアは驚いていた。

「まー、そこで城を荒らした罰として大人しく反省しとくんだな。」

ケリスがうんうんと頷きながらそう言った。そしてサンシアの膝から奏真を持ち上げた。

「3人で話すこともあるだろうし俺は奏真くんを連れてとりあえず医務室に戻る。」

ケリスは奏真を担いだまま医務室へと行った。アシェフは気まずそうにしていた。そして勇気を振り絞り口を開いた。

「さ、サンシア。い、いろいろ…すまなかった。」

「私からするともう過去のことです…。今は奏真さんもいますし。気にしないでください。」

「奏真くんが、好きなのか。」

アシェフがズバッと聞いた。

「馬鹿、そんなズバッと聞くもんじゃないわよ!」

「んー、好きとか、よく分からないけど好きかも知れないですね。」

サンシアが照れながらへらりと笑った。アシェフはその笑顔にときめいた。

「なぁに顔赤くしてんの!あんたには私がいるでしょ!」

シェルアがしれっと言ってアシェフは驚いた。サンシアは口を手で抑え笑いをこらえた。シェルアは自分で言ったあとに言ったことが恥ずかしくなった。

「さ、サンシアちゃんは、奏真くんが回復したらどうするの?」

シェルアが聞いた。

「どうしましょう。」

「うちに一緒に住む?私一人で城に住むのも辛いものでね。」

「俺がいるいる。」

アシェフがさっきのシェルアを真似たように笑いながら言った。

「ふふっ。奏真さん次第かな…?」

「いま奏真くんが人間だということを知っているのはケリスだけ。奏真さんも一緒に住めたら最善だけれど人間を城に置くのは厳しいわね…。ゴーメルさんが死んだ今、メデューサに転換は誰もできないし…。」

シェルアが険しめな顔をして悩んだ。

「まぁ奏真さんが回復するのを待ちましょうか。サンシアちゃんはとりあえず城でお客様として扱わせてもらうわね。アシェフもとりあえずこの城で住めばいいわよね。あと、アシェフも怪我、手当してもらわないとね。」

シェルアの言葉にアシェフは驚いた。

「なっ、なんで怪我してるって。」

「いつもより動きが鈍かった。それに今日のパンチは弱かったしね。」

「お見通しか。」

「ふふっ。そろそろ氷が溶けてきたわね。サンシアちゃん、巻き込んでもいいからパンチで氷壊せる?」

シェルアがサンシアに聞いた。

「ええっ。む、難しいっ。」

「シェルア、お前の髪の毛はなんのためにふよついてる。こういう時のためだろ。」

サンシアが困っているとアシェフが言った。

「ああっ。わたしったらうっかりうっかりー。」

そして次の瞬間大きな音がし辺りが砂埃で視界がくらんだ。

「…?!」

サンシアが驚いていると砂埃から人影が浮いてきた。

「やりすぎだ。怪我がひどくなる。」

「てへへごめん。」

シェルアとアシェフが出てきた。シェルアのメデューサの力で氷を壊したのだろう。

「じゃぁ、サンシアちゃん、行きましょ、アシェフは医務室ね。」

シェルアがサンシアの手を掴んでがむしゃらに走り出した。

「俺らの人生、再スタートだな。」

アシェフが清く澄んだ青空を眺めながらほほえんだ。

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